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擦れたお兄さん(26)が、お金と超技術で無双してみた  作者: 久破空是


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第3章  ESC(Escape)&ATC(Attack) (3)

3.めぐりあい空


 キーーンというマイクのハウリング音がした

「ウオッホンっ」

 明らかにおっさんの声がする、そういえば男はみな俺より年上のおっさんしかいない。

 何かを回収してるんじゃないかと思う。


「あーあーテステス」

「やってみたかったんだよ、これ」

 喉をやられたかのようなしわがれた声が聞こえるが言ってることはだいぶ若い気がする。


「出てこい宗次郎、お前なんだろ?こんな芸当できるのは」


 「ちっ、無視していいぞ」俺はそう思いながら何か手はないかと時間稼させてみようと思った。


「おい金ピカ、降りてそんなやつはおらんと話をつけてこい」

「お・お・お、おまかせを」

 あっさり承諾する当たり脅しに屈したかと思ったが、なんだか心配になってくる。


 黄金丸はがちゃりと助手席の扉を開けようとすると、チュンと弾丸が扉をかすめる音に怯んだ。

「む・む・む、無理でした」


 「諦めるの早いよロボットのくせにあんな豆鉄砲にビビりやがって命令無視か? あ?」

 数々の俺に対する塩対応にすべてが雑になってきた。


 「この車のマイクは?あるんだろ?」

 こんなへんてこなロボットがいるんだマイクぐらいあっても良さそうだった。


 「わ・わ・わ、私めにおまかせを」

 がんっとといきなり薩摩の頭を殴った。

 ひどいことしやがる。

 と思ったら薩摩の頭部の一分がパカっと開いたのに俺はびっくりした。


 こちらをお使いください。

 その中に四角いハンドマイクが収まっていた。


 俺はマイクを取り出すとどっかりと座席に座り込んだ。

 ぶっと音がして、カールコードがなにかから抜ける。


 まさか有線なのか。

 「あ・あ・あ、あーあまり引っ張らないでぇ」

 と間抜けな声がする。


 俺は慌てて抜けたピンを薩摩に差し直そうと薩摩のぽっかり合いた頭部を覗く、なぜだかわからんが穴が8個ほどあった。


 「あ・あ・あ、あたりは一つです、ぐふふ、どれかわかるまい。」

 まるで”ちぢれひげ危機一発”のような緊張感があった。


 「どれか教えろよ、ポンコツッ」

 「ま・ま・ま、またポンコツって言いましたね?皆さん聞きました?」


 なんだかディアナもウルリカも笑いをこらえている、緊張感のないことこの上ない。


 俺は一体何にをやってるのかわからなくなった。


 とりえず、正解の穴にマイクジャックを差し込む。

 もちろん、歯をむいて金ぴか丸の目にジャックをぶっさそうとして、物理的に脅すとあっさり正解の穴を白状しやがった。

 

 「あーあー」とマイクに話しかけると、薩摩から音がした。


 「おめーじゃねーよ、ばか」といって薩摩を殴った。

 ガンっと音がする、拳のほうが痛い、なんだか無性に腹立たしい。

————

 漸く、漸く、大事なことでもないが、感動的な再開で2回想ってしましまった。


 「宗次郎なんてじじいは乗ってません、”いきなりミサイル”とかステーキハウスをディスってるんですか?とっとと失せろよ、今なら不問にしといてやるよ」


 車から鳴り響くその声にさっきのおっさんが反応した。

「わっはっはっはっは」

「その声は九十九君か、あんな芸当するのは、九重家の人間くらいなもんだと思ったが……」

「ま、ディアナ嬢が無事駅を出たという情報が入ってな、こんなことに首を突っ込む暇人は宗次郎しかいないと思ってだけだ」


 「親分、今日のところは見逃してくれよ」

 「明日、学会発表に出席しなきゃいけないんだよ」

 「金なら払うよ」

 

 「あぁ金か?もちろんキャッシュだよな?」


 「もちろんさ、今降りるから撃たないでくれよ」


 「そういやぁ宗次郎はどうした?」と親分は親父(宗次郎)にやけにご執心だ。


 「さぁ、どっかで野垂れ死んでるんじゃねぇか?」

 「あんな奴の話はいいから、降りるよ?」


 「撃たない、撃たないが銃口は下ろせねぇ、なにせ九重のガキだ」


 俺はマイクを切って、金ピカ丸にこっそりと内緒話をする。


 「な・な・な、なんと、それはマコトですか?」


 「あぁ、さっき駅で使ってた汗まみれの胸部プロテクターだ」

 

 「じ・じ・じ、地獄の果までおともします」


 「おい、ウルリカ、荷物はトランクか?」


 「そうだけど、なに?」

 「あのサーベルを貸せ」

 「わ、わかったわ」


 敵の数はざっと20ってところか。


 俺は、ジャケットを金ピカ丸に被せると「それいけ!」と合図した。

「が・が・が、ガッテン」


「い・い・い、今こそ粉骨砕身の時」

「あ・あ・あ、ウルリカ様の汗まみれの胸部プロテクター万歳」と車からまろびでた。


 ガシャガシャと2歩ほど車から離れたところで俺は黄金丸を蹴ると扉を締めた。

 ウルリカは「なんてことするのよ!」


 と憤慨していたが、王族の下賜品だぞ?対物ライフルでも弾くぜあいつは。


 もちろん弾丸の雨あられが金ピカ丸に集中する。

 カンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッ

 と小気味よく景気の良い金属音がした、なんだか胸がすっとするのはきっとあいつの所為だ。


 跳弾が危険だからドアを閉めたんだが、レーザーとかだったら危なかったな。


 俺はこっそり窓の外の金ピカ丸を覗き込んだらなにやらブツブツ言っている。


 「危険度判定AA」

 「緊急保護プログラムを発動」

 「足なんか飾りです、偉い人らはそれがわからんのです!!」


 気が付かないうちに、薩摩まで車を降りている。

 こいつも胸部プロテクターが欲しかったのか、後この車の運転だれがやるんだ。とそれが気になった。


 薩摩の円柱の胴に内蔵されたアームがその装甲をバンッと音を立てながら開くとそのアームが、黄金丸の腰に巻き付いていく。


 すっかりスリムになった薩摩はまるでキノコのような形をしている。

 

 「で・で・で、出るぞ」

 金ぴか丸は何かをまねたのだろうが、ちっとも渋くない。  

 金ピカ丸の臀部に薩摩の外部装甲が巻き付いてスカートのような見た目になっていた。

 その辺りからゴウッと音がしてそこからジェットが噴射される。

 パシューっと音がして、周囲に誇りをまき散らしながら飛び上がる。

 外が気になるのかディアナは身を乗り出して外をのぞきこんでつぶやいた。

 「と・・飛んだ」

 

 あとに残された2本の足がなぜか悲しげにその場に取り残されていた。

 

 黄金に輝く、尻からジェットを吹き出しながら、すっとぼけた顔のロボットが、口から熱線を吐き出す。

 ぷぅーーーーという音は自分で流している効果音だろうかジェットエンジンがあんな音するはずがない、まるで屁をこきながら空を舞う上半身だけのロボット。

 

 俺は夢に見ないよう祈りながらその光景を見守る

 「お・・じんぐ」 俺は思わずつぶやいてしまった。


 吐瀉物を口から吹き出して空をぐるぐる飛び、周りにばらまいているかの光景。

 それはまさに悪夢のような光景だ。


 ぷりゅっという音がしたと思うと黄金丸のジェットエンジンの燃料が切れたようでふらふらとしていると

 今度は薩摩きのこがその場でくるくると回転を始める。

 見よ、黄金丸と薩摩はワイヤーでつながれぐるぐると回転する薩摩、その遠心力で空中と飛び回る黄金丸におれは軽く気を失いそうになった。

 

ウルリカは「あ、あれが秘められた奥義、陽気な大回転 メリー・業・ラウンド、絵本でしか見たことがないよ!」

 俺は「あ、あれが・・か?」

 テンションがどんどん下がっていく。

 どこまでがふざけてるのか、いやもう全てふざけているというのであれば納得もしよう。

 ディアナは、腹を抱えて笑いをこらえて座席にうずくまっていた。

 

「ち、ちがうの、絵本だと本当は手に子どもをぶら下げて回転するのよ。」

 ウルリカは何故か言い訳のような説明をした。

 黄金丸は上空10mをぐるぐると回転しながら、口からビームを地上に撒き散らしている、無差別で危ないことこの上ない。


 薩摩が車の間近にいるせいでこの車には害はなさそうだが。

 それはまるでミラーボールに反射した光が、周囲を焼け野原にしようとしているようだった。


 金ピカ丸の口から吐きだされたゲ……熱線は装甲車の装甲を赤くただれたミミズ腫れを次々と描き続けている。


 銃撃は止んでいた、あんなのにやられたとあっては一生トラウマだろう。

 ふざけている、ふざけているが危険。

 

 俺はそろそろ大丈夫かと車を降りようと車内の連中に声をかけるため

 頭をサンルーフから引っ込めた瞬間

 バチンという音と、ヒュインとと音が聞こえた。

 それは金属の糸が切れた音、それと空間を切り裂くワイヤーの空気切り裂く音だった。

 あのまま頭を出していたら、頭を綺麗に切り裂かれていたかもしれない。


 何者かにワイヤーを狙撃され切り離された金ピカ丸の口は「あ・あ・あ・胸部プロテクター永遠なれ~~~~」


 という間の抜けた叫び声を上げながら遠心力で道路向こうの堀に消え、バシャンという音がした、あの体じゃ浮きあがってはこれまい、南無。

 薩摩は糸が切れてバランスを崩した直後、何者かに頭を足蹴にされ、センサー類のあったところをゲシゲシと何度も踏まれていた。


 ビリビリと、全身を放電させながらプルプルとしてるそのきのこ姿はまるで女王様に踏まれるあれに見えた。

 俺はそっとサンルーフからそっと頭を出すとこちらを見る無表情な女の顔。


 そいつは薩摩の上に器用に立ち、パンプスのかかとで薩摩の頭にあるセンサーの詰まったところをグリグリとしていた。


 メイド?というより女中の格好でホッカムリをしているその女はじっと俺を見つめている。

 

 お前は昭和のおかんかという格好でまるで掃除をしているかような容姿は金属製のキノコの上に立っているせいで異様にシュールだった。


 ワイヤーを狙撃したのはベータだろう。

 俺の腕時計の信号がそれを示している。

 あと一人いるが、どこに潜んでいるかはわからなかった。

 俺は周囲の惨状にため息をつきながら


 薩摩をヒールのかかとで踏みにじっているアルファに聞く。

 「宗旨変えか?アルファ」

 それは、あっさり無視されたのだった。


<続> 次回 4.AI三姉妹物語

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