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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
冬の日々
48/50

Episode47 本当の理由

(高木side)

 俺の名前は高木たかぎ颯太そうた。一人っ子の俺は母親に愛されている。女で一つ俺を育ててくれた母親は俺のことを小さい頃からずっと「颯ちゃん」って呼ぶ。

 もう子供じゃないんだ、いい加減人前で「颯ちゃん」と呼ぶのはやめてほしい。でも俺は母親に対してそんなこと言えない。言える立場じゃない。


 「運動能力がある」そんなレッテルを貼られてから、周囲の人に運動以外の面で俺を認知してほしかった。みんなとは違うんだって思わせるために、あえて宿題を出さなかったり、授業中寝てみたりした。会話の時でさえも苦手なボケをしてみたり、明らかな嘘で友達を笑わせるように意識していた。

 みんなから「颯太はおもしろい」と言われていることを耳にした時は本当に嬉しかった。やっと自分が「運動能力」以外で認められたって思えた。


 でも大人たちからの評価は最低であった。「常識がない」だの「親の教育が悪い」だの「可哀そうなヤツ」だの言いたい放題であった。

 特に先生たちからの評価は最悪で学校に親を呼び出されて、一緒に怒られたことも何回かある。その度に「申し訳ありません。」と謝る母親の姿を見る度に心が痛くなる。

 三者面談が終わって二人で家に帰る時、「ごめんね、お母さん。」て言ったんだ。この言葉は本心だった。なのに母親は「颯ちゃん、人様に迷惑をかけないようにね。」と優しく言うだけであった。

 その時(なんで叱ってくれないんだろう。たまには声を荒げて怒ってくれよ。)と思ってしまった自分がいた。


 他人のことを考えられないと思われてる俺でも、中学の時「部活したい」って母親に言うのをためらった。たたでさえ経済的に余裕のないのに、部活なんてしたら余計に生活が苦しくなるだろ?だから「ソフトテニスをしたい」なんて言えなかった。

 なのに、母親は俺の心情を分かっているように、「颯ちゃん、何か部活やりなさいよ。お金のことは気にしなくていいから。」って言った。

 その一言にどれだけ救われたか。おかげさまで俺は中学三年間充実した日々を過ごせた。


 高校は家庭への負担が少ない公立高校に進学しようと思った。私立の高校も成績上位者は授業料免除とかあったけど、修学旅行とか授業料以外の金額を含めて考えると、とてもじゃないけど私立には行けなかった。

 俺にしては、頑張ったと思う。母親を安心させたい、その一心で受験勉強を乗り切った。なんとか坂井高校に合格したときは本当に嬉しかった。


 でも高校生になっても俺は中学の頃と何も変わらなかった。いや変えることができなかった。そのせいで部活動停止を食らった。

 また、坂井高校ソフトテニス部は俺の思い描いていた部活とは全く違った。みんな俺より上手だったし、みんなに馬鹿にされないように一生懸命だった。

 なのに一向に上手くならない。そればかりか周りとの実力差がどんどん大きくなる。いつの間にか俺は孤独であった。「ここに俺の居場所はない」と思ったと同時に「ソフトテニス、楽しくない。」と初めて思った。

 悔しい思いをして落ち込んでる時、秦に「お前センスない(笑)」と言われた。頭にきた。マジでぶん殴ってやろうと思った。胸ぐらをつかんだと同時に気付いた。「本当は自分でもセンスがない」って気づいてることに。

 認めたくなかった。ソフトテニスは俺にとって大切なものだったはずなのに、いつの間にか自分を苦しめていたことを。


 これ以上苦しみたくないからソフトテニスを辞めることにした。そう心に決めて一白城に打ち明けた。だって白城は自分の意見を口にするようなやつじゃない。俺の話をしっかり聞いてくれて納得してくれると思ってた。


 なのに、なのに、なのに…白城コイツは「辞めちゃダメだ。」なんて言った。


 「なんで…。」そういった時にはもう俺の視界は涙でぼやけていた。なんでか分からない。でも涙は止まらなかった。


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