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魔獣災害――前世の記憶を持つ俺が日本を救うまで 双世界の守り手  作者: 玄呂 恭真
1章

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19話 茨城4

握る剣に自然と力が入った。今の俺にやれるか、いや考えても意味はない。

目の間にいるのは「エルダーウルフ」。伝説級の魔獣だ。

だから何だ。俺はこいつを倒してやつを追わなきゃいけない。

目の前にいるエルダーウルフの後ろ上空に魔法式を展開する。


「火属性中級魔法 紅蓮槍グレンランス


展開した魔法式が赤く燃え上がる。

だが、ただの炎槍ではない。2倍の大きさがあり、

前世で俺が何度も使い、アティーナに何度も修正された、対大型魔獣用の貫通特化魔法。

空中に生まれた巨大な炎の槍が、夜の境内を赤く染めた。

エルダーウルフがこちらを睨む。

その巨体から放たれる圧だけで、膝が震えそうになる。


「行け」


俺の言葉と同時に、炎槍が轟音を立てて放たれた。

エルダーウルフに直撃する。後ろ足に貫通し尻が地面に着いた。


「よし、あとは首を切るだっ…」


距離をつめると目の間にエルダーウルフのしっぽが飛んできた。

急いで魔法障壁を張った。尻尾と魔法障壁がぶつかる。

しかし尻尾の威力は止まらない。魔法障壁にどんどんひびが入っていく。

そしてついに魔法障壁が割れる。

そのまま威力を保ったままのしっぽが迫ってくる。

手を十字に重ね受け身の体制になる。しかし、威力は思っていたよりも強かった。俺は空中に吹き飛ばされその勢いのまま神社の入り口にある駐車場まで飛んでいく。

俺の身体は地面に叩きつけられたが、その勢いのまま硬いアスファルトを引きずられた。背中の痛みが波のように全身に広がり、呼吸もままならない。

速度が落ちていき止まる。


背中の痛みが全身に駆け巡る。身体強化していなかったら死んでいただろう。

痛みに耐える間もなく、エルダーウルフが突進してくる。さっき撃ち抜いたはずの脚は、何事もなかったかのように治っていた。背中の痛みで起き上がることができない。しかしエルダーウルフとの距離はどんどん縮まっていく。


「や、やばい、何とか回避しないと」


とっさに自分に風魔法をかける。体は風によって吹き飛ばされ、あと数メートルのところでなんとかエルダーウルフの突撃を避ける。そのまま浮遊魔法をかけ空中で体勢を立て直す。


「あぶねー間一髪だったな」


背中に回復魔法をかけ痛みをとる。時間がなく傷までは治せない。


「上から魔法で倒すしかないか」


そう考え、俺はさらに高度を上げた。エルダーウルフは地上戦に特化した魔獣だ。

少なくとも書物の知識ではそうなっている。ならば空中から一方的に攻撃を叩き込めばいい。

掌に複数の魔法式を展開する。


「火属性中級魔法――紅蓮槍」

「風属性初級魔法――風波」


次々と放たれた魔法がエルダーウルフへ降り注ぐ。

爆炎。衝撃。境内の地面が砕け、土煙が舞い上がる。

しかし――


「なに……?」


探知魔法が異常を告げた。エルダーウルフの魔力が減っていない。

いや、それどころか。増えている。

土煙の中から赤い光が漏れ始める。


ゴォォォォォ……


低いうなり声。その瞬間、土煙が吹き飛んだ。

そこに立っていたエルダーウルフの身体には、赤黒い紋様が浮かび上がっていた。

撃ち抜いたはずの傷は完全に消えている。それどころか先ほどよりも魔力反応が強い。


「冗談だろ……」


嫌な予感が脳裏をよぎる。前世の記憶の中でも見たことがある。

あの男が使っていた禁術。


「魔力暴走」。


無理やり魔獣の力を引き上げる強化術式だ。エルダーウルフがゆっくりと顔を上げる。

そして――

俺を見て笑ったように見えた。


「くっ・・」


突然自分の周りに竜巻が出現した。木々から葉や枝が飛び肌を切っていく。その竜巻はフォレストウルフの魔力が感じられた。


「魔法も使えるようになるのかよ」


禁術による強化は身体能力だけではなかったらしい。

俺は浮遊魔法にさらに魔力を注ぎ込み、一気に上昇する。

竜巻の上空へ逃れるためだ。

しかし――


「なっ!?」


上昇した先にも風の流れが追いかけてくる。

まるで意思を持っているかのように。

エルダーウルフは地上から俺を見上げていた。

その赤い瞳には、先ほどまでの獣にはない知性の光が宿っていた。


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