第6話「ドラゴンとバトルがしてぇぇぇぇぇ!」
薬草採取を終えたあと、冒険者ギルドに報告して、シュティとも別れた。
報酬は銅貨五枚だ。
そして、師匠は魔族の討伐に向かっているらしく、三日間は留守にすると受付嬢に預けてあった銀貨十二枚と、くれぐれも無茶はしないようにと伝言も添えてあった。
さて、お邪魔虫はいないのだ。なにとバトルしようか。
俺は掲示板のほうを眺めていた。
そこにドラゴンスタンピートのクエストを発見する。
場所は東の山脈。
歩いて三日かかるが、身体覚醒で走れば、半日で着くだろう。
合計百体ものドラゴンの群れ。
ああ。考えただけで脳汁がでるぅぅぅぅぅぅぅぅ。
俺はさっそくドラゴンのいる東の山脈に向かうための準備を開始した。
「マジックポーション二つください!」
「銀貨四枚だよ!」
「はい!」
おじさんに銀貨を四枚支払った。
あとは水と食料か。
食料と水は宿の人にパンの耳とかをもらおう。
宿で手短に留守にすると用件を伝えて、パンの耳と水筒をもらった。
これで準備は万端である。
王都の門を抜けて、外に出ようとすると、門兵のおじさんに止められた。
「ボウヤ? もう夜だよ? 危ないから依頼は明日にしたらどうだい?」
うっとうしい。俺は一瞬だけ膨大な魔力を解放した。
門兵のおじさんは恐怖している。
そりゃそうだろう。目の前に勇者と同じくらいの魔力を持つクソガキが現れたのだから。
俺は静かに告げた。
「おじさん。大丈夫だから。俺の邪魔をしないでね?」
おじさんはこくこくと首を縦に振りまくった。
そんな激しく振って首の関節大丈夫かとちょっと心配になる。
とにかく邪魔者はいなくなった。
俺は魔力を全開にして、吠えた。
「身体覚醒!」
魔力が緑色に変わり、激しく脳内快楽物質が走る感覚がした。
心地いい。俺はそのハイテンションのまま駆け出す。
ああ。走るのって気持ちいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。
最高に風が吹いて、汗が滲み、心拍数が激しくあがる。
これが自由に好きなこととできるということか。
そう思わせるくらい疾走感による解放感が半端なかった。
森を抜け、荒野を抜け、ちょうど山脈っぽいところに辿り着いたのは約六時間後だった。
「ふぅ。ちょっと魔力を使い過ぎたな」
山脈に入る前に一度休憩をとることにした。
焦って突撃して、スタミナ切れで倒れたら、もう二度とバトルを楽しめなくなる。
それだけは勘弁だ。
俺はポーチからマジックポーションを取り出し、ぐびっと飲み干した。
ほんのりとした甘みが舌を駆け巡る。薬品めいた謎の苦みもあった。
これはぶどうによく似ている。
ぶどうジュースだ。
うん。癖はあるけどなかなか美味かった。
続いてパンの耳を齧り、水を一気に飲み干した。
喉に冷たい刺激が走る。
よし。これで準備万端だ。
俺は師匠にもらったミスリルの剣を抜くと、魔力を温存するために通常の水色の魔力を纏った。
「さて、バトルといこうか!」
荘厳なる東山脈。それらを階段飛ばしで登っていき、頂上にたどり着くと、百を超えるドラゴンたちが争いあっていた。
これがドラゴンスタンピート。
いいね。ウキウキするよ。
俺はまず一匹目に斬りかかる。
サクッと一瞬で首をはねた。
続いて二匹目。
これも楽に狩れた。
三匹、四匹、五匹と狩ると、こちらの脅威に気が付いたのか、一気に数十匹のドラゴンが襲いかかってきた。
俺はあえて魔法を使わずに剣だけで首をはね続けた。
途中で炎をくらったりした。何度か首が斬り裂かれそうにもなった。
本来ならこんな苦戦などしない。
あえて魔力を調節して、ギリギリの戦いを楽しんでいるのだ。
数十匹のドラゴンを屠ると、続けて、五十匹が一斉に襲いかかってきた。
「ひゅう♪ そうこなくっちゃ♪」
まずは袈裟斬りで一匹。飛ぶ斬撃を連続で飛ばして数十匹。
三匹のドラゴンが炎を吐く。
俺はあえてバリアを張らずにそれを食らう。
やばい。飛ぶ。脳汁がとまんねええええええええええええええ。
衣服は師匠からもらった特殊性の魔法の繊維でできているので無傷だが、その他に髪の毛が焦げて、肌やらがただれた。
これだよ。これくらいギリギリじゃないと面白くない。
俺はあえて回復魔法をかけずに、そのまま残りのドラゴンを斬り続けた。
「あっはっはっはっはっはっはっは♪ 楽しいぃぃぃぃぃぃぃぃ。バトル楽しすぎだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ♪」
ズタボロの全身の痛みを感じながら、俺は狂喜乱舞して、ドラゴンを屠り続ける。
ついに最後の一匹になり、俺は魔力を纏うことすらやめた。
「最後はフィジカルだけでやりあおう!」
ドラゴンと睨み合う。
まずはドラゴンが炎を吐く。
流石にこれをくらうと死んでしまう。
でもあえて受けてやった。
「熱い。熱い。熱いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
でも頑丈な俺の肉体は黒焦げになりながらもなんとか耐えた。
俺はギロリとドラゴンを睨んだ。
「さて。次は俺の番だね。逝く覚悟はできたかい?」
けらけら笑うと、ドラゴンは吠えた。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおす!」
どうやらプライドが勝ったらしい。いいよ。そういう負けず嫌いなのは、大好きだ。
俺は飛び上がってドラゴンに剣を振りかぶった。
「これで最後だああああああああああああああああああああああああ!」
ミスリルの剣がドラゴンの脳天をかち割る。
ぷっしゃあああああああああああああああと血がはじけ飛び、俺は高笑いした。
「あはは。あははははははははは。あっはっはっはっはっはっはっはっはっは♪ たのじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
俺は何度も脳が飛んだ。脳汁出過ぎている。このままだと倒れて落ちて死ぬということもわかっていたので、即座に上級回復魔法で肉体を全回復した。
痛みも疲労感も無くなった。
あの最高の快楽を味わったあと、このさっぱりと風呂に入ったような気持ちよさ。
なんとも筆舌し難い至福の瞬間だった。
俺はすぐに山脈を飛び降りて、着地する。
さて、二時間ほど楽しんだな。
そろそろ帰らないと翌朝のクエストに間に合わずシュティが心配して、また病んでしまうかもしれない。
ドラゴンの魔石はちゃっかり全部回収してある。
これを商人に換金すれば、金貨百枚はくだらない。
新しい武器と装備を買ってもお釣りがくる。
せっかくだし、王都名物のジャンボステーキでも食べにいくか。
装備も回復薬も食べ物や魔導書や剣術書など色々豪遊できそうだ。
俺はマジックポーションを再び飲み干すと、魔力を緑に変化させて、一気に駆け出した。




