Episode 68 決着
(内田side)
やっぱりな…。森田、しびれを切らしたら負けなんだよソフトテニスは。苦しくても耐えて、来るかどうか分からないチャンスボールを待ち続ける。お前はどうも攻め急ぐ。周りが見えてないんだよ。
気が利くヤツってのは、周りのことをよく見てる。白城がそうだ、アイツは常に身の回りのものに気を配り、何をすればいいのか考えている。まあ、それをテニスに活かすことはできてないが…
それに比べて森田は、俺の言うコトの反抗する。まあ反抗すること自体は悪くない。だがな、周りの人間への影響を考えれば、不満を態度やプレーには出せないハズなんだよ。今のお前に一番手は任せられない…。
試合は運命の第6ゲーム。早瀬・森田ペアに勢いはなかった。前のゲームで二人の間に亀裂が入った。「信用できない」、そう思ってしまえばお終いだ。森田のプレーは雑になっていく。
勝負を諦めた、そんな風に思えるプレーだった。考えずに初球からボレーしに行く。そこに駆け引きなんてものはない。長瀬は落ち着いて森田の先を通す。だが、早瀬が無理に攻めサイドアウトになってしまう。
それからはあっという間だった。すぐに試合は終わった。長瀬・上原ペアが一番手だ。
「長瀬さん、すごかったです!」
「白城、お前練習に集中しろよ…まっ、ありがとな」
「すみません…」
「白城君は長瀬君を応援してたの?」
「どっちも応援してましたよ?久井さんはどうなんですか」
「私は亮に勝ってほしかったなぁ」
「亮…?」
「あっ、森田君のことね。下の名前亮って言うの」
「そうなんですか…」(どうして下の名前で呼ぶんだ?)
「だいぶ落ち込んでるっぽいしなぁ、ちょっと行ってくる」
「あ、はい」
「亮、落ち込むことないよ…」
「依茉かよ…今は一人にしてくれ」
「私が話聞いてあげよっか?」
「いいから…」
「えーなんで…」
えっ、なに…二人付き合ってるの?だよな、そうじゃないと下の名前で呼び合わないよな…いつから?俺、今まで知らなかったんだけど、え?なんで、は?、いや、えっ、え…
「ドンマイ、知」
「えっ、あ、雄星…」
「いい加減諦めたら?」
「いや、まだそうと決まったワケじゃ…」
「何?あの感じは付き合ってるでしょ」
「えっ、どうした雄星…」
「思い切って動くことのできない知じゃ、無理でしょ」
(…!!)
「これでテニスに集中できるね」雄星はそう言って笑った。目の奥は笑ってなかった。まるで俺のコトを蔑むかのように。でも今の俺はそれに反応する気力はなかった。
心にポッカリ、大きな穴が開いた。そして気付いた、世界はほとんど色味がないのだと。




