Episode67 意地
坂井高校の一番手を懸けた試合は、白熱していた。ゲームカウント2-2で、流れは早瀬・森田ペアだった。
(長瀬side)
今までペアだった森田が敵だとやりにくい。自分の癖を知っているからか、さっきから都合よく誘われてしまってる。幸汰も今までで一番いい球を打ってくる。スピードも重さも俺と同じくらい。
でも、俺には今年ずっと1番手として戦ってきた意地がある。ここで負けるわけにはいかない。
(早瀬side)
いい感じだ…。長瀬さんをここまで追いつめているのは初めてだ。上原さんが相手なのは嫌だけど、上原さんを倒さないと春季では良い所まで勝ち進めない。調子も良い、球もいつもより勢いがある。この試合、絶対に勝つ。
(上原side)
なーんか上手くいかねぇな。俺以外みんな殺気立ってるし、もっと楽しんでテニスしようぜ…まっ、できることやってれば勝てるはず。
(森田side)
思ってたよりも長瀬が強いな…誘えているが、さすがは長瀬だ。誘いにだいぶ乗らなくなってきた。こうなるとミスした方が負け。そしてミスを恐れてビビっても負け。早瀬が変なことしなければ負けないだろうな。とにかくこの試合に勝つ。内田、見てろよ?
第5ゲーム、長瀬・上原ペアがサーブ。ここで早瀬が攻めに出る。長瀬の1stサーブをストレートにロブを上げ時間をつくる。そしてなんと早瀬・森田がサービスライン付近に並ぶ。ダブルフォワード…!
ダブルフォワードは二人ともコートの真ん中よりややネット寄りに並ぶ、超攻撃的スタイル。これにより、下手にロブを打つとスマッシュで叩かれる。だからと言ってシュートボールを持って行っても、コ-スが甘いとボレーされる。つまり、長瀬にとっては非常にやりづらい陣形なのだ。
ただし、欠点もある。まず連携が上手くいかないと一気に失点する。センターのボールをうまく連携して返せないと一気に陣形が崩れコースに隙が生まれる。
また相手のロブが深い所に落ちると、これまたダブルフォワードの陣形は崩れ、後衛・前衛という普段の陣形に戻ってしまう。
長瀬は迷わずショートクロスに打つ。これで早瀬・上原ペアは少しサイド側に二人とも寄る。森田はライジング気味のローボレーを長瀬の方へ返す。だがそのボールを上原が待っていた。完璧なボレーが決まる。
このプレーで早瀬・森田ペアは少し苦しくなる。また同時に長瀬・上原ペアは勢いづいた。次のポイントもダブルフォワードを試すが長瀬が早瀬を徹底的に狙い続け、しびれを切らした森田が無理やり飛び出した。しかしボールはラケットのフレームにあたり、チップ(失点)となる。
第5ゲーム、4-1で長瀬・上原ペアが取る。ゲームはいよいよ最終局面へ…




