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冗談で作った秘密結社が世界最大企業になっていた ~平凡な学生を演じる創設者の俺は、今さら全部作り話だったと言い出せない~  作者: てへろっぱ


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第33話 他国の王女が俺の専属案内役になったら、世界最大企業三千二百人が「付き添いです」と言い始めた



 アルヴェイン王国《教育交流祭》まで。


 あと七日。


 そして。


 第二王女レティシア殿下が。


 王宮滞在中の。


 俺専属の案内役になったらしい。


「よかったねー」


「何がだよ!」


 朝の教室。


 トーマが俺の机を叩いた。


「王女様だぞ!?」


「そうだねー」


「専属だぞ!?」


「そう書いてあるねー」


「お前だけの案内役だぞ!?」


「親切だねー」


「そういう受け取り方する奴、初めて見た!」


 トーマは。


 さっきから。


 ものすごく元気だ。


「でも」


「何だ」


「王都は初めてだから、案内してもらえると助かるよー」


「そういう問題じゃない!」


「じゃあ、どういう問題?」


「……」


 トーマが止まる。


「俺にも分からん!」


「分からないんだねー」


「ただ絶対に何か起きる!」


「心配性だなー」


「お前と知り合ってからだよ!」


 失礼な話だった。


 そのとき。


 学院の遥か向こう。


 《アウローラ・グランド》の地下で。


 また。


 何か大きな警報が。


 鳴ったような気がした。


     ◇


 放課後。


 地下本部。


「緊急会議を開始します」


 セレスが。


 真剣な顔で言った。


「何かあったのー?」


「ありました」


「災厄?」


「違います」


「戦争?」


「違います」


「会社?」


「正常です」


「じゃあ何?」


 セレスが。


 机の中央へ。


 一枚の紙を置いた。


 今朝。


 俺にも届いた。


 学院の正式通知。


 その一行だけ。


 赤い線で囲まれている。


 ――第二王女レティシア殿下が、王宮滞在中の専属案内役を務める予定です。


「これです」


「旅行の案内だねー」


「専属です」


「そう書いてあるねー」


「アレン」


 セレスが。


 少し身を乗り出す。


「専属です」


「二回目だねー」


「重要なので」


「何が問題なの?」


「それを今から協議します」


「問題があるかどうかから会議するんだねー」


「はい」


 最近。


 みんな。


 俺に関係することだと。


 会議を開く基準が。


 少し低い気がする。


「まず!」


 ラグナが立ち上がった。


「王女一人にアレンを任せるなど危険だ!」


「何が危険なのー?」


「いろいろだ!」


「具体的には?」


「……」


 ラグナが。


 カレンを見る。


「カレン!」


「私へ投げないでください」


「危険性を説明せよ!」


「ありません」


「ないのか!?」


「レティシア殿下は友好国王族です。現在確認されている範囲では、アレン様へ危害を加える可能性は極めて低いでしょう」


「では何が問題だ!」


「閣下が問題だと言い始めたのですが」


「そうだった!」


「忘れないでください」


 カレンが。


 小さくため息をつく。


「ただし」


「あるのか!」


「一対一で行動する時間が長い点については」


 少し止まる。


「個人的に」


「うん?」


「非常に気になります」


「カレンもなんだねー」


「はい」


 即答だった。


 白い髪には。


 俺が作った。


 《片翼の髪留め》。


「私も」


 リゼット。


「同意見です」


「リゼットまで?」


「業務上の懸念ではありません」


「じゃあ何?」


「個人的懸念です」


「正直だねー」


「予定を捨てることを覚えましたので」


「関係あるのかなー」


「少しだけ」


 長い耳が。


 赤くなった。


     ◇


「情報」


 ミコトが。


 何枚もの資料を机へ広げる。


「レティシア・アルヴェイン」


「十八歳」


「アルヴェイン王国第二王女」


「未婚」


「そこ必要?」


「最重要」


「そうなのー?」


「はい」


「好きな食べ物」


「焼き菓子」


「趣味」


「読書」


「教育施設視察」


「乗馬」


「最近の関心」


 ミコトが。


 一枚。


 めくる。


「アレン」


「それ情報部門で調べたのー?」


「公開情報」


「最後だけ公開されてないと思うよー」


「高確度推定」


「やっぱり調べたんだねー」


「必要」


「何に?」


「競――」


「ミコト様」


 シズクが。


 横から止める。


「言わない方が」


「……」


「そうします」


 何を。


 言おうとしたのだろう。


「こちらも問題があります」


 エルシアが。


 王宮の見取り図を広げた。


「何これー?」


「アルヴェイン王宮」


「どうして持ってるの?」


「公開建築資料から再構成しました」


「研究部門って建物も作るの?」


「必要なら」


「今回は?」


「必要です」


「何に?」


「距離計算」


「何との?」


「レティシア殿下の私室から、アレンの予定客室まで」


「……」


「エルシア」


「はい」


「それ」


「研究かなー?」


「本日は」


 一秒。


「個人的研究です」


「みんな正直になってきたねー」


「アレンが」


 エルシアの周囲に。


 薄い霜。


「最近」


「私たちとの外出を」


「デートと認識するようになったので」


「あー」


 そういえば。


 トーマに。


 何度も教えられた。


「覚えたよー」


「覚えなくてもよかったのではなくて?」


 ヴィオラが。


 扇を開いた。


「どうして?」


「こちらの心臓に悪いからよ」


「ヴィオラでも?」


「世界金融の暴落より悪いわ」


「そんなに?」


「ええ」


 大げさだと思う。


     ◇


「ところで」


 俺は。


 机に置かれた別の資料を見る。


「三千二百人って何するのー?」


「教育交流支援です」


 セレス。


「三千人から増えてるよー」


「必要人員を精査した結果です」


「増える方向に精査したんだねー」


「はい」


 リゼットが。


 別紙を差し出す。


 ――教育展示部門。


 六百四十名。


 ――魔導研究展示。


 五百二十名。


 ――物流支援。


 四百八十名。


 ――医療・救護。


 二百四十名。


 ――警備。


 四百名。


 ――通信。


 二百名。


 ――金融・決済支援。


 二百八十名。


 ――現地連携。


 二百名。


 ――その他。


 二百四十名。


「その他が多いねー」


「必要に応じて動きます」


「具体的には?」


「付き添いです」


「誰の?」


「……」


 十人が。


 一斉に俺を見る。


「俺?」


「教育交流支援です」


 セレスが言い直した。


「今、付き添いって言ったよー」


「広義では同義です」


「違うと思うなー」


「同義です」


 押し切るらしい。


「三千二百人もいたら」


「はい」


「旅行じゃなくて」


「会社移転みたいにならない?」


「なりません」


 リゼット。


「アルヴェイン王国内にある《アウローラ》支社、関連施設、宿泊施設を使用します」


「ホテル足りる?」


「三年前に増築済みです」


「教育交流祭のため?」


「いいえ」


「じゃあどうして?」


「将来」


 一瞬。


「アレンがアルヴェイン王国を訪問する可能性を考慮して」


「三年前から?」


「はい」


「俺、学院に入ったの最近だよー」


「長期計画です」


「俺が来るって分かってたの?」


「分かっていません」


「じゃあ何で?」


「備えです」


「すごい備えだねー」


 セレスたちは。


 百年以上。


 俺が戻る可能性を考えて。


 世界中に。


 いろいろ作っていたらしい。


 使わなかった施設も。


 きっと。


 たくさんあるのだろう。


「でも」


「はい」


「俺は学院のみんなと行くよー」


「……」


 十人。


 静かになる。


「学生旅行みたいなものなんでしょ?」


「教育交流です」


 リゼット。


「じゃあ」


「トーマたちと一緒に行くよー」


「当然です」


 セレスが。


 少しだけ。


 残念そうに答えた。


「私たちも」


「仕事で」


「同じ国へ」


「行くだけです」


「うんー」


「偶然」


「滞在期間が完全に一致します」


「偶然なんだねー」


「はい」


「みんな最近」


「偶然が多いねー」


「世界は広いですから」


「逆じゃないかなー」


     ◇


 そのとき。


 会議室中央の通信石板が。


 光った。


「アルヴェイン王国から通信」


 シズクが言う。


「レティシア殿下です」


「ちょうどいいねー」


「アレン」


 セレス。


「はい?」


「少し」


「待っていただいても」


「どうして?」


「心の準備を」


「ノエルみたいになってるねー」


「必要なのです」


「もう繋がっています」


 シズク。


「……」


 セレスが。


 姿勢を正した。


 石板の上。


 光が集まる。


 淡い金髪。


 青い瞳。


 レティシア王女。


『皆様、ごきげんよう』


「こんばんはー」


『アレンさん』


 王女の表情が。


 少し明るくなる。


『正式通知は届きましたか?』


「届きましたー」


『よかった』


「専属案内役なんですねー」


『はい』


 後ろで。


 十人分。


 何か。


 空気が動いた。


『以前お約束したでしょう?』


「王都を案内してくれるって?」


『覚えていてくださったのですね』


「覚えてますよー」


『嬉しいです』


 また。


 空気が。


 少し冷えた。


「寒くない?」


「問題ありません」


 エルシアが答える。


「霜あるよー」


「自然現象です」


「地下だよー」


「局地的です」


「シズクみたいになってるねー」


「参考にしました」


 妙なところで。


 成長している。


     ◇


『今回』


 レティシア王女が。


 少し真面目な顔になる。


『アレンさんには、王宮や教育交流祭だけではなく』


「はいー」


『王都の普通の暮らしも見ていただきたいと思っています』


「普通の?」


『市場』


『学生街』


『町の書店』


『一般の学校』


『職人街』


『食堂』


「楽しそうですねー」


『よかった』


 王女が。


 柔らかく笑う。


『公式行事だけでは、国の良いところしか見えませんから』


「そうですねー」


『悪いところも』


『不便なところも』


『実際に見て』


『その上で』


「うん」


『アルヴェインをどう思うか』


『聞かせていただきたいです』


「分かりましたー」


 いい案内だと思う。


 王宮だけ見ても。


 その国のことは。


 たぶん。


 分からない。


「レティシア殿下」


 セレスが。


 穏やかな会長の声で尋ねる。


「その視察には、王国関係者が同行されるのでしょうか」


『護衛はおります』


「他には?」


『私が案内します』


「……殿下ご自身が?」


『はい』


「全日程?」


『公式行事中は別です』


「では」


 リゼットが。


 恐ろしく速く筆を動かす。


「自由時間は?」


『一日』


 王女が。


 少し考える。


『半日ほどでしょうか』


「半日」


 ミコト。


「記録」


「記録しなくていいと思うよー」


『実は』


 レティシア王女が。


 俺を見る。


『その自由時間について』


「はい?」


『一つお願いが』


 十人が。


 同時に。


 姿勢を正した。


『もし』


 少し。


 王女の頬が。


 赤くなる。


『アレンさんがお嫌でなければ』


「うん」


『二人で』


「……」


『王都を歩いていただけませんか?』


 静かになった。


 ものすごく。


 静か。


「二人で?」


『はい』


「案内?」


『はい』


「自由時間に?」


『……はい』


 俺は。


 少し考えた。


 最近。


 トーマに。


 教わった。


 男と女が。


 二人で出かける。


 仕事ではない。


 自由時間。


 そして。


 本人たちが。


 そういうつもりなら。


「あー」


『はい?』


「それって」


 十人が。


 俺を見る。


「デート?」


 ――ぱきん。


 何か。


 割れた。


「エルシア?」


「机の端です」


「凍って割れたねー」


「自然現象です」


「だから地下だよー」


 通信の向こう。


 レティシア王女も。


 止まっている。


『……』


「違った?」


『いいえ』


 頬。


 さっきより。


 赤い。


『アレンさんが』


『そう呼んでくださるのであれば』


「うん」


『私は』


 一度。


 息を整える。


『デートでも』


『構いません』


 ――ばん!


「異議あり!」


 ラグナが立ち上がった。


「閣下!」


 カレンが。


 袖を引く。


「外交通信中です!」


「しかし!」


「座ってください!」


「王女がアレンとデートすると!」


「聞こえています!」


『ふふ』


 レティシア王女が。


 笑う。


『ラグナ総司令は』


『相変わらずですね』


「知り合いなのー?」


『国際会議で何度か』


「我は認めぬぞ!」


『何をでしょう?』


「それは!」


 ラグナ。


 止まる。


 ここでは。


 俺との関係を。


 全部言えない。


「……教育交流における」


「うん」


「過度な単独行動を!」


『では』


 レティシア王女が。


 穏やかに尋ねる。


『《アウローラ》軍事部門として』


『王立魔法学院の一学生の自由時間へ』


『介入される正当な理由がおありですか?』


「ぐっ」


 ラグナが。


 カレンを見る。


「カレン!」


「ありません」


「早い!」


「外交問題になります」


「では個人として!」


「今は軍事部門総司令として通信へ参加しています」


「肩書が邪魔だ!」


「普段は利用しているでしょう」


「今日は捨てたい!」


「捨てないでください」


 王女の向こうでも。


 護衛らしい人が。


 笑いを堪えていた。


     ◇


「でも」


 俺は。


 レティシア王女を見る。


『はい』


「俺」


「学生のみんなとも回りたいですよー」


『もちろんです』


「トーマもいるし」


『ええ』


「自由時間なら」


「みんなで歩いて」


「途中で別れるくらいでもいいですかー?」


『……』


 レティシア王女が。


 少しだけ。


 残念そうな顔をする。


 でも。


 すぐ。


 笑った。


『構いません』


「よかったー」


『ただ』


「はい?」


『一時間』


「うん」


『一時間だけ』


『私にいただけませんか?』


「案内の?」


『デートの』


 ――ぱきん。


「また割れたねー」


「机が弱いのです」


 エルシア。


「百年持つ机って聞いたけどー」


「今日が寿命でした」


「偶然?」


「はい」


 最近。


 偶然。


 便利だなー。


「一時間ならいいですよー」


『本当ですか?』


「うん」


『約束です』


「はいー」


『では』


 王女が。


 すごく嬉しそうに。


 笑う。


『七日後』


『お待ちしています』


「よろしくお願いしますー」


 通信が。


 切れた。


     ◇


 静寂。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


「会議!」


 ラグナが叫んだ。


「今も会議だよー」


「緊急議題追加!」


「何?」


「王女とのデート対策!」


「対策いるのー?」


「いる!」


「何するの?」


「分からぬ!」


「またなんだねー」


「だから今から考える!」


「閣下」


 カレンが。


 額を押さえる。


「妨害は禁止です」


「なぜだ!」


「アレン様が了承されました」


「……」


 ラグナが。


 俺を見る。


「アレン」


「何かなー」


「本当に行くのか?」


「約束したからねー」


「ぐぬぬ……」


「ラグナも今度どこか行く?」


「行く!」


 即答。


「ならいいんじゃない?」


「……」


 ラグナが。


 座った。


「それを言われると」


「うん」


「何も言えぬ」


 簡単だった。


「アレン」


 今度は。


 セレス。


「何?」


「私とも」


「うん」


「次回のお約束を」


「いいよー」


「……!」


 セレスの耳が。


 ぴくり。


「私も」


 ヴィオラ。


「うんー」


「私も」


 エルシア。


「いいよー」


「記録」


 ミコト。


「何の?」


「全員」


「次回確約」


「そうだねー」


「では私も」


 カレン。


「もちろんー」


「私も」


 シズク。


「猫喫茶?」


「希望」


「いいよー」


「アレン」


 リゼット。


「予定は集合時刻だけねー」


「……はい」


「ノエルも?」


「はいっ!」


「クラリスも?」


「もちろんです」


 十人。


 静かになった。


「これで公平?」


「……」


 リゼットが。


 少し考える。


「公平です」


「よかったー」


 その後。


 みんな。


 妙に。


 機嫌がよくなった。


 王女のデート対策会議も。


 いつの間にか。


 なくなっていた。


     ◇


 それから。


 七日。


 出発の日。


 王立魔法学院。


 転移門前広場。


「アレン」


「何かなー」


「俺」


 トーマが。


 目の前を見たまま。


 動かない。


「旅行だと思ってた」


「俺もだよー」


「学生四十八人」


「うん」


「教師六人」


「そうだねー」


「荷物」


「あるねー」


「普通だ」


「学生旅行だからねー」


「じゃあ」


 トーマが。


 ゆっくり。


 指をさす。


「アレは何だ」


 学院の隣。


 《アウローラ・グランド》側。


 巨大転移門。


 整然と。


 並ぶ。


 三千二百人。


 制服。


 研究服。


 警備装備。


 医療班。


 物流班。


 通信班。


 金融部門。


 さらに。


 大量の資材箱。


「教育交流支援だってー」


「軍隊じゃねえか!」


「ラグナのところは四百人だけだよー」


「四百人いる時点で多い!」


「展示物の警備もあるみたい」


「何を展示するんだよ!」


「知らないねー」


「お前が一番知らなきゃ駄目だろ!」


「俺、学生だからねー」


「そうだった!」


 トーマが。


 頭を抱える。


「一瞬忘れた!」


 俺も。


 たまに。


 忘れそうになる。


     ◇


「学生代表団」


 教師が確認する。


「全員いるな?」


「はい!」


「転移門通過後は、アルヴェイン王国側の指示に従うこと」


「はい!」


「特に」


 教師。


 俺を見る。


「アレン・クロフォード」


「はいー」


「勝手な行動をしないように」


「どうして俺だけ?」


「学院長からの個別指示だ」


「何したのかなー」


「心当たりがないのが一番怖い!」


 トーマが。


 横から叫ぶ。


 その後ろ。


 セレス。


 ラグナ。


 ミコト。


 エルシア。


 ヴィオラ。


 カレン。


 リゼット。


 シズク。


 ノエル。


 クラリス。


 十人とも。


 今日は。


 《アウローラ》の正式参加者。


「では」


 教師が。


 手を上げる。


「出発する!」


 巨大な転移門。


 青い光。


 視界が。


 一瞬。


 白くなる。


     ◇


 次に。


 目を開いたとき。


「わ……」


 トーマが。


 声を漏らした。


 高い城壁。


 白い塔。


 青い屋根。


 遠くに。


 大きな王城。


 石畳の街路。


 風には。


 知らない花の匂い。


「アルヴェイン王国かー」


「本当に来た……」


 トーマが。


 少し感動している。


「旅行だねー」


「教育交流だ!」


「楽しそうだからいいじゃんー」


「まあ」


 トーマが。


 笑う。


「それはそうだな」


 転移門前。


 王国側の歓迎団。


 その中央。


 淡い金色の髪。


 レティシア王女。


「ようこそ」


 王女が。


 俺たちへ。


 頭を下げる。


「アルヴェイン王国へ」


 俺たちも。


 挨拶を返す。


 そして。


 レティシア王女は。


 まっすぐ。


 俺のところへ来た。


「アレンさん」


「お久しぶりですー」


「七日ぶりですね」


「そうですねー」


「お待ちしていました」


「案内、よろしくお願いしますー」


「もちろんです」


 王女は。


 笑った。


「まずは」


「はい?」


「私の国を」


 一歩。


 少しだけ。


 近くへ。


「好きになっていただきます」


「楽しみですねー」


 俺の後ろで。


 十人分。


 何か。


 ものすごく強い視線を。


 感じた。


「アレン」


 トーマが。


 小さく囁く。


「何かなー」


「旅行初日だぞ」


「うん」


「まだ転移門から三歩しか歩いてないぞ」


「そうだねー」


「もう始まってる!」


「何が?」


「お前の取り合いがだよ!」


 今日も。


 元気だった。


 アルヴェイン王国での。


 教育交流。


 どうやら。


 楽しい旅行になりそうだった。


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