それぞれの1日目
透達が現れた場所から遥かに離れた戦場にて、田中のぞみは歓喜していた。
「やっぱり私は特別だったのよ!世界はこのカトリーヌの力を求めているの!」
そう彼女は中学2年生である。だから色々と夢見ても仕方ないのである。見た事がない魔物に囲まれても動じない。何故ならば自分は特別なんだから。こんな所で死ぬわけがない。
「お前達は運がいいわ。今はまだ私の力が蘇っていないもの。楽に死ねる事を神に感謝なさい。」
(決まった!決まったわ!!今の私、輝いてる!)
右手に持ったカードを天高く掲げて叫ぶ。
「出てきなさい!私の闇の力よ!!」
黒雲棚引き、雷が走る。風は渦巻き、木の葉を巻き上げた。
「仏の心も、人の道も、武士の誇りさえも失った俺を喚ぶか。大魔王、武田光和を求めるか。」
闇の衣を纏いし者が舞い降りた。生前は武勇を誇った猛将であったのだが、死後は災い為す大魔王へと変わった者であった。既に周辺にいた魔物達は倒れ伏している。
「私が求めたわけじゃないわ。世界が私を求めたのよ。私は罪深き者。」
「ほう、貴様も冥府魔道を歩む者か。良いだろう、俺の力を使え。」
恐れを知らぬ少女と大魔王の旅はこうして始まった。
また別の場所において、25歳の歴女・真田貴子は鼻血を流していた。カードから現れたのは明智光秀。腐女子でもある彼女にはご褒美であり、想像だけでご飯3杯はいける相手だった。
「タチですか?ウケですか?」
思わずそんな質問をした彼女は勇者である。
「太刀?うけ?筌か?いや、ふむ。」
生真面目な光秀には通じなかったのが救いか。貴子の居る場所は戦場ではない。ゆえに彼女に緊張感などない。むしろ流れ出る鼻血と、垂れ流す妄想こそが彼女の敵である。
「光秀様、全ての美少年を集めましょう!!その邪魔をする奴等など排除しなければ!!」
「は、はぁ。」
「貴方なら出来ます!!」
「え?いや?何を!?」
彼女の情熱は天才明智光秀すら戸惑わせる。歴史知りたる変態女と、魔王を倒した天才苦労人。死した後も光秀の苦労は続きそうであった。




