109. 異変の後
「はーっ?」
ひばりは、5色の魔法少女マジカルキティに自分も出たいだなんて、何を突然自分勝手なことを言い出すんだこの子犬はと思って、怪訝そうな表情で子犬を見つめた。
子犬は、自分のことを訝しげに見つめるひばりの視線の意味を理解して、うんうんとゆっくりとゆっくりうなずいた後、ひばりの表情を気にする様子もなく話を続けた。
「5色の魔法少女に私も出たいとか、5色の魔法少女に6色の魔法少女も参戦して、6色の魔法少女の知名度を高めたいとか、もちろんそんな話ではないぞ。お前も6色の魔法少女として覚醒したのならば、まさしく今日5色の魔法少女とロボットとの戦闘空間を認識、経験したのではないか?」
「??」
――何言ってるんだろうこの子犬? そんなの経験してるはずないじゃん。
ひばりは、そんなことにはなんの心当たりもなかったので、むーっと難しい顔をすると、首を斜めに傾げた。
子犬は、そんなひばりの薄いリアクションを見て、(ああ……これは、何言ってるんだろうこの子犬は? そんなの経験してるはずないじゃん。)と思っているなと理解すると、会話をひばりレベルに合わせることを特に苦にする様子もなく、一定の間を空けた後、
「……世界が白と黒だけとなり、周りの人も物も何もかもの時間が停止し、すべてが無となった世界だ。それに……もしかすると、お前も会ったのではないか? その世界の中で、5色の魔法少女の誰かと。」
「??」
――本当に何言ってるんだろうこの子犬は? 5色の魔法少女? そんなの会ってるはずないじゃん。
ひばりは、そんなことにはなんの心当たりもなかったので、再びむーっと難しい顔をすると、首を斜めに傾げた……が、しばらくすると、放課後に起きた一連の奇妙な出来事――世界が急に白黒になって、親友のプルとミアをやってしまったこと……それから教室でマジカルキティのミク、ナミ、ホタルの3人を見て、プル達のことを助けてもらおうと必死に追いかけて……そして廊下で派手にコケちゃって……それからシノに両肩にやさしく手を置いてもらったこと――が、今脳裏に鮮明に蘇った。
――えっ!? あれはやっぱり夢じゃなかったってこと!?
ひばりは、あの一連の出来事が夢じゃなくて、実は現実の出来事でしたというあまりに早すぎる伏線回収に、目を大きく見開いて驚愕の表情を描いた。
そしてその表情のまま、子犬に対し早口に一気にまくし立てた。
「えっ!? そしたら放課後に急に時間が止まって、プルとミアをやっちゃって、それでマジカルキティのナミ、ホタル、ミク、シノと会ったのも……全部本当のことだったていうの?」
子犬は、ひばりの一気に濃ゆくなったリアクションにも一切動じることなく、冷静に答えた。
「ふむ。お前は4人の魔法少女と会ったのか。私の方は3人だったのだが……そうか、むこうはすでに4色もの魔法少女が見つかっているのか……いや、まあ別にそう早くもないか。」
ひばりは、放課後にプルとミアをヤってしまったのが事実だったこと――結果的には何もなかったようだけど――自分が大好きな5色の魔法少女が、やっぱり現実世界に本当に存在していたこと、そしてナミ、ホタル、ミク、シノの本物の5色の魔法少女マジカルキティに初めて会ったこと、そして、自分が5色の魔法少女ではなくて、6色の魔法少女という5色の魔法少女の追っかけなのかよくわからない魔法少女だということ……そんな事実が一気に頭に襲ってくると、もう何がなんだか訳がわからなくなって、もう完全にキャパオーバーになってしまった。こうなると、ひばりはもうこれ以上何も入って来なくなって、その場でぼーっとするしかできなかった。
子犬も、今はこれ以上少女に話しても無駄だろうと理解した。
そして子犬は、ひばりが手にしている黄色のフィロソファストーン(PS)を真剣な表情で見つめながら言った。
「では、最後に私が何者かお前に教えてやろう。私はお前達万物を創造せし者。そしてお前達6色の魔法少女を創造せし者。よって、たった今お前に魔法を授けてやろう。」
ひばりは、ぼーっとしながらも、自分の手元に握られている黄色の石、プレシャスストーン(PS)ではなくて、風呂なんとかストーンとかいうのが、先ほどと比べられないくらい黄金に光輝いて、はっきりわからないが、おそらく魔華力みたいなのが全身から溢れ出ているのを感じた。
それと同時に、子犬の左耳の小さなピンクのリボンに付いた横に並んだ6色の石の、米粒大の黄色の石が、ひばりのフィロソファストーンに呼応するように、夜空に輝く一等星のごとく力強く光り輝いていた。
――もしかすると……いや、多分……いや……やっぱり! 私は魔法少女だったんだ!
ひばりは、頭の中でそう確信すると、目を瞑って、魔法少女になりたい! そう強く願った。
そして、ひばりと子犬の周りを黄金色の光が包みこんだその瞬間、
――よし! 変身できる。
ひばりは、なぜかそう確信して目を見開くと、自分の周りがなぜか黄金に光り輝いて、目の前にいる子犬から、なぜか6色の魔法子犬マジカルパピーの魔法の叡智を授かっていることをぼんやりと理解した。
ひばりは、その場で何度も変てこなポーズを決めると、フィギュアスケートの選手のように床の上をクルクルと回った。そして、とうとう魔法少女に変身した。
「タコの公園で約束した友情は永遠だよ。6色の魔法少女ピンクパピー!」
ひばりは、人差し指をピンと立てながら両手を空中に突き上げると、自然に……なのか前から考えていたのかわからないが、口からセリフと決めポーズが飛び出した。
それからしばらく、そのポーズをしたまま、感慨に浸っていたひばりだったが、やがて挙げていた両手をゆっくりと降ろすと、魔法少女になった自分の姿をじっくり確認した。
間違いない。自分は今早着替えたした訳でもないのに魔法少女の姿になっている。しかも、その色は黄色ではなく桃色だった。
ひばりはうれしさのあまり、拳を握りしめながら、再度両手を空中に突き出すと叫んだ。
「やったー! 私、魔法少女になったんだ。それも桃色の魔法少女に!」
一方子犬の方はというと、そんなひばりの様子をなんとも微妙な顔で眺めていた。
ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、
【ブックマークに追加】
【ポイントを入れて作者を応援しよう】
に、あなたの評価『★』をお願いします。




