Episode43 それぞれの気持ち
(久井side)
新しい年になったと同時に、私の部活も残り半年ちょっとになった。新人戦では目標としていた個人ベスト8に入ることができた。正直言ってスゴイ嬉しい。
でもベスト8になったら周りの雰囲気が明らかに変わった。今まで無名だった私が他校の人に名前と顔が一致するぐらいにまで覚えられている。私はバス通学で駅の停留所でいつも乗り降りをしている。停留所から学校に行くためには駅の中を通り抜けないといけない。駅は東京とか都会のものと比べれば小さいのかもしれないけれど、私が住んでいる県の中では一番大きな駅だ。その分通り抜ける時に他校の子とすれ違うこともある。その時に「あれ、坂井高校の…」とか言われるとなんだか嫌になる。
しょうがないことだとは思う。だって県でベスト8になれば知名度も上がるだろうし…でも、今まで無名だったのに急に注目されるとこそばゆい。
内田さんだって変わった。新人戦の後から由衣と私に以前よりも厳しくなった。おそらくだけど、内田さんも次の春季大会で私たちになんとしてでも個人でベスト8以上に入ってほしいのだと思う。
周りからの期待が大きくなるほど、私はどんどん追い詰められていく。みんなに見られてると思うと、変に緊張しちゃう。練習でも失敗なんてできない。
なのにいつも白城君は真剣だけど、楽しそうにやっている。キツイ練習の後でも笑っている。本当にテニスが好きなんだなって思う。今の私はただ負けないためにテニスをやっている。
「前みたいに勝敗を気にしないで心からテニスを楽しむなんてもうできない。」って思ってる。
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(白城side)
川迫・橋本ペアでさえ個人ベスト64止まりなのに、個人ベスト128の俺がレギュラーになれるのか?次の春季大会でレギュラーに入りたいけど、最近上達している気がしない。久井さんのプレーを見るたびに自分がいかに未熟なのかを思い知る。できない所が次々と見つかると不安になる。
レギュラーになるために前衛になったのに、チーム内の立ち位置は全く変わらない。努力しているはずなのに、ずっとCチームのまま。正直つらい。才能のない自分が嫌になる。でも落ち込んでいるのは俺だけじゃない。
久井さん、最近練習中のため息が多い気がする。前はあんなに落ち込むことはなかったのに…個人でベスト8に入るとプレッシャーがあるんだろうな…
久井さんが頑張っているんだ、俺もこんなことで悩んでる場合じゃないな。




