91. 2週目
現場ロボット28班の連中は、自信満々にじりじりと蛍の元へ詰め寄ってきた。
一方蛍は、近づいてくるロボット達を前に、どうしようとオロオロしていた。
蛍は、いくら相手が弱くて雑魚だからといえど、なぜか高圧的な態度を取り続けるヤンキー気質のロボット達のことが、確かに怖いことは怖かった。
だが、それよりもこれ以上手加減することができない。
いくらキロライトが通用しなかったからといって、2段階目のメガライトを放ちでもしようものなら、次は間違いなくロボット達はバラバラになってしまうだろう。かといって、ロボットに直接パンチやキックをお見舞いしようにしても、うまい具合に加減できる自信がまったくなかった。なので蛍は、ロボット達に対し、どう対処していいのかわからなくて再びオロオロしていたのだった。
その時、蛍の背後から南美の勇ましい声が轟いた。
「蛍! 私に任せて!」
蛍が後ろを振り返ると、南美が高くジャンプして、蛍の真横にピタッと着地した。
南美は、雷属性のイエローキティと電気工事班のロボット達が相手だと、どうも相性がよくないみたいだ。だったら炎属性のレッドキティの自分が、蛍に代わり、今度はロボット達の相手をしてみようと手を挙げたのだった。
南美はロボット達と対峙すると、その場に大きく右手を広げた。
すると光の中から何か飛び出してくると、南美の右手にすっぽりと収まった。
南美がその手にしっかりと握りしめたのは、レッドキティ専用の武器であるソーサー(円盤)だった。
そのソーサーは独特の形状をしていた。持ち手であるグリップからは左右に2本のバーが伸びていて、その先端に透明なソーサーがゆっくり回転している。おそらくグリップから2本のバーを通して先端のソーサーに自身の魔華力を伝達する仕組みになっているみたいだが、2本のバーとソーサーは物理的に繋がっていなくて、少し間が空いていた。ソーサーの真ん中には炎を放出する大きな穴が開いていて、その周りを無数の小さな穴が幾重にも取り囲んでいた。
南美は、その場から高くジャンプすると、右手のソーサーを空中にかかげた。そしてグリップに魔華力を込めると、ソーサーを軽く振りかぶった。
「とろ火!」
南美がソーサーの照準を4体のロボット達に向けると、ソーサーはものすごい速度で回転し始めた。それからすぐ、真ん中の大きな穴を取り囲んでいる中ほど部分の小さな穴が、すべて紅く点火すると、その何十口もの小さな穴から、ボボボボボボボボッと着火の連続音が鳴った。
「……あっ!!」
南美ははっとすると、慌ててロボット達に向けていたソーサーを空中に挙げた。
三玖は、南美のソーサーから湧き出している魔華魔華しい力に危険を感じとると、傍らにいたミカをとっさに抱いて保護した。
そして南美がソーサーを空中に向けた瞬間、その開いた口のすべてから、特大の炎が何十本にも連なって空中に一斉発射された。
その炎は直径10mほどの大きな炎の柱となると、大気を焼き尽くすボコボコと鈍い爆発音を伴って、光の塔に比肩する新たな炎の塔を空中に形成した。
南美の魔法の影響によって、白黒だった世界は一瞬にして一面を赤く染めると、周辺の温度も一気に上昇して、まるで真夏のような暑さとなった。
南美は、結局空中に特大の空魔法を放ち終えると、下を向いて、そっと蛍の横に着地した。蛍は心配そうな顔で南美を見つめた。
一方ロボット達の方は、南美が空中に放った炎の影響で全身を赤く照らしながら、たった今目の前で起きた出来事を、しっかりと目撃はしたものの、物理法則を無視した魔法の威力を、低級ロボット達の頭脳では論理的に理解することなど到底不可能で、何か特大のエラーに遭遇したのだとしか思えず、その場をただ呆然と立ち尽くすのみだった。
そして、クスの方は姿が見えなくなっていた。クスは、南美が空中に放った凶暴な魔法を目の当たりにした瞬間、あまりの恐怖に、思わず光の中に飛びこんでジャイアに逃げ出してしまったのだった。
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