第3話「冒険者ギルドに強い人がいた件」
「ジャンボサンドイッチうめえええええええええええ!」
昨日は晩御飯抜きだったので、朝食はジャンボサンドイッチにしてもらった。
デカ盛りは正義である。
口内にベーコンの肉汁と、レタスのシャキシャキ感。
ふわふわとしたパンとたまごの食感が堪らない。
なんとなくジャンキーな味付けの甘しょっぱいタレも最高だ。
ジャンボサンドイッチを十五個ほど食べ終わると、師匠に急かされた。
「もう充分食ったよな? 早くギルドへ行くぞ。何処かの誰かさんがアホみたいに食うおかげで、早いこと仕事受けて、金を稼がないとウチの家計がヤバいからな!」
「うっ。すんません……」
と謝りつつ俺は宿屋の娘さんに注文を口にした。
「あ、ジャンボサンドイッチあとみっつね?」
その瞬間、師匠のデコピンをくらった。
「いい加減にしろ。このバカバトリスが!」
「はいぃぃぃ。調子に乗ってすんませんでした……」
結局ジャンボサンドイッチは十五個で終わらせて、ギルドへ猛ダッシュで向かった。
赤い建物の大きな酒場のようなところが冒険者ギルドらしい。
俺は思い切って扉を開けると、ぶわぁっと酒の臭いが充満してきた。
なかには荒くれ者っぽいおじさん、おばさんや、俺と同年代の少年少女、年老いた魔術師らしきおじいさんもいる。
まさに老若男女問わずと言った雰囲気だ。
俺はこの自由で開放感のある雰囲気に一瞬で心が奪われた。
毎日ここに通えるのか。これはものすごく楽しみだ。
ギルドの師匠に手をひかれて、そのままギルドの受付にたどり着いた。
受付窓口には清楚に微笑む受付嬢がいた。
師匠と違ってものすごく優しそうなお姉さんである。
そのお姉さんに師匠は冒険者ライセンスを見せつけた。
「私はこういう者だ。今日は我が弟子の登録に来た!」
受付のお姉さんは驚きの表情を見せた。
「ええ! 勇者様のお弟子さんですか! これは大型ルーキーの誕生ですね! 今すぐ登録の準備をいたしますので、少々お待ちください!」
受付さんが準備している間に、俺はギルドのなかに強そうな人がいないか探した。
そこに圧倒的な魔力と身体能力を持つ逸材を見つけた。
緑髪ツンツンヘアに緑の瞳をした高身長で細マッチョのイケメン男性だ。
年は俺とそう変わらないが、黒スーツが大人っぽさを醸しだしている。
うん。この人とバトルしたい。
師匠の目を盗んで、そのイケメン冒険者に近づこうとしたら、急に背後から手を置かれた。
「ひゃん!」
思わず女の子のような声をだしてしまう。
後ろを振り向くと、そこには昨日助けたシュティがいた。
「バトリスくん。早速ギルドに登録しに来たんですね♪」
「ああ。そうだ。でもいまはちょっとそっとしといてくれないかな? 用事があるもんでね!」
その瞬間、シュティは涙目になった。
「そんなわたしを仲間にするのが嫌なんですね……」
俺は首を振った。
「いやいや。仲間にしてあげるって。そもそもなんで君は俺の仲間になりたいの?」
「そ、それはその……」
赤くなってもじもじした瞬間、察してしまった。
「つまり俺のことが好きになったから仲間にして欲しいってこと?」
シュティは沸騰したやかんのように赤くなり、また涙目になった。
「そんなはっきり言わないでください! 恥ずかしいじゃないですか!」
確かにデリカシーに欠けていたかも。だがここで勘違いされたままなのはお互いに良くない。
俺ははっきりと彼女の好意に返事した。
「言っとくけど。俺、いまのところ恋人作る予定はないから付き合えないよ? 他にやりたいことがあるから!」
シュティはその言葉を聞いた瞬間、急に距離を詰めてきた。
なんだよ。この子。ちょっと怖いんですけど。
シュティはちょっと虚ろな瞳で問い詰めてきた。
「それってわたしじゃダメってことですか? やはりわたしみたいな役立たずなんかじゃ恋人にはできないのですね?」
俺はどうどうどうと両手で彼女を抑えた。
「違うってば。他にやりたいことがあるからいまは恋なんてしている暇がないだけだよ。必要になったらその時はちゃんと真剣に考えるから! いまは断らせてくれ!」
シュティはうるうるとした瞳でこちらを見つめた。
「本当に真剣に考えてくれますか?」
俺は頷いた。
「うん。俺って本当だって。いまは恋愛に興味がないだけなんだよ。シュティに魅力がないから断っているだけじゃない。個人的にシュティのことはかなり可愛い人だと思っているし」
シュティは急にまた顔を赤くして、もじもじとしだした。
「可愛いだなんて。もう。バトリスくんったら……」
よし。注意が逸れたな。
俺はシュババと動き、緑髪のイケメンに腰のポーチにしまい込んでいた手袋を投げ捨てた。
「すみません。お兄さん。俺とバトルしましょう! 決闘です。決闘!」
お兄さんは眉を顰めた。おお。怒っている。いいぞ。もっと怒れ。
お兄さんは俺の襟元を掴んだ。
「おい。クソガキ。お前、俺様が誰かわかって喧嘩売ってんのか? あ゛あ゛?」
そうだ。もっと怒れ。できれば今すぐにでも斬り合いたいが、ここは冷静に返した。
「ええ。あなたの魔力量と身体能力の強度から、只者ではないのはわかっていますよ。おそらくこのギルドで一番強い人ですよね?」
お兄さんは驚いた表情を見せた。
「ほう。俺様が強いと見抜いて喧嘩を売ってきたわけか。ただの身の程しらずの雑魚新人ってわけでもなさそうだな!」
俺はにっこりと笑った。
「ええ。おそらくあなたより強いです。でもあなたなら俺といい勝負ができます。だから決闘したくなりました。強敵とのバトルこそが最高の快楽ですので!」
お兄さんはくつくつと嗤った。
「あっはっはっはっは。こんなバカなクソガキは生まれて初めてみたぜ。お前絶対頭イカれてんだろ?」
「ええ。師匠にもよく言われます」
男は手袋を地面から拾った。
「いいぜ。その決闘受けてやる。生意気なクソガキを分からせるの、Sランク冒険者の務めだからな! 俺様はバロス・シュトルツだ。お前の名は?」
「俺はバトリスと言います。それよりいまの言葉撤回はしませんね?」
お兄さんはにやり笑った。
「当たり前だろ。こんなおもしれぇクソガキボコれるチャンスをみすみす逃すかよ!」
俺は目をキラキラさせて、テンションフルマックスになった。
「いいのですか! やったぁぁぁ。さあ。やりましょう。すぐやりましょう。あ、でも建物のなかは不味いか。訓練場に行きましょう!」
「あっはっはっは。こんなイカれたクソガキは初めて見た。おもしれぇ。それじゃ訓練場に行くぞ!」
お兄さんが親指で訓練場を指すと、俺はニヤニヤが止まらなかった。
「はい。行きましょう。いますぐに!」
俺は師匠の方を見た。どうやら書類に夢中で気が付いていないようだ。
きっとあとで絞られるだろうが、そんなの関係ない。
人生いまこの瞬間、刹那的に戦闘欲求を満たす方が楽しいに決まっている。
できることなら木剣じゃなくて、真剣がいいな。
命を懸けた決闘。合法的な殺し合い。考えただけでワクワクする。
あ、もちろん。俺は殺さないけどね。あんな逸材殺してしまったら楽しみがなくなるから。
俺は訓練場へ向かって歩き出した。




