信用
俺はここが異世界であることを実感した。
だとするとここの大草原はモンスターの生息地なのだろう。
ゴブリンを倒したときに気づいたのだが、転移して体や顔がすべて別人級に変わっただけでなくバケモノ級の身体能力をゲットしていた。
それと同時に俺は魔剣の恐ろしさに驚愕した。
剣術も格闘技も扱えない人間が一撃でゴブリンを仕留めた。
しかも軽く剣を振っただけだ。
ひょっとするとすごい剣なのかもしれない。
恐るべじ魔剣。
そして俺は決意した。
それはこの異世界で魔王になることだ。
この魔剣があれば魔王になれるかもしれない。
あのころの厨二病を実現させよう。
目標がないとダラダラするだけだ。
これが俺の異世界での目標だ!
その前に服を見つけよう。
もう夜だし全裸のままじゃ体調を崩しそうだ。
どこか寒さをしのげるところを探そう。
俺はそのとき、灯りを見つけた。
歩くこと数分ついに目的地に着いた。
そこはRPGで体力を回復させるための宿舎のようなところだった。
とりあえず中に入ろう。
不安と緊張を胸にギーという重い音を立てドアを開けた。
「どうした、あんちゃん?」
中に入るとハードボイルドを体現するような中年の男が居た。
男と目が合った。
「ん?全裸?新手のナンパか?」
まずい、何も考えずに来たせいだ。
どう説明したらよいのか。
「まあ、色々事情がありそうだな。とりあえずそこにある服着な」
事情があるのを察してくれたようだ。
指を刺された方向には初期装備のような旅人の服があった。
着るものがあるだけでもありがたい。
「ありがとうございます。ところであなたは、、」
「俺はこの近くで狩りをしているアルヴァという者だ」
アルヴァさんか。見た目のように力強い名前だ。
「あんたは?」
「俺は、、」
しまった。
名前をどうするか決めていなかった。
前世の名前だと異世界ぽくない。
そうだ。
前世の名前をいじって異世界ぽい名前にしよう。
「俺はアスラ。アスラ=キサノア」
なんとかっこいい名前だろう。
我ながらかっこいい名前だ。
今後俺はアスラ=キサノアと名乗ろう。
「アスラか、、良い名だ」
しかし一つだけ疑問があった。
それは言語だ。
この世界では日本語が通じるのか。
何も考えずにアルヴァさんとは会話ができた。
転移したことでこの世界の言語も自由自在に使えるのだろうか。
何にせよたくさんオプションを付けてくれたようだ。
「ところでここはアルヴァさんの家ですか?」
「いや、ここは冒険者たちの旅の拠点だ。知らないのか?」
おそらく常識なのだろう。
この世界に来たばかりだが情報量が多すぎて脳がついていけない。
「逆に聞きたいのだがアスラは何者だ?」
答え方に悩む。
おそらくアルヴァさんは悪い人ではない。
信じられない話かもしれないが正直に話すしかなさそうだ。
「実は、、、」
俺は勇気を出して本当のことを打ち明けた。
アルヴァさんは出会ったばかりの俺の話を真剣に聞いてくれて、ときどき何か考え込んでまた話を聞いてくれた。
俺は驚くほど安心できて話した。
前世での俺。
異世界での俺。
手に入れた謎の魔剣。
すべて話しきった。
「それは大変だったな。異世界から転移した人間の話は聞いたことがないしな、、、」
俺が話したことはすべて信じてくれた。
「とりあえず明日、朝に街に行って冒険者ギルドに登録しに行くぞ」
「はい!!」
アルヴァさんに出会えて本当に良かった。
ちなみに旅の拠点ではベッドは使い放題のようだ。
その日、俺は思い切りふかふかのベッドの上で眠った。
そうして俺の異世界での記念すべき1日目は終わった。




