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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
冬の日々
46/50

Episode45 嘘

 土曜日に校内戦を控えている。そんな今日水曜日の昼休み、俺は高木に呼び出された。高木が何を言うのかと思っていたら出てきた言葉は「部活を辞めたい。」であった。

 「はっ?」俺は予想をしてなかった言葉に驚くと同時に「なんで?」と聞き返した。高木の顔はいつものように穏やかではなかった。その表情が事態の深刻さを物語っていた。


「なんでって…もうソフトテニスが好きじゃなくなったんだ。」


「急に嫌いになるか?何か他の理由があるんじゃないのか?」


 高木が黙り込む。俺の問いは確実に図星を突いた。高木は嘘をつくのが下手であった。


「ないよ。」まばたきの回数が多くなった。


「そんなわけないだろ?」


「…。」再び高木は黙り込んだ。


「秦じゃないのか?秦に色々言われたから…」


「…。」


「俺は、誰一人として欠けてほしくないんだ。」


「…。」


「俺に話してくれないか、本当の理由を。」


 しばらくの沈黙の後、高木が重い口を開いた。


「なあ白城、お前は何のためにソフトテニスをやってるんだ?」


 俺がソフトテニスを始めたのは兄の影響であった。野球を始めたのだって兄の影響だった。何もかも俺は兄の背中に憧れた。今思えばただ「やりたい」という理由で始めただけで、久井さんみたいに何かに惹かれたわけでもない。

 「()()()()」なんだろう。俺は高木みたいにソフトテニスを心の底から好きなわけではない。レギュラーになりたいとは思うけれど、何が俺のソフトテニスを続けている理由なのかイマイチ分からない。

 高校に入って、実力がなかったから前衛になった。前衛になっても上達なんてしてない。ずっとCチームのままで悔しい思いをしている。それなのに部活を続けてる理由って、「久井さんに会うため」だよな…。

 しばらくして俺は理由を少し嘘を交えながら語り始めた。


「俺には尊敬する人がいるんだ。」


「尊敬する人?」


「そう。俺はその人の背中をずっと追いかけてる。その人に認められたくて頑張ってる。」


「誰だよ尊敬してる人って?」


「名前は言えない。」


「なんで?」


(尊敬する人が久井さんなんて言えるわけないだろ!)そう思いながら俺は無理やり話を続けた。


「だけどその人は責任感?が強くてさ、試合で負けたりするとめっちゃ落ち込むんだよね。」


「その人のどこを尊敬してるんだよ。」


「全部だよ。これは嘘じゃない。」


「はぁ?意味わかんね。」


「みんなに優しく対等に接したりテニスが上手だったりするのは俺と違って完璧な人間だなあ尊敬する。でもそんな人でもたまに弱さを見て取れることがある。それもいいんだよ、完璧じゃないって思えて。」


「お前…何言ってんだ?」


「まあ要するに、完璧な人間はいないってことだ。」


「何が言いたいんだ?」


「高木、俺に本当の理由を全部言ってくれ。」


 またまた高木は黙り込む。一度高木の目線が下がる。しばらくして重い口を再び開けたのであった。








 


 



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