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魔獣災害――前世の記憶を持つ俺が日本を救うまで 双世界の守り手  作者: 玄呂 恭真
1章

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26話 共同戦線

「でも、その説明だと、なぜ未確認生物が魔力を持てるんですか? エネルギーを体内に蓄えられるとは思えないのですが。」


川村さんが質問をしてきた。

俺は一度息をつき、四人の顔を順番に見回した。


「その説明は非常に難しくて……正直なところ、今でも答えは出せていません。」

部屋に静寂が訪れる。


「…少し長くなりますが構いませんか?」


四人は黙ってうなずいた。


「まず魔力を持っているのは魔獣に限った話ではありません。俺も持っています。なので俺は魔法が使えます。ですが、皆さんも同じように魔力を持っています。」


四人は驚きのあまり勢いよく立ち上がった。


「我々も魔力を持っているのか」

「ではなぜ我々は魔法が使えないのか」


天城総理、山田官房長官が言った。


「それは、魔力量が極端に少ないからです。多さで考えれば比べものにならないほどの差があります」

「なるほど…」

「では、なぜ動物と魔獣を区別しているのですか。」


ここで初めて総理秘書がしゃべった。今まで喋らず、部屋に入った時も会釈だけだったのに。

総理秘書は、四、五十代ほどの落ち着いた雰囲気の男性だった。長身で細身、表情をほとんど変えず、淡々とメモを取っている。俺は秘書の目を見て答える。


「単純に魔力量の違いです。厳密には魔力によって身体能力が強化された生物を、魔獣と呼んでいます。」

「なるほど」

「中には寿命が何倍にも延び、千年以上生きる個体もいます。エルダーウルフのように」


四人は静かに座り話を聞いていた


「ただ、どうやって魔力を体内に保持しているのかまでは分かりません。魔獣には魔力を蓄える器官か、あるいは魔力を循環させる仕組みがあるのかもしれませんが、現時点では推測の域を出ません」


秘書は今の話を事細かくメモしていた。


「ここでようやく最初の質問に戻れます。どこでその力を手に入れたか」


総理はうなずいた。


「正直それは俺にもわかりません。気が付いたら魔法が使えるようになっていて、知識もまるで思い出したかのように頭の中へ流れ込んできました。」


さすがに前世の記憶は言わないでおこう。何が起きるかわからないし、何より日本を守るには必要のない情報だからだ。


「では一体いつ魔法が使えるようになったのか教えてくれないか」


総理が質問をしてきた。


「最初の茨城で魔獣が出た時です。ワイバーンに襲われて気絶し、目を覚ましたときには使えるようになっていました」


総理がこちらを真剣に見ていた。まるで見定めるように。


「わかった。君を信じよう」

「ありがとうございます」


俺は総理に会釈する。


「では確認したい。君は今後も、政府に協力する意思があると考えていいのか」


山田官房長官が口を開いた。


「もちろん、そのつもりです。」


俺は穏やかに答えた。


「その条件のことなんだが、情報の秘匿、軍事利用の制限、君、そして君の家族や友人の安全保障。この条件について、政府としてもできる限り沿う形で進めたい。もう一度詳細を君から聞かせてくれないか」

「構いませんよ、まず一つは情報の秘匿、これは、俺が話した内容を、俺が認めた相手以外には共有しないでください。情報がどこまで広がるか分からない以上、管理できる範囲を限定したいんです。二つ目の軍事利用の制限は俺が提供した知識や情報を、原則として軍事目的に転用しないこと。もちろん、日本を守るために必要な防衛研究まで否定するつもりはありません。ですが、それが他国への攻撃や軍拡競争につながるような使い方は認められません。そして三つ目、俺自身と、家族や友人の保護を約束してください。もし情報が流出すれば、マスコミや悪意ある人たちに狙われる可能性があります。家族や友人まで危険にさらされる可能性があります。だからこそ、その安全を保証してほしい。これでいかがですか」


総理、そして山田官房長官、川村さんが目を合わせ意思疎通を図っていた。


「その条件を政府として飲むことはできるが一つ目の情報の秘匿が具体的にはどこまで秘匿するのか教えてくれないか?君の情報は作戦の上とても重要だ。これを現場に伝えなければならない。そして我々には国民に伝えなければいけない」


山田官房長官が言う。確かに国民に現状を伝えなければ国民は納得しないだろう。


「わかりました。では俺が魔法を使えるなどのことだけは秘匿してくれるとありがたいです。マスコミに追われたり、研究機関から人体実験の対象にされたりと、面倒なことが増えてしまうので。」

「わかった。我々として戦力として、あるいは知識面で協力してもらう。それでいいか?」


総理が言う。


「はい」


俺はソファーから立ち、総理の前へ歩み寄る。

総理も静かに立ち上がり、右手を差し出した。

俺はその手をしっかりと握り返す。


「よろしく頼む。」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」


俺たちは固く握手を交わした。

その温もりは、単なる約束ではない。

日本の未来を背負う覚悟と、俺自身がもう普通の大学生には戻れないという現実を、静かに突きつけていた。

――こうして、俺と日本政府との共同戦線が始まった。


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