22話 終結
俺は勢いよく目が覚めた。息が荒い。
周りを見渡すと太陽が地平線から昇っている。
あたりは朝日で明るく照らされ木々の間から漏れる光が心地よかった。
起き上がろうとすると全身がきしむように痛む。
傷だらけの体。血の匂いが鼻につんざく。
そしてさっきの夢、いや夢ではない。
あれは確か忘れていた記憶だ。
手を膝につきゆっくり立ち上がる。
「アティーナ…俺頑張るよ」
あの日本を救うために、男を止めるために、そして友人、家族を守るために。
魔力が回復していたので飛翔魔法で飛ぶ。
町ではいまだに戦闘が続いているようだ。魔力探知にも複数の反応ある。
おそらくフォレストウルフの反応。
急いで現場に向かう。傷は回復魔法で応急処置は終わっている。
ある程度高度を上げると町から黒煙や銃声が響いていた。
「急がないとな」
***
10匹ほどのフォレストウルフが自衛隊と戦っていた。
周りは家に囲まれ一般の住宅街が銃やフォレストウルフの攻撃で壁は壊れ、見るにも無残な光景が広がっていた。
「撃て、撃ち続けろ。あいつらから国民を守るんだ」
自衛隊の隊長らしき人が鼓舞していた。
しかし、フォレストウルフはひるまない。効いていないようだ。フォレストウルフはある程度の物理攻撃でないとあの硬い毛皮は貫通できないだろう。集団の中のフォレストウルフの一匹が走り出す。自衛隊員を襲うつもりだ。
「に、逃げろー!」
隊員たちは引き金を引き続けながら後退する。
しかしフォレストウルフの速度は圧倒的だった。
一瞬で先頭の隊員との距離を詰める。
「くっ――」
隊員が小銃を構え直したその時だった。
フォレストウルフの首が次々と宙を舞う。
鮮血が飛び散り、数秒後には十匹すべての魔獣が地面へ倒れ伏していた。
先ほどまで響いていた銃声が止む。
隊員たちは何が起きたのか理解できず、その場で固まっていた。
俺はゆっくりと地面へ降り立つ。
着地した瞬間、膝に痛みが走った。
「っ……」
思わず顔をしかめる。
エルダーウルフとの戦いで負った傷は回復魔法で塞いだが、完全には治っていない。
隊員たちの視線が一斉にこちらへ向く。
その中から一人の男性が前へ出た。
肩についている階級章を見る限り指揮官だろう。
「君は……昨日の……」
見覚えがあった。
神社で会った第一空挺団の水上二等陸佐だ。
「水上二等陸佐」
俺が名前を呼ぶと、水上二等陸佐は驚いたように目を見開いた。
「無事だったのか」
その言葉に、周囲の隊員たちもざわつく。
「知り合いなんですか?」
「総理官邸から連絡が来ていた協力者だ」
その一言で隊員たちの表情が変わった。
だが完全に信じているわけではない。
当然だろう。
突然空から現れ、十匹の魔獣を一瞬で倒した少年など普通は信じられない。
水上二等陸佐は俺の服についた大量の血を見て眉をひそめた。
「その怪我で動いているのか?」
「問題ありません」
正確には問題だらけだ。
だが立てないほどではない。
それよりも――
俺は探知魔法を広げた。
すると町の各所にまだ魔獣の反応が残っている。
数は二十以上。
「まだ終わっていません」
俺は町の方を見る。
黒煙が上がり続けていた。
「魔獣はまだ残っています。俺はそちらへ行きます」
「待て!」
水上二等陸佐が呼び止める。
「一人で行くつもりか?」
「はい」
そのまま浮遊魔法を発動する。
足元に青白い魔法陣が展開された。
隊員たちが息を呑む。
俺の身体はゆっくりと浮かび上がった。
「また後で」
次の瞬間、俺は空へ飛び上がった。
後ろで隊員たちのどよめきが聞こえた。
***
あれから30分ほどで全ての魔獣を倒し終わった。
今は自衛隊の人たちに案内され野外指揮所に向かっている。
「水上2等陸佐ご無事で何よりです、案内ありがとうございます」
「こちらこそ助けていただきありがとうございます。酷い怪我のように見えますが大丈夫ですか?」
水上2等陸佐が胸の怪我を見ながら心配そうに聞いてきた。
「えぇ、一応応急処置をしていので命に別状はありません」
「もし良かったら医務室をご利用ください、指揮所にはその後に向かいましょう」
「ではお言葉に甘えて」




