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魔獣災害――前世の記憶を持つ俺が日本を救うまで 双世界の守り手  作者: 玄呂 恭真
1章

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23話 現状報告

医務室で処置を終えると水上二等陸佐が扉から入ってきた。

手にはお盆が乗っていて食欲をそそるにおいが部屋中に広がった。

それを俺の座っているそばの机に置く。

お盆にはプラスチック製の食器に盛られたカレーライスが載っていた。


「ありがとうございます。お腹すいていました」


昨日の昼から何も食べていなかった。


「避難所で配っているものです。うちの隊のご飯はおいしいですよ」

「それは楽しみですね」


水上二等陸佐に一礼をする。


「自衛隊のカレーは有名ですよね、たしか金曜カレーでしたっけ」

「確かにありますけどそれは海上自衛隊ですけど」

「あ、そうなんですか。初めて知りました」

「海上自衛隊では、曜日感覚を保つためなどの理由で金曜日にカレーを食べる習慣があるんです」


俺はカレーを食べながら話を聞いていた。


「それで遥人さん、怪我の具合は大丈夫ですか?」


怪我は消毒してもらい包帯を巻いてもらった。今は自衛隊の方が用意してくれた戦闘服に着替えており、包帯は服の下に隠れていた。


「大丈夫です。包帯など巻いてもらって楽になりました。服も用意してくださりありがとうございます」

「いえいえ、すべて上からの指示ですから」


上からの指示……。

おそらく天城総理のことだろう。そう考えている間にカレーを食べ終わる。


「では遥人さん指揮室にお越しください。皆様がお待ちです」

「皆様?」


だれだろう、と思いつつ水上二等陸佐についていき指揮室へ向かった。


***


「ここが指揮室です。どうぞお入りください」


目の前には大きな深緑色のテントが設営されていた。

水上二等陸佐が入口の天幕を持ち上げてくれたので、俺は軽く頭を下げて中へ入る。

中にはコの字型に机が並べられ、その上にはノートパソコンや無線機、地図が所狭しと置かれていた。正面には大型ディスプレイが数台並び、周辺の地図や各部隊の位置情報が映し出されている。

隊員たちは絶えず無線で情報をやり取りし、モニターへ視線を向けながら慌ただしく動き回っていた。

俺の後に入ってきた水上二等陸佐が中央の席に座る人物へ声をかける。


「二等陸佐、黒瀬さんをお連れしました」


声を掛けられた人物はゆっくりと立ち上がり、こちらへ歩いてきた。


「初めまして。第一空挺団所属の原田一等陸佐です。どうぞよろしくお願いします」


原田一等陸佐は右手を差し出した。俺もそれに応じ、固く握手を交わす。


「黒瀬さんのお話は上から伺っております。ご助力、誠にありがとうございます。どうぞ、お掛けください」


原田一等陸佐に促され、俺は空いている席へ腰を下ろした。

正面の大型ディスプレイには被害のあった地域の地図が映し出されている。

赤い印がいくつも表示されていたが、そのほとんどには「討伐完了」の文字が表示されていた。

原田一等陸佐が画面へ視線を向けながら口を開く。


「まずは被害状況をご報告します」


会議室の空気が一段と引き締まる。


「確認された魔獣は合計64体。そのうち64体の討伐を確認しました。」


画面の表示が切り替わる。

倒壊した住宅や炎上した建物の航空写真が映し出された。


「建物への被害は大きいものの、住民の避難が比較的早かったこと、そして黒瀬さんが神社周辺の魔獣を討伐してくださったおかげで、人的被害は抑えられました」


そう言って原田一等陸佐は俺に向き直る。


「黒瀬さん。本当にありがとうございました。あなたのご助力がなければ、この町はさらに甚大な被害を受けていたでしょう」


会議室にいた隊員たちも静かに頭を下げた。

俺は少し戸惑いながら頭を下げ返す。


「いえ……俺一人の力ではありません。皆さんが避難誘導や住民の防護をしてくれたからこそです」


原田一等陸佐は小さく頷いた。


「それでも、あなたがいなければ結果は違っていたでしょう」


そう言うと、ディスプレイの画面が再び切り替わる。

そこに映し出されたのは―総理だった。


「遥人君一国の代表として感謝する。おかげですべてに魔獣を倒すことができた。」

「いえ、ただ一つ聞きたいことがあります」


俺は原田一等陸佐に体を向けた。


「自衛隊の方々が持っている小銃で魔獣を討伐することはできましたか」


ずっと引っかかっていた疑問があった。フォレストウルフも、ワイバーンも小銃の小さい球では倒せないじゃないかと。身体強化した物理攻撃ではまだしも小さい弾丸では威力不足ではないか?と

その問いに原田一等陸佐が答えた。


「ご指摘の通りあの魔獣たちには小銃の効果は認められませんでした。よくて足止め程度だったことが隊員からの報告で判明しています」


周りの隊員たちも目を伏せ。

総理が小さく息を吐いた。


「そうか、銃でもダメか…」


その言葉には、単なる戦力評価以上の意味があった。

国家の常識が通用しない現実。

それが、目の前にあるという事実。

総理の表情がわずかに曇る。


「遥人君。昨日話せなかった話がある。今から官邸に来られないか」


一瞬、室内の空気が変わった。

俺は迷わなかった。


「わかりました。すぐに向かいます」


俺は原田一等陸佐に頭を下げテントを出た。


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