Episode 63 最悪
「本当にすいませんでした」
「ごめんな久井。お前の気持ちを考えなかった俺が悪い」
「いえ、内田さんのおかげでこんなに強くなれました」
「しかしな…本当にすまなかった。言いづらいだろうけどちゃんと思ってることは俺に言ってくれよ?」
「はい」
他人事のようにこの状況を見ていた。周りも何があったのか知りたそうに騒いでいるが、聞く雰囲気にはなっていない。柿田さんも一安心といった感じだろうか、さっきから泣いている。
「ごめんね依茉」
「私こそ勝手にごめんね?」
「ちゃんと言ってくれれば良かったのに…」また泣き始めた。
「私、由衣のために頑張るから」
「わたしもがんばるよぉぉ~」涙の勢いが増す。
(しかし、柿田さんよく泣くな…とにかく久井さんが戻ってきてくれて良かった…)
「みんな、春季大会まで残すところ1ヶ月だ。レギュラーも決まったことだし、今日から本格的に春季大会に向けて動き出そうと思う。まずは、1、2、3番手まで決めたいと思う。男子のレギュラー4ペアは試合の準備をしてくれ」
「今回こそは…」幸汰がボソボソと言ってる。
「幸汰、気合入ってんな…」
「そうだね。僕たちも絶対3番手以内には入ろう」
「任せとけ雄星」
「頼んだよ知」
「おう」
「早瀬、お前昨日みたいにしょうもないミスするなよ?」
「はい…森田さん今日もお願いします」
「ったく…今日もミスったらタダじゃおかないからな?」
「わかりました…」
一試合目は長瀬・上原vs倉田・宮川。この試合は長瀬さんのストロークが光った。宮川さんがボレーしようとしても力で負けてしまう。倉田さんは丁寧にコースを突くのだが、上原さんが際どいボールを先読みして動き難なく止める。ストレートで長瀬・上原が勝利した。
二試合目は早瀬・森田vs小川・白城。いよいよ俺の試合ってわけ。
「僕たちのプレーをすれば絶対に勝てるよ知」
「サーブレシーブミスをなくしていこう」
そう気合を入れて試合に臨んだ。だけど敵わなかった。雄星も俺もミスをしているわけじゃない。緊張で体が動かないわけじゃない。ただ圧倒的な実力差があっただけだ。
雄星も良い所に打ち込む。だけど雄星がどこに打つのか分かっているかのように、打った先に森田さんがいる。雄星のシュートボールでさえ涼しい顔して「大した事ない」といった感じで止める。
俺も幸汰のボールを読み切ってボレーをする。だけど少し甘くなると、すぐフォローされて立て直してくる。ボレーで点を取るために少し早めに動き出す。でもそうすると幸汰が俺の動きを見て俺を抜いてくる。
何もできないままストレートで負けてしまった。雄星も俺もあまりのボロ負けに頭が真っ白になる。
「ありがとうございました…」
「早瀬…お前あんなヤツら相手に手こずんなよ。前衛が大したことないんだからもっと抜けよ」
「いやでも…」
「勝てば良いんだよ、そうだろ?」
「長瀬さんに勝つためにいろいろ試したかったんで…」
「俺に任しとけって。長瀬の癖はよく分かってんだからよ…」
「でもまずは次の倉田さんたちに勝たないと」
「倉田…?大した事ねぇよアイツなんか。早瀬、ミスすんじゃねぇぞ?」
「はい」
(森田side)
(内田はなんでペアを崩したんだ?いくらなんでも4番手弱すぎるだろ)
「亮、調子良さそうだね」
「依茉…もう大丈夫なのか?心配したんだぞ」
「ありがとね。大丈夫だよ、じゃあ」
(なんだよつれねぇな…ん?)
「白城君、元気出して…」
(アイツ…まさか白城のこと…白城のどこが良いんだか。まっ現実見せてやったしいいか。白城なんて気にするまでもねぇよ)




