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107. 異変の後

 そしてしばらくの間、固まって動かなくなってしまったひばりだったが……


「あわわわわ……」

 唐突にあたふたと口を開いたかと思うと、バイオハザードの雑魚ゾンビ、もしくは往年のマイケルジャクソンのスリラーダンスのごとく、両手をだらんと前に突き出して、挙動不審にオロオロと、狭い部屋の中を右に左に何度も歩き回った。


(自分が5色の魔法少女だったなんて!!)

 それは、ひばりが物心ついた頃から、長年切望してやまなかったことだったが、それがいざ本当に自分の元に訪れると、多少面白いリアクションになってしまうというのは、別にひばりでなくとも仕方のないことかもしれない。


 子犬は、下級ゾンビのように部屋中をあてどなく彷徨っているひばりを見つめながら、この少女は、もしかすると――悪い意味で――自分の想像以上なのではないかと思い始めた。


 ――だが……しかし、まあなんとかなるか。

 子犬は、今はとても平静とは思えない状態の少女と話しても無駄だと考えると、彼女の興奮がある程度収まるまで、とりあえずはしばらく待つことにした。


 ひばりは、その後も部屋中を無意識に徘徊し続けながら、しばらく経つと、少しずつ意識がはっきりとしてきた。


(えっ? 私が5色の魔法少女? そんな……私、今まで5色の魔法少女になるんだってずっと思ってきたのに……いざ自分が5色の魔法少女になるっていうのに、実際に魔法少女になったらどうしよう……って私、ぜんぜん考えてなかった! まさにノープランってやつだった。……えーっ! どうしよう? うーん……とりあえず空でも飛んでみて、プルやルーシーに見せびらかしに行ってみようか? ……えっ? そういえば私、桃色の魔法少女で合ってるの? ……ていうか、この子犬、魔法少女に会いに来たって言ったけど……そもそもその魔法少女って、私のことなんだろうか?)


 そういえば……この子犬、魔法少女に会いに来たとは言ったけど、それが自分のことだとは言ってなかった。


 もしかすると、これはいつもの私の早合点で、実は5色の魔法少女っていうのは、近所にいる誰か他の人のことで、この子犬は私にその人の住所を聞きに来ただけなのかもしれない。私、ぬか喜びしちゃって、それで後になって、大きなショックを受けちゃうことになるかもしれない。それにこういうパターン、私にはよくあることだし……


 ひばりは、頭の中でマイナス思考の渦が沸き起こると、徘徊をピタッと停止した。そして顔をゆっくりと子犬の方に向けると、全身を震わせながら、緊張した面持ちで子犬に確認した。

「あっ……あの……ま、魔法少女って……も、もしかすると、私のこと?」


「ふむ。もちろんお前のことだ。」

 子犬は、もちろんの前に「残念ながら」をつけ加えようか一瞬迷ったが、とりあえず今回はやめておくことにした。


「えっ!? 私が!?」

 ひばりは自分が聞いておいて、子犬に改めて答えられると、まさか!? そんなことあり得ない! という衝撃の表情を顔面に描いた。


「おぼぼぼぼぼぼぼ――!!」

 ひばりは意味のわからない奇声を発しながら、その場をくるくる回転すると、膝から地面に倒れ込んで、頭を抱えたままその場から動くことができなくなった。


 子犬は、相変わらずのひばりの様子に呆れながら、三度みたび行動不能に陥ったびばりが回復するのをとりあえず待つことにして、ひばりの部屋をざっと見渡してみた。


 部屋の全体がピンク……というわけでもなく、所々に一部別の色のインテリアが配置されて、実際にはおよそ80~90%がピンク色に統一された部屋は、どうしても後ちょっと、中途半端な感が否めず、どうせやるなら徹底的にピンク一色に統一しろよと言いたくなるような残念な印象があって、その中途半端感のせいか、一面ピンクで統一された部屋よりも、より一層居心地の悪さが強調されているような気がする。


 そして部屋の隅々には、過去に登場したアニメの5色の魔法少女のグッズやフィギュアなどがところ狭しと飾られていた。


 ――なるほど……この少女は5色の魔法少女のことが好きなのか……

 子犬は、この少女が5色の魔法少女の大ファンであり、部屋にあるグッズの多さから、特に桃色の魔法少女が好きなのがわかった。


 次に子犬は、机の上に置かれた黄色のフィロソファストーン――哲学者の石Philosopher’s Stone(PS)――の存在を確認した。フィロソファストーン(PS)は、先ほどひばりが確認した時と同様に、黄色く光り輝いていた。


 子犬はそれを見て、長い時間探し続けてきた魔法少女に、こうして再び巡り合うことができたことを実感すると、少しほっとした。


 ――今目の前にいる黄色の魔法少女は、魔法少女としての資質は恐ろしく低い気がする……が、それでも魔法少女が見つかったというのは事実だし、この場所に魔法少女がいることがわかれば、他の魔法少女達もきっと近くにいるはずだ。うまく行けば、他の魔法少女達を見つけだせる可能性も大いにあるだろう。実際の戦力としては、この少女に頼らずとも、残りの魔法少女達に任せれば、特に問題はなかろう。何はともあれ、私の魔法少女が5000年振りに誕生したという事実を考慮すれば、この少女の私への功績というのは計り知れないものなのだからな……黄色の魔法少女がアホだろうと、多少不測の事態が起こったとしても……まあ……なんとかなるだろう……

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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