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擦れたお兄さん(26)が、お金と超技術で無双してみた  作者: 久破空是


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第5章 王の錫杖 (5)

5.焼き鳥と副読本

 

 硝煙の匂いもすっかり消える。

 もちろん無臭のボディソープや、シャンプーは自前のセットだ。

 

 シャワーを浴びて着替える。

 着替えはウルリカ宅に到着している荷物をドローンに運ばせておいた。

 あまりステルス性が高くないため火器がはいってるとロックされ追跡されるので服だけしかない。

 

 ブリオーニのブルゾンに、マルジェラのストレートデニム。

 サロモンのトレッキングシューズを履いたら完成だ。

 ちなみに、デザインは有名ブランドで見た目は普通の市販品だが、隠しポケットやら防弾繊維など素材はうち装備研の素材をつかった防御力が一応ある。

 まぁ火に炙ったりしても燃えない、無いよりまし程度くらいなもんだ。

 

 俺は濡れそぼった髪をバスタオルで拭きながら、爺さんの治した時計を眺め見ていた。

 少女の長い着替えを待つ。

 

 爺さんはというと、プカプカとタバコを吹かしながらロッドブレーキ自転車をがちゃがちゃやっていた。


 「チャリ、パンクしてたみたいよ?」

 という声が聞こえた。

「あんなのでよくあの坂をのぼってきたわね、九十九さん」

 呆れているのか、称賛してるのかわかりにくい声音だ。


 親分め・・・と俺は心のなかで唸りながら

「爺さんも行くのか?」


「じいちゃん、行くと飲みすぎて大変だから置いていく」

 そういって、俺の腕にしがみつく。


「副読本より全然マシじゃない」

 といって、エヘヘと笑う。


 入口の横に、ブザーがぶら下がってて、その横に張り紙がある。

 そこには、【耳が遠いので御用の際はブザーを押してください→】と手書きで書いてあった。


 ハルさんは”びーびーっ”と2回、そのブザーを押すとおじいちゃんが気づいた。

 おじいちゃんにご飯のジェスチャーをするとおじいちゃんは「うんうん」と頷く

 そしてガシャガシャのガラス張りの戸を開けた。


 外はすっかり日が暮れていたが、道は昼間より賑やかだった。

 

 少し行くと、甘いタレの焼けた香ばしい匂いがする。

 「この匂いがね、ヤバいの」とハルさんはいうと。

 

 店の入口横に窓がありそこで細身のおっさんがうちわでパタパタしながら焼き加減を見ては焼き鳥をひっくりかえしている。


 おっさんは俺達に気がつくとニヤリとして

「ハル坊、なんだ?今日はまさか、おデートか?」

 

「ち、違うもん」

 そういうハルさんは少し照れながらぷいっと横を向いた。

 ちょっとめかしこんだハルさんはうっすら化粧品の匂いを漂わせ、ほんのりリップを付けている。

 胸元からウエストにかけてフリルが2段重なったデザインの半袖クロップドトップスはミントグリーンの爽やか系な色、それと同じ系統色のチョーカー。

 白いミモレスカートには短いスリットが入っていて愛らしい。

 それを太めのベルトに大きなリング上のバックルでゆったりと着こなしていた。

 少し大人びたコーディネート。


「わっはっはっはっは」

「ちょっと待ってな」

 そういうとオヤジはと店内にむかって叫んだ。

「おい、二人だ、席寄ってんな」

 

 俺はその焼き鳥の香ばしい香りに胸をときめかせて暖簾をくぐった。

 

 中は10人も座れば満席のカウンターだけのお店だった。

 奥の方から一人の女がハルさんに気がついて声をかけてくる。

 「おや、ハルカじゃない、今日も可愛いいね、こっち座りな」

 と30に手が届きそうな化粧の派手な女が手招きした。

 「お前、もう1つ向こうによれって!」と奥の男に言うとそいつは壁際の席に追いやられてしまった。

 気の弱そうなひょろりとした青年は少し可哀想だった。

  

 「こんばんは、ユウ姉」とハルさんが名前を呼ぶ。

 「おはよう、ハルカ」とユウ姉と呼ばれた女は業界人のような挨拶をした。


 「その服かわいい」とユウ姉と言われた女は視線を俺に向けた。

 目をこれでもかと見開いて口をポカンと開ける。

 

 「え、えらい、いい男つれてるじゃない」とハルさんに言うと

 

 「お得意さんなの、そんなんじゃないわ」と言ってちょっと背の高い椅子に座った。

 

 俺はその隣に腰を掛けるとバイトのあんちゃんに注文する。

 「皮、ネギマ、肝に、生ビール、全部塩で頼む」

 「あたし、つくね、はつ、ボンジリ、あと烏龍茶で」

 ずいぶんなれているのか、ハルさんは普通に注文していた。


 俺はネギマのその塩加減の絶妙さ、うまさに唸りながらビールを飲んだ。

 ハルさんは俺に「あの副読本はホントなの?」 

 「ごほっごほっ」

 ビールをむせてしまった。

 「なんだって?」

 この辺の小学校はみんなあれ勉強させられるのか。

 「え、九十九さんって、九重九十九でしょ?」

 といったら、ユウ姉が反応した。


 「まじ??だって絵とぜんぜん違うじゃない、主に体型と顔が」

 「あれは高校の時だったから」

 俺はフォローになってるのかなってないのかわからない回答をした。

 「実は見たこと無いんだ」

 

 「そうなの?」

 「持ってきたのよ、ほら。」

 といってカバンからB5サイズの本を取り出した。

 一体何の授業で使われてるのか聞いたら、社会科の中で王族の歴史の時間に使ったわとのことだ。

 おれはその表紙を見て、「げ、オグリキャップ・旬だ……」と思わず口から出てしまう。

 ウルリカめ、テメエの叔父(父親の弟)をモデルにしやがったな。

 ページを開くとそこには謎のポエムから始まるバトル漫画が広がっていた。


  どこからともなく音がする

  きゅっきゅっきゅって音がする

  あいつの名前は九重九十九

  汗を拭き拭き、キュッキュッキュー

  ・・・・略

  あいつの名前も九九九ー

 

 俺はもう何も言うことはなかった。

 

「実物見たら、ぜんぜん違うじゃない、がっかり」とハルさんは言うと

「それは、悪かったな」と俺はため息を付いた。

 

 「だって、びっくり人間でしょ?この体型」とハルさんとユウ姉は目をキラキラさせていた。

 主に丸い身体、どっから見ても丸い、あぁ丸い。

 身長、140、体重140、上から見ても横から見ても、前から見ても140と副読本には書いてあた。

 

「みたかったなぁ」とハルさんは言った。

「私の夢を返して。」とユウ姉が追い打ちをかけた。

「そうは言われてもなぁ」と俺は皮をかじりビールを追加で注文した。


「あんちゃん、これサービス」と言って店主が銀杏の入った皿を出してくれる。


「え、だって国語の本にもでてたわよ?」とユウ姉はいいながら、

「つくねに、身を塩で、あと、ニッポン酒ある?うすめてないのよ?」

 いつの時代だよ。と俺は心のなかで突っ込んだ。

 「もしかしてハンプティダンプティか?」

 そういって熱々の銀杏の殻を割て一つ口する。

 青臭い苦みと、甘みそしてしょっぱい塩の味が口の中に広がる。

 癖のある癖になる味で自分の目尻が下がるのがわかる。

 

 「それ美味しいいの?」

 「あぁ、俺は好きだが」

 ハルさんは1つ手に取ると殻が割れずに困った顔をした。

 俺は1つ手にとって殻を割ると、ハルさんはこっち向いて口を開ける

 「あーん」というやつだ。

 おれはそこに鈍い黄色の実を放り込んだ。

 

 その後ろで、ユウ姉は、「なんだか妬けちゃうわね」といって同じようにあーんとした。

 俺は苦笑しながら、もう1つ割ってユウ姉の口に放り込んだ。


 小一時間ほど抜群にうまい焼き鳥を堪能すると、店主の親父が包をわたしてくれる。

 「爺様によろしくな」

 

「うん、ごちそうさま」とハルさんは言うと、その包を受取った。

 俺は、1万円の紙幣を店主に渡すと釣りを確認し始めた。

 それを「釣りはいらない」と止める。


 店主は「あんちゃん、また来てくんな」と威勢よく言った。


 ハルさんはユウ姉に「またね」とつたえると、「その男、置いていってよ」とユウ姉は追撃する。

 「嫌よ」と嬉しそうに言って俺の腕を自分の腕を絡めた。

 俺はポリポリと頭をかきながら、ハルさんと店を後にした。

 

<続>

次回  第5章 王の錫杖 (6)

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