98. 異変の後
「……おや?」
その時、黄色の魔法少女の方を演じていた幼きひばりは、不意に自分達の5色の魔法少女ごっこを木陰からこっそり見つめている同い年頃の女の子を発見した。
ひばりは女の子の存在に気づくと、一目散に木陰にいる彼女の元へダッシュした。
その女の子は、たまたま公園の前を通りかかった時に、4人の女の子がかわいい衣装を着て、楽しそうにおもちゃの棒なんかを振り回しているのを見て、この子達、一体何をしてるんだろう? と興味が湧いて、思わず覗いていたのだった。
女の子は、ひばり達の5色の魔法少女ごっこを陰からこっそりと見るだけだったのが、その中の一人の女の子がいきなり自分の前まで走ってきたのにびっくりすると、その女の子に勝手に魔法少女ごっこを見ていたのを怒られるんじゃないかと、内心ビクビクしていた。
「え、えっと……あの……」
女の子は、思わぬ事態を前に、顔を真っ赤にしてうつむきながら、ひばりに対し、何かその場にふさわしい言い訳を探そうとした。
「ねえ。あなた、私達と一緒に5色の魔法少女ごっこしてみない?」
ひばりは、もじもじと困惑している女の子の気持ちなんかお構いなく、いつもの屈託のない笑顔で女の子に話し掛けた。
「……えっ?」
女の子は、ひばり達のことを勝手に見ていたのを怒られるのかと思っていたのに、このひばりの予期せぬ提案に、より困惑の度合いを強めた。
「ちょうど黄色の魔法少女がいなくって……それで困ってたとこなんだ。」
ひばりとしては、ちょうどつかさが来なくなったタイミングで、自分達の5色の魔法少女ごっこを興味ありそうに眺めている女の子を発見すると、新たな黄色の魔法少女になってくれたら、ワンチャンラッキーだと思ったのだった。
「………。」
それに対し、女の子は、ひばりにどう答えたらいいかわからなくて、顔を真っ赤にして俯いたままだった。
「どうする? やる?」
ひばりは、そんな女の子の細かな感情の機微など一切気づかずに、腰をかがめて下から少女の顔を覗き込むと、自分の(都合のいい)話を続けた。
「う、うん……やる……」
女の子は、やはり恥ずかしそうに俯いたままだったが、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、ひばりに答えた。
「やったー! これでまた5人揃った! ……ところで……あなた、5色の魔法少女は観たことあるの?」
「え、えっと……」
「えっ!? もしかして観たことないの!?」
「ご、ごめんなさい……私……」
女の子は申し訳なさそうな表情をしてひばりに謝った。実は女の子は5色の魔法少女のアニメを一度も見たことがなかった。だからこそ、ひばり達がかわいい衣装を着てるのを見て、一体何をしてるんだろうかと興味をもったのだった。
「ううん、別に観ていなくてもぜんぜん大丈夫だよ。私があなたに黄色の魔法少女がなんたるか、ぜーんぶ教えてあげるから。」
ひばりは、自分と同じ年頃の女の子が、まさかあの5色の魔法少女を知らないなんて、あまりにも意外だった。でも、逆に相手が自分と同じ熱狂的な5色の魔法少女好きで、好きな5色の魔法少女も自分と同じ桃色で被って、どっちが桃色の魔法少女をやるかでつかみ合いのケンカになるよりは、むしろ5色の魔法少女のことをまったく知らなくてまっさらな方が、黄色の魔法少女のことを一番に好きになってもらえるかもしれないと思ったので、そっちの方がぜんぜんよかった。
「う、うん……ありがとう……」
「うんうん……ところであなたお名前は?」
「……」
「よし! じゃあ、早速他の3色の魔法少女を紹介するね。おーい! みんなー! 新しい黄色の魔法少女が入ったよー!」
ひばりは――5色の魔法少女ごっこを急に途中で抜け出して、木陰にいた女の子のとこに行ってしまったひばりのことを呆気にとられてポカンと見つめていた――プル達の方を向いて、大きく手を振ると、再び3人の元へと駆け出した。そしてひばりの後ろを、女の子が遅れてついてきた。
――そうだ! 思い出した! 黄色の魔法少女のつかさが私達のとこからいなくなって……それから私が黄色の魔法少女を兼務するようになって……その後、すぐに三代目の黄色の魔法少女が入ったんだ。あの子、なんて名前だったっけ? え――っと……
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