92. 2週目
南美は、普段はあまり見せない難しい顔をすると、先ほど着火したばかりのソーサーの火口をじっと見つめていた。
「ちょっと、南美! なんなの、その魔法は! 火力にはちゃんと注意しなきゃダメでしょ!」
その時、三玖が南美の元まで近寄ると、少し厳しめの口調で南美に注意した。
「……あっ! ……うん……ごめん、三玖。私、とろ火にしたつもりだったんだけど……」
南美は三玖に素直に謝った。
南美は、確かにとろ火にしたつもりが、魔華力の加減に大きく失敗して、火力が中火、もしくは中火寄りの強火になってしまった。ちなみに、南美の中火は、周囲10mの範囲の何もかもをすべて焼き尽くすという地獄の業火で、もしもあの時、南美の魔法がそのまま地面に炸裂していたら、今頃ロボット達は完全に消し炭になっていただろう。もしかすると、三玖達もフレンドリーファイアを受けて、幾分かダメージを負っていたかもしれない。
ちなみに南美の炎の魔法は、火力の調整に加えて、有効範囲の調整なども可能である。
だが、たった今火力調整に失敗したからといって、南美が赤色の魔法少女としての資質が低いというわけではない。炎系の魔法を有する赤色の魔法少女は、スタイルが攻撃に特化していて、元々の魔法の威力が高く、5色の魔法少女の中でも基本的にその実力は上位に位置するが、炎の魔法は扱いにくくて、使用者を選ぶ極端な性能を有しており、その魔法の特性は比重にピーキーで、実はその調整が非常に難しい。そういう意味で赤色の魔法少女は、調整が一切不要で比較的万人向けで扱いやすい雷属性の黄色の魔法少女とは対極に位置する存在といえよう。
それに加え、南美が歴代の赤色の魔法少女と比べて、かなり上位の魔華力を有していたのもあって、尚更火加減を難しくさせていた。
実はそれとは逆で、南美が生まれて初めての魔法を解き放ったにも関わらず、瞬時にその火力調整の失敗に気づき、とっさに魔法を空中に回避させたのは、むしろ南美が赤色の魔法少女としての資質が多分にある証拠だといえる。また両親が洋食屋を営んでおり、自身も料理が得意で普段から火の扱いに慣れていたのが、結果的に奏功したのかもしれない。もしくは、関係ないかもしれない。
だが、いずれにせよ、現在のメンバーに回復系の魔法が使える桃色の魔法少女がいない状況で、南美の魔法は、一歩間違えると、マジカルキティ達にとってクリティカルなダメージを与える危険性があったのは確かだった。
「あなたの魔法は調整が難しいから、ちょっと奥で練習して来てくれる? 代わりにロボット達の相手は私がしておくから。」
三玖は南美に指示を出すと、ミカをそっと蛍に預けた。
「ごめん三玖。じゃあ私、ちょっと練習してくる。」
南美はそう言うと、誰もいないグラウンドの反対側へ向かって走っていった。そして到着するなり、すぐに火力調整の練習を開始した。
光の塔の方を見ると、知らぬ間にクスが戻ってきていた。
クスがジャイアに逃げ出したところ、ジャイア側の光の前で待機していたクリスに、「おい! 子猫の捕獲に成功したのか?」と聞かれて、「いや、まだだ。」と平然と答えると、再びキレたクリスに蹴り出され、こうしてクスは再び地球に戻ってきたのだった。
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