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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
ぶつかる壁

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Episode66 足りないモノ

「よっしゃ、じゃあ行くぞぉ―」


「お願いします!」


 俺はボレー練習に参加した。足の運び方、ボールへの入り方を再確認した。特に今日のボレーでスタートが遅いと分かったんだ。ボール出しの人がラケットを引いた瞬間に俺は動き始めた。「パァーン!」と良い音が鳴った!


「いい感じだ…この調子で」


怜人「白城ぃ、お前スタート早すぎるよ」


「マジで言ってる、怜人」


怜人「マジだって。ボール出しづらいんだけど」


「あぁ、悪ぃ。気を付ける」


 何でだ?ラケット引いた瞬間よりも遅くスタートしたら、意味ねぇじゃん…じゃあ足の動かすスピードを意識してみるか…

 足をどんなに動かしてもさっきのような完璧な当たりはなかった。一体どうすれば…

 「パァーン!」久井さんが良い音を鳴らす。そうか…久井さんが出るタイミングを見てみればいいんだ!

 そこで俺は久井さんの動き出す瞬間をじっくりと観察した。意外にもラケットを引いた少し後にスタートしていた。(ん…?やっぱりラケットを引いてからスタートしてる。なのにどうしてあんないいボレーが出来るんだ?)どんどん分からなくなってくる。久井さんに聞いてみるのが早いよな…


「久井さん!」


「どうしたの、白城君」


「ボレーの時、ラケットが引かれた瞬間に動き始めてますか?」


「うーんと、まぁそうだね。厳密に言うとラケットを引いて少し後なんだけど…」


「少し後…?」


「そう。何と言えばいいのか分からないんだけど…ラケットを引いた直後に皆一瞬だけ動きが止まる時があるんだけど…」


「止まる…?ピタッと、ですか?」


「ピタッと言うよりかはクッ、って感じかな?」


(いや、オノマトペで言われても…)


「分かりにくいよね、じゃあ私がやってみるよ」


「良いんですか!?」


「うん。岸君ー、何球かここらへんに出して」


「分かりました。じゃあいきますよ」


「見てて…今!」


「えっ、止まってましたか?」


「もう一回お願い!…ここ!」


(全然分かんねぇや…)


「止まると言っても、一瞬だけ溜める時かな…?」


「後衛の時、そういうコト考えて打ってなかったな…」


「まぁ、岸君はまだ分かりやすいと思うから…分からなかったらまた聞いてね」


「ありがとうございます、やってみます…」


 しばらく意識して練習に取り組んだが、さっぱり分からない。どこで力が一瞬溜まるのか、見当もつかなかった。てか、ラケット引いた後にスタートしたら今までと取れる範囲変わんねぇじゃん…それじゃあ意味ないんだよ。どうしよう久井さんにもう一回聞いてみようかな…


石井(前衛がボールに触れることができる範囲も、たかが知れてる)


 ふと思い出した。青井スポーツ杯の時石井が言ったことだ。


内田(お前な、無理と無謀は違うぞ?)


秦(なに勘違いしてんだよ、お前の強みは基本だよ)


石井(遊んでやる、そんな感じで相手してやればいいんだよ)


「そういうことか…!」


 俺に足りなかったのは、割り切りとテニスを楽しむ気持ちだ…いつの間にか俺は、完璧なプレーを追い求めていた。さっきの試合だって、幸汰の球はコースもスピードも今までのモノとは比べ物にならない。そんなボールを全部止める必要なんてない。狙い球を決めるべきだった。

 狙い球を確実に仕留める、その技術はすでにある。これが基本(・・)ってやつかもな…俺は白城知で森田さんや上原さん、宮川さんのようなすごいプレー出来ない。俺の強みは「基本」なんだ!

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