127. 異変の後
「あーっ!!」
その時、ひばりは急に何か思い出したように大声を出すと、メグの方を向いた。
「なんだ? どうした?」
メグは訝しそうにひばりを見た。
「そういや……私も魔法少女になったんでしょ?……でも、どうやったら魔法が使えるの?」
「あっ……うん……そ、そういえば、確かにそうだな……ふむ。まあとりあえず、その件についてはな、また改めて善処することにして……とにかく今はつかさのことをだな、まずは第一優先にしてだな……」
メグは慌てて言葉を濁した。
「そうだよ! 私が魔法を使うところを見せてあげれば、つかさもすぐに信じてくれるじゃん。私、なんでこんな簡単な方法、今まで思いつかなかったんだろう。」
「えー……ま、まあそう言われると、確かにその通りなのだが……だが、お前も黄色の魔法少女……とはいっても、とりわけユニークな個性を持つ特別天然記念物ものの魔法少女……というか、その中でも大いなる例外というか……」
メグはなんとか話をごまかそうとした。
「ねえねえ! どうやったら魔法が使えるの?」
「う、うむ……それは……そう……」
「ねえ! 早く教えてよ。」
「えーっと……あの……」
――どうやったら自分が魔法を使えるようになるのか――メグは、ひばりがそんなことを自分に聞いてくる時点で、自分が予想した通り、ひばりがまったく魔法を使えないことがこれではっきりとわかった。魔法少女は、通常は自分が魔法少女になった時点で、自分がどんな魔法が使えるようになるのかわかるし、それに、誰に教わらずとも普通に自分でその魔法が使えるようになるものである。魔法の使い方がわからない……ということは、本人の魔華力が圧倒的に足りてなくて、使える魔法を一つももっていないという決定的な証拠だった。
しかし、だからといって、そのことを今ここで正直にひばりに打ち明けてしまったら、ひばりは今後6色の魔法少女としての活動を一切しなくなってしまうかもしれない。
そう考えると、メグはひばりにどう答えたらいいのか、困り果ててしどろもどろになると、その後は下を向いてずっと黙り込んだままだった。
「……あっ!!」
だがしばらくすると、メグは何か思い出したようにはっと顔を上げた。
「そうだ。その手があったか……ふふふ……ひばりよ。安心するがよい。5000年振りに現世に魔法少女が誕生したことを記念して、お前には特別な贈り物を授けてやるとしよう。」
「えっ? 何かくれるの?」
それからメグは、その場で四肢を踏ん張って地面を強く握ると、真剣な表情で正面を見据えた。すると、メグの全身の毛という毛が突然逆立ち始めて、そこからかわいいポメラニアンにはあり得ない鬼の形相になると、ブツブツと一人何かを唱え始めた。
それから少しすると、なぜかバリバリと不気味な音を携えた大きな黒雲が、ひばり達の頭上に徐々に集まりだした。すると、すでに真っ暗だったはずの外の景色が、そこから更に何段階も暗くなると、所々からゴォゴオと響き渡る嵐のような轟音とともに漆黒の闇が辺り一面を覆った。
「えっ!? なんなのこれ!?」
つかさは、突如として発生したこの尋常ならざる天変地異に思わず声を上げた。
「わかんない!」
轟音の中、ひばりが大声で答えた。
そしてメグは、予期せずに飼い主から与えられたジャーキーに大喜びする子犬のそれと正反対の、邪悪な笑みを顔に浮かべると一言、
「それでは受け取るがよい。」
そう言い放った瞬間、外が一面真っ白になったかと思うと、周囲一帯が停電し辺りが一瞬真っ暗になった。それから一時の間を置いて、ドッゴォ――ン!! という巨大な爆発音が二人の頭上に響き渡った。
二人は同時に上を向くと、その時、今まで見たことないような巨大な稲妻が、天空から頭上の黒雲の中に落ちるのを目撃した。そして黒雲の中に落ちた巨大な稲妻は、雲の中で光を一点に集中させると、そのまま一本の白い線となってひばり達のいる地上目掛けて突進してきた。
その白い線は、ひばりとつかさのちょうど真ん中くらいの地面に直撃すると、ボゴン!! という地面のアスファルトと衝突した破壊音と小さな土煙を伴って地面に突き刺さった。
その不気味な黒雲と巨大な稲妻は、翌日宝箱女子高の中でもその日の話題の中心になると、宝箱市で起きたおそらく気象変動が原因の晩春の珍事として全国ニュースで取り上げられたり、一部のネット界隈では、妖しい黒雲の中から世界を滅ぼす悪魔が地上に舞い降りたのではないかと話題になるほどだった。
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