101. 異変の後
そして、それから30分くらい経った頃、ひばりは駅から降りて、プル達3人とも別れ、今は一人で自宅へ向って歩いているところだった。
ひばりは、放課後に起きた一連の出来事が今でも鮮明に頭の中に残っており、一人になって落ち着いた今、突然プル達が白黒になって、ミク、ナミ、ホタルの3人のマジカルキティを見て、マジカルキティの後を追いかけて廊下を駆け出して、それから廊下で大ゴケして、マジカルキティのシノに助けてもらって、気づいたら意識を失って教室で寝ていたことを思い出しては、一つずつあの時の出来事を振り返っていた。
夢にまで見た5色の魔法少女との初対面が、実は本当に夢でしたという夢オチは、ひばりにとって心底がっかりの出来事だったが、プルとミアをヤってしまったのも夢だったことを考えると、あれは夢でよかったのだと思わざるを得ない。
廊下で派手にコケて、あれだけ大きな怪我を負ったはずなのに――なぜか顔面が腫れて少しヒリヒリする他に――今はキズ一つないことを考えても、あれらの出来事はすべて夢でしかなかったはずが、それに反し、あの時に感じた興奮や心や体の痛みを、なぜか今でもはっきりと覚えており、いまだ気持ちはふわふわしたままだった。
だがしばらくすると、ひばりは考えるのが面倒くさくなってきた。
ひばりは、その場で一旦立ち止まると、
「うん。考えても仕方ない。もし放課後の出来事が現実だったとしても、だいたいこういったことの伏線が回収されるのって、しばらく時間が経ってからってのが定番だし……それよりも、今は今日の春巻きパーティーのことを考えるのが先決だ。」
ひばりは一人納得すると、以降、放課後の出来事のことなどすっかり頭から消え去って、それからいつもの元気を取り戻すと、再び家路へ向かってゆっくりと歩き出した。
ちなみに、どうでもいいかもしれないが、なぜひばりが今日の春巻きパーティーのことを知っているのかというと……洋子が夕食の準備をしようと、台所で春巻きの皮を買い忘れていたことに気づいた時、万智の他にひばりにも同様の連絡を入れていたからだった。なぜ洋子がそんな意味不明なことをするのか、まったく理解できないが、支子家ではこういうことが日常茶飯事で、今さら考えたところで仕方ない。そして結果として、万智はスーパーで春巻きの具材を買って帰り、ひばりは春巻きの具材を買うのをすっかり忘れていた。これが正解であり、支子家にとっては、至ってこれが通常運転なのである。
ひばりは、いつもの桃色の魔法少女のバックパックを背中に担いで、ガチャガチャさせながら角の道路を曲がると、やがて自宅が前に見えてきた。
ひばりは家に入ろうと正面玄関を見据えた時に、なぜか自宅の正面玄関の前に、小さな子犬が佇んでいるのに気がついた。
「あれ? 子犬だ。」
すると子犬の方も、ひばりの存在に気づいてはっとすると、起き上がって2、3歩ひばりの前に進み出た。
ひばりはその子犬を見た瞬間――理由はわからないが――とにかくとてもイヤな予感がした。この子犬に関わってしまうと、なぜかロクなことにならないような気がする。大体こういった時のひばりの第六感はなぜかよく当たるのだ。
ひばりは、その子犬と目が合った瞬間、その子犬に対し一瞬露骨にものすごくイヤそうな表情をしてしまったが、素早く普段の表情に戻すと、そのまま首を玄関の方に向けた。
子犬は、なおもひばりの方をじっと見つめていたが、ひばりの方は、できるだけ子犬と目が合わぬよう視線を反らすと、あたかもその場に子犬がいたことに端から気づいてなかったような振りをして、子犬のことを無視しそのまま家の中へ入ろうとした。
そして、ひばりが玄関のハンドルに手を掛けたその瞬間、
「ふむ。お前が魔法少女か。ずいぶんと長い間探したぞ。」
とても可愛らしいが、どこか威厳に満ちた声が後ろから聞こえてきた。
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