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異世界にきたから婚活するよ!  作者: つられるクマー
2章 自立をしたいと思います
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31話 ガールズトーク、でしょうか

 レイコさんは予想通り日本人であった。

 茶髪は地毛で、目は元々は黒に近い茶色であったそうなのだが、こちらの世界に迷い込んで気付いた時にはすでに赤かったのだそうだ。


「“召喚”されたのではなく“迷い込み”ですか?」

「ええ、モーリ……私を保護してくれた人が言うにはそうらしいの」


 召喚でこの世界へ呼ばれる以外にも、何かの拍子に次元の狭間を通ってこの世界へ来てしまう事があるらしく、その事を“迷い込み”と言うそうだ。

 レイコさんはこの世界へ迷い込み、右も左もわからない時に拾って保護してくれた商人さんの手伝いをし、帰り方を探して旅をしているらしい。

 ちなみに言葉は学んでおらず、翻訳の魔術や魔法をかけてもらった訳でもなく、全て日本語で話していて、それがそのまま通じているそうだ。

 その事に驚いてみせると、きっと魔眼の効果だろうとレイコさんを保護した商人さんが言っていたそうだ。

 この世界の赤い目はアルビノによる色素云々のものではなく、何らかの原因で魔力が圧縮され、それが宿った瞳の事であるらしい。濃さや効果に差はあれど、魔眼は何らかの効果を持っている場合が多く、レイコさんの場合は翻訳機能だったのではないか? という話だ。ちなみに文字も読めるらしい。ただし、学んでいる訳ではないので、読めはしても書けないそうだ。


「この世界へ来ている日本の人って、意外と多いのかもしれませんねぇ」

「わかる。この街なんて、江戸時代ですか!? って勢いだものね」


 私の言葉にレイコさんも同意してくれた。

 やはりこの街(システィ)は私以外の日本人の目から見ても、時代劇や観光地等で見かけるような、江戸時代の城下町に見えるようだ。

 この世界へ来る方法が“召喚”以外にも“迷い込み”というものがあるのだから、やはり…この世界の人口に比べれば微々たるものではあると思うが、それでも相当数の日本人がこの世界へと来ているのだろう。


「それにしても、久しぶりのご飯はやっぱりおいしいわね!」


 玄米ご飯を持ち、食べながらレイコさんが言う。

 おかわりもありますよと言いながらお味噌汁も出すと、レイコさんは目を輝かせて喜んでくれた。

 やはりご飯に味噌汁は定番ですよね。日本の心!

 ちなみに今日のお味噌汁の具は、ジャガイモのようなお芋とワカメっぽい海藻である。


 私たち――レイコさんと私の二人だが――は今、リシスさんの用意してくれた家――ラァスさんの家もあの災害で燃えてしまった――に来ていた。

 あのままレンゲ屋さんで仕事の邪魔をするわけにもいかないし、私が異世界――日本人である事はなるべくこの世界の人には知られたくなかったし、レイコさんにお米の炊き方を教えたいのもあったし、いろいろと考えた結果、この家に連れてくる事にしたのだ。

 泣きじゃくるレイコさんに、レティちゃんとオルティスさんは目を丸くしていたが、私が同郷の人なんですと言うと納得してくれて、買いますと言ったのだが、マイマイを30キロばかりくれたのだ。

 もちろん、病み上がりで体力筋力共に落ちている私には運べず、レイコさんもがんばってはいたが持てなかったので運べず。オルティスさんがこの家まで運んでくれて、とても恐縮してしまったのは言うまでもない。今度、お礼にマイマイを使ったお米料理を持っていこうと心に決める。


 お味噌汁も玄米ご飯もきれいに平らげ、レイコさんは満足げにふぅと息をつくと首を傾げた。


「白いお米が食べたいって言ったらやっぱり贅沢かしら?」

「そうですねぇ。表面を削ればいいのはわかっているんですけど、方法がないですからね」


 魔術で再現するにしても、日本に居た時は精米機に頼り切りで、どう削っていたのかとかを私は知らない。なので、イメージが出来ないので、魔術を使っても精米できないのである。うーむ。


「モーリスに聞いたらなんとかなるかしら?」

「モーリス? どなたかの名前ですか?」

「ええ、そうなの。私を拾って保護してくれた商人でね、頭の良い人なのよ。どうすればいいのかがわかってるのだから、きっといいアイディアを出してくれるわ!」


 にこにこと嬉しそうにそう言うレイコさんに、私は思い当たる事がある。

 昔から何度も何度も見てきたではないか。これは、好きな人を語る時の表情! もちろん、恋愛的な意味で。

 そして気付くと同時にふと不安にもなった。

 レイコさんは“日本への帰り方”を探しているのだ。しかし、レイコさんは商人のモーリスさんとやらが好きっぽいのである。

 帰り方が見つかったとして、その時、彼女は帰る事を選択するのだろうか。それとも…


「そうだ。スイナちゃんも来たらいいわ!」

「へ?」


 良い事を思いついたという風に言うレイコさんに、私は何の事だと首を傾げる。

 聞いてなかったの? と言いながらも嬉しそうにレイコさんは笑い、言葉を続ける。


「私と一緒にモーリスの旅に着いて行って、帰り方を一緒に探しましょ? 街に居るだけでは何も情報は得られないもの。それにスイナさん、結婚相手も探すなら旅をしていい男を探した方がいいわ!」


 前半はともかく、後半の部分が耳に届いた瞬間、私は吹き出しそうになってしまった。

 お茶を口に含んでいなくてよかった…。


「…ええと、レイコさん? 帰り方はともかくですね。なぜそこで結婚相手探しになるんですか!」

「え? だってスイナちゃん、独身でしょう? 元の世界に恋人とか旦那様も居そうにないし」

「居なくて悪かったですね! どうせモテた事ありませ」

「ああ、違うの! 違うのよスイナちゃん。そういう意味じゃあないの」


 どうせモテない女ですよーと、いじけかけると、レイコさんが慌てて言葉を重ねてきた。

 軽く波打つショートボブに整った顔立ちの…美人なレイコさんはさぞかしモテるんでしょーねと心の中で毒づきながらも口には出さない。大人しく続く言葉を待った。


「日本に素敵な人がいるのなら、落ち着いてはいないと思うのよ。私みたいに何年もこの世界に居るならともかく、スイナちゃんはまだこの世界に来て1年経っていないでしょう? それなのにとても落ち着いて物事を考えているみたいだったから…」


 変な風に聞こえちゃったみたいでごめんねとレイコさんがしょんぼりとする。

 そういう言葉に敏感なお年頃なもので、こちらこそごめんなさいと思うが、思うだけで言葉にできない。言ってしまうと、自分がますます惨めに思えてしまって、立ち直れる自信がない。ぐすん。


「帰り方を探してはいるのだけど、未だに見つからないし、それならそれでこの世界に落ち着くのもアリだとは思うのよ」

「…そうですね。私もこの世界に来た時に…現地の人に帰り方はないって断言されてますから、そこはわかります」


 溜息を吐きながら私がそう言うと、レイコさんが顔を上げて悲しそうな表情になった。


「ああ、やっぱり明確な帰り方はないのね。そうすると魔術でも学んで自分で方法を探すしかないのかしら?」

「時空間を跳ぶ方法はあるそうです。現に召喚魔法というもので日本人をこの世界へ呼べるみたいですからね。ただ、引き寄せる事は可能でも、術者本人が行く場合は跳びたい場所を指定できないそうです」


 無事飛べたか確認する方法もないみたいですと続けていうと、レイコさんは目を伏せ溜息をついた。

 帰り方を探していたのに、私が持っていた情報は帰れないというモノであったのだから、当然と言えば当然の反応であろう。


「…そうね。だから、帰れない確率の方が高いと思うのよ。だからね、スイナちゃん」


 ガシッと効果音が出そうな勢いでレイコさんは私の両手を掴み、私にぐぐいっと顔を近づけて言った。


「日本に良い人がいない事はこの場合、良かったと思うべきなのよ。そして、これからの事……この世界に腰を据える事も考えたら、スイナちゃんもこの世界で良い人を探すべきだと私は思うわ!」

「え、ええと…?」

「今ね、気になってる人がスイナちゃんにいるのなら、それでいいの。私も邪魔はしないわ。応援する! でも、そうじゃないでしょう?」

「は、はい」


 ちらっと結婚云々と言っていた人が頭に浮かんだが、あれはそもそも拒否権がない上に私に抵抗する手段がなかったから仕方なかったわけで……って、ここで今それを考える必要はないではないか!

 首を振って頭に浮かんだ考えを払い、レイコさんの視線に視線で返す。


「スイナちゃん、大人しそうだし、受け身でしょ?」

「そ、そうですね。どちらかと言えばそうですし、告白したのは全部玉砕してますし…」

「あら、そうなの。なら、なおさらよかったわ! スイナちゃん、婚活しましょう! 婚活!」


 日本でよく耳にした二文字の呪文がレイコさんの口から飛び出し、私は固まった。

 婚活。それは、結婚したい男女が相手を探して……中には目の色を変えてあの手この手で異性に迫り、意中の異性に迫る同性をあの手この手で跳ね除けて手に入れる、恐怖の活動。と、私は認識している。婚活コワイ。

 私が固まったのがわかったのか、レイコさんは不思議そうに首を傾げた。


「結婚……というより、スイナちゃんは家庭を持ちたくないの?」

「つ、作れるものなら暖かい家庭を作りたくはあります」

「でしょう? それならなおさら、婚活はするべきよ。男と違って、女には子供を安全に産むための期間がある程度限られているんだもの。スイナちゃん20は過ぎているでしょう? それなら、今のうちから探さないと」


 20どころか30ですと言った方がいいのだろうか。というか、同じ日本人なのに、30に見えないのだろうか。髪も白髪になっているから、そこそこ歳いって見えると思うのだが。

 もしかしたら、この世界に呼ばれた時に、身体が少し若返ったとか? 確認したくても、そういえばこの世界に来てから鏡とかを見たことがなかったなと気が付いた。目の色まで変わっていたらどうしよう。髪は染めればいいが、目の色は染める訳にもいかないのだし、それこそ日本に帰れたとしても別人認定されるのでは…とそこまで考えて、もう一度首を振る。

 今考えても仕方ない事は今考えない! それが健康の秘訣である。ストレスはためない!作らない!


「…わ、私でも出来ますかね?」


 テレビで見た婚活模様や、婚活に勤しんでいた友人の様子を思い出して、おそるおそる、聞いてみる。

 するとレイコさんは目を輝かせて、力強く頷いた。


「大丈夫! スイナちゃんはご飯を作るのが上手だもの。男の胃袋から落としていきましょう!」

「…その胃袋を掴む前にだいたい玉砕しているのですが」

「問題ないわ。そこはおねーさんに任せなさい。うふふ」


 たぶんというか確実に、レイコさんより年上なのは私ですよ? と言いたいが言えない。

 雰囲気に水をさすのも…というのもあるが、この手のノリにノッテルおねーさまには逆らってはいけない事を知っているからだ。やわらかい言動なのに、迫力が満点すぎてこわいっていうのもあるけどね。


「そうと決まったら、スイナちゃん。スイナちゃんを保護してる人を紹介してくれるかしら? おねーさん、がんばっちゃうわ!」

「は、はい」


 そう言う訳で、日本人の新しい友人を得ると共に、この世界で婚活をはじめる事になったのでした。


※2月11日 サブタイトル修正しました


 や、やっと婚活までたどり着けました。

 長かった…!


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