婚約周年祝いパーティー
いよいよ明日。
ニコールとジョシュの婚約周年祝いパーティーだった。
ロゼッタはルグスに。
バートンはドロシーと。
デグランは別行動。
そして私は……。
アレン様にエスコートされることになったのだ!
そもそもアレン様は、婚約周年祝いパーティーの日は、休みだった。その上で、私がこのパーティーに出席することを知った。さらにこのパーティーには、あのウッドハウス侯爵令嬢が参加することも、アレン様は知っていたのだ。
私に何かしないか。
心配したアレン様は、私にこう提案したのだ。
「婚約周年祝いパーティーには、どなたかにエスコートいただく予定がありますか?」
これを聞かれた時は驚き、そして少し寂しい気持ちで「……実は一人で向かう予定です」と答えると。
「それは良かったです。ぜひわたしにエスコートさせていただけないですか?」
そこからアレン様の意図を聞き、「なるほど」となり、エスコートしてもらうことになったのだ。
アレン様にエスコートされたら、大いに注目を集めてしまいそうだが……。婚約周年祝いパーティーは、王家主催とはいえ、私的なもの。しかも参加するのは、王立サンフラワー学園の生徒たちなのだ。
ならばそこまで、大騒ぎにはならないだろう。
それにそのパーティーには、悪役令嬢であるニコール、攻略対象の一人であるジョシュ、そしてヒロインであるセーラがいるのだ。アレン様も攻略対象の一人ではあるが、彼はかなり逸脱している。何せニコールと初めて会ったのも、私のカフェだったのだから。前世プレイ記憶でアレン様は、学園でヒロインとも悪役令嬢とも、他の攻略対象とも会っていたのだ。それを踏まえるとアレン様は、早々にルートを外れている。よって今さらスポットライトを浴びることは、ないだろう。
ということでせっかくパーティーに、推しにエスコートしてもらえるのだ。
目一杯お洒落をすることにした。
何より。
アレン様に、推しに、エスコートされると考えることで、心がもやもやすることもない。デグランの別行動。彼がエスコートする貴婦人。それを考えないで済む。
こうして迎えた、婚約周年祝いパーティー当日。
「お嬢様、大変素敵ですね! スカート部分が特に素晴らしいと思います。シルク生地に、チュールとサテン生地が重ねられ、さらにリバーシブルなフリルがあしらわれ……。幾重にも生地が重なることで、陰影ができ、スカートがとても立体的に見えます。さらに身頃から裾にかけ、スカイブルーと白のグラデーションになっており、大変美しく……。羽織る白のボレロもピッタリで、まるで雪の精のようです」
メイドがベタ褒めしてくれるので、私も嬉しくなる。
さらに髪はハーフアップでおろし、スカイブルーのリボンでまとめた。
「しかも今日は、サンフォード副団長様がエスコートしてくださるのですよね? もうおとぎ話のようです。今、王都で、身分を問わず、女性が最も注目している男性。それがサンフォード副団長様なんですよ。お嬢様、本当によかったですね」
アレン様は私の推しであり、人気者だとは思っていた。でもそこまで注目を集めているなんて!
カフェにもパブリック・ハウスにも、アレン様は気軽に足を運んでくれる。おかげでかなり身近な人物になっていた。でも本来は、雲の上のお方。そう簡単に会える相手ではないのだ。
「お嬢様。サンフォード副団長様が、屋敷の敷地に入りました!」
侍女の知らせに、私はドレッサーチェアから立ち上がる。
なんだか急激に緊張し、ドキドキしてきた。
今日のアレン様は、儀礼用の軍服かしら?
それなら前世に何度も見たもので、間違いないはずだ。
エントランスホールにつき、アレン様の到着を待つ。
鼓動を落ち着かせるため、何度か深呼吸を繰り返す。
従者が扉を開ける。
アレン様が到着した!
ドキドキしてその場で待つと。
「あ……!」
アレン様は、白のフロックコート姿だった。
白に近いフロスティーブルーのシャツに、パールシルバーのベスト、タイは濃紺。センタープレスされたズボンに合わせた、明るいグレーの革のロングブーツ。足長効果抜群で、大変よく似合っている。羽織るマントはアイスシルバーと、本当に美しい……!
しかも背筋がピンと伸び、端正な顔には極上の笑みが浮かび、碧みがかった銀髪も、歩く度にサラサラと揺れて……。
不思議なことに、現実とは思えず、画面越しにアレン様の姿を眺めている心地だった。
なんて、なんて、素敵なのだろう!
この衣装をゲットするため、前世の私なら、天井まで課金していたはず……。
「ナタリー嬢。なんとも優雅なドレスですね。とてもお似合いですよ。ドレス以上に、ナタリー嬢自身が素晴らしいのですが」
推しにヨイショされ、いきなり腰砕けになりそう。
隣にいた侍女に支えてもらい、「?」と何が起きたのかと、困惑気味のアレン様にエスコートされ、馬車へと向かう。馬車を見た私は「きゃあぁぁぁ」と悲鳴を呑み込む。
まるで前世で観たプリンセス映画に登場するような、白馬が引く、白い馬車だった。馬車を飾るゴールドの装飾も、目に眩しい!
「さあ、ナタリー嬢、お乗りください」
もうこうなると気分は完全に、王子様にエスコートされる、プリンセスだった。
改めて対面に座るアレン様と目を合わせると、彼は嬉しそうに微笑む。
座っていて良かった……!
安堵したところで、馬車が走り出した。


















