祖母と孫
翌朝、ようやく老婆と幼子の2人と話す事ができた。2人は祖母と孫であり、旅行に行っていたという。車の後部座席で寝ていたら、この世界に飛ばされたという。
「おそらく、ですが。2人は事故に巻き込まれた可能性か高いです。『生死の境をさ迷っている人』が集められたと聞いてますから。」
老婆はショックを受け、幼子は理解していない。
「カードを貰ったはずです。そのカードを大切に使ってください。この世界で何かを為したら生き返らせると言っていました。」
老婆の目が輝き出した。
「この子は私の全てよ。必ず生き返らせるわ。」
穏やかだが、決意を決めている。
「カードの中に人がいますから、その人と協力すればいいんです。どんなカードですか?」
老婆のカードは星3「田代三喜」。医聖とまで呼ばれた医者と書いてある。幼子のカードは星5「甲斐宗運」。無敗の軍師である。
「え?」
思わず声が出てしまう。自分でも知っている武将だ。九州の無敵坊主。ゲームではいつも苦しめられていた。彼1人で阿蘇という大名家を支えていたと言っても過言ではない。
「あの、何かまずかったんでしょうか?」
老婆が心配そうな顔をしている。
「いえ、お婆さんのカードはお医者さんです。病気を治したりして沢山の人を助けられると思います。お孫さんのカードは凄い武将ですよ。忠誠無比の優秀なお坊さんです。」
自分が欲しくなるほどのカードだ。だが、このカードは幼子のものだ、奪うなどは自分が許せない。
「すぐに呼び出して守ってもらってください。そして、ここが戦場になる前に離れた方がいいです。2人とも無事でいてください。」
幼子は老婆にべったりと甘えている。子供は戦争なんて知らない方がいい。老婆と穏やかに生きて欲しい。そう思って2人の元を離れた。
陣地を彷徨いていると見付けてしまった。デカイ椅子にどっぷりと座った巨大な猫である。それこそ人と同じくらいの大きさだ。背もたれに体を預けている姿は人と変わらない。
「何ニャ?人間。ニャーに何の用ニャ?」
しゃ、喋った。驚きで思考が停止する。
「このニャーの偉大さに驚いているニャ。少しは見所がありそうニャ。ニャーは偉大なるネコネコ伯ニャ。崇めていいニャ。献上品は鼠がいいニャ。」
偉大なるヌコ様のようです。モフモフの誘惑が目の前にある。
「ニャンコだ。」
この癒し力は素晴らしい。
「ニャンと。ニャンコ伯ではないニャ。奴は我ら四伯爵の中で最弱。一緒にするニャ。」
「4人いるんだ・・・。」
「そうニャ。『智のマタタビ、力のネコネコ、速さのネコマタ、暴食のニャンコ』と言えば御近所では有名ニャ。」
「へー。ネコネコ伯も戦ってるの?」
「人間は負け続けてるニャ。今回は鰹節の為の出兵ニャ。陣地が出来るまでの護衛ニャ。」
うん。人間、猫に見下されてるね。
「さて、帰るニャ。」
そう言ってネコネコ伯が立ち上がると二本足で歩くネコ達が次々と集まっていく。その数は100どころではない。
「さらばニャ。」
そう言って癒しは去っていった。