118. 異変の後
「とにかく! 行かないったら行かないんだからね!」
ひばりは腕を組んで顔をぷいっと横に背けると、断固拒否する構えを見せた。なぜかわからないが、とにかくひばりはつかさの家に行くことだけは絶対にイヤみたいだった。
「うーむ……」
本当は超越者とかなのかもしれないが……残念ながら、今の彼女は単なる小型犬のポメラニアンの子犬でしかない。今のか弱く非力な身分では、自分一人で物事を打開するのは土台無理な話だった。たとえ魔法少女が自らの想像物だったとしても、魔法少女に対して強制的に命令を出したり、指示に従わせたりする権限はなく、それに運命レベルが消滅してしまった今となっては、自分の意向に沿うことになるかどうか、それはすべて魔法少女一人一人の自由意志に委ねられていた。
メグは、なすすべもなく、顔を横に背けたままのひばりのことを呆然と見つめていた。
その時、そんな二人のやりとりを不思議そうに見ていた万智が、ふいに二人の前に立った。
「ねえ、もしかしてそのワールドスピーカーとかいう魔法をつかさちゃんにかけてもらったら、私達もメグとおしゃべりできるようになるの?」
万智は、メグの言葉をまったく理解することはできなかったが、メグの深刻な様子と、ひばりの「(つかさの家に)行かない」「ワールドスピーカー」という言葉を聞いて、これだけのことを頭の中で一気に予想してしまったのだった。
その時、メグは改めて妹と姉の順番が逆だったら本当によかったのにと痛切に感じたが、それは考えてもまったく意味がないことだと、先ほど思ったばかりだった。
「…………」
万智は、ひばりの顔を覗き込んで確認してみたが、ひばりは横を向いたまま何も答えなかった。だが、ひばりの無言が、万智の予想があながち間違いでないことを如実に物語っていた。
「……じゃあ、代わりに私がつかさちゃんの家に行こっか? メグもなんかすごく困ってるみたいだし。」
万智は、多分つかさちゃんの家に行くことが、メグにとってはとても大事なことなのだろう……それと、なぜ姉がつかさの家に行きたくないのか、その心情も十分に理解していたので、だったら代わりに自分が行こうかと提案した。
「何!? 本当か!?」
メグは思わぬ万智の提案に驚くと、勢いよく万智の方に体を向けた。
メグはよく考えると、たとえ会話ができなかったとしても、ひばりを連れて行くより、万智を連れて行った方が、つかさとの交渉が断然うまくいくような気がした。
メグはうれしくて、万智を見つめながら、尻尾をフリフリしてはしゃいでいた。
「くっ……」
ひばりは、そんな二人のうれしそうな様子を、しばらく一人苦悶の表情を浮かべながら見つめていた……が、とうとう観念したように、ぶっきらぼうに言葉を吐いた。
「……いいよ。私が行くよ。」
ひばりは、つかさの家に行くのは絶対にイヤだったが、代わりに万智に行ってもらうのはもっとイヤだった。
「えっ? 本当?」
「いや、別にお前は行かなくてもいいぞ。」
それに対し、万智とメグは対照的なリアクションを示した。
「ふん! 行けばいいんだろ、行けば!」
ひばりは投げやりに言葉を吐くと、不満そうに口をとんがらせた。
「よかったら私もついて行こっか?」
万智は、ひばりの心情をおもんぱかって、やさしげに声を掛けた。
「何! 本当か?」
メグは先ほどに増して尻尾をフリフリしながら小躍りして喜んだ。
「いいよ。私一人で行くから。」
ひばりは、万智の気遣いがありがたかったが、つかさの家には一人で行きたかった。
「……そ、そうか。」
メグは一気に尻尾が下がると、しゅんとした顔をした。
そして、ひばりは何か決心したような顔になると、
「よし。じゃあメグ、今からつかさの家に行くよ。」
二人はそのまま春巻きパーティーの会場を後にした。
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