表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔獣災害――前世の記憶を持つ俺が日本を救うまで 双世界の守り手  作者: 玄呂 恭真
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/26

18話 茨城3

「そろそろ着くはずだ」


俺は前回と同じ参道を進む。木々の隙間から要石が見えてきた。

そして――そこには一人の人影が立っていた。黒いローブを纏った人物。

要石の前に立ち、要石に手をのせ何かをしている。


「……誰だ」


思わず足を止める。その後ろ姿に妙な既視感があった。

するとローブの人物がゆっくりと振り返る。

目立つ銀髪。整った中性的な顔立ち。そして冷たい赤い瞳。

その姿を見た瞬間、全身の血が凍りついた。


「――うそだろ」


忘れるはずがない。忘れられるはずがない。前世で俺を殺した男。

最後に見たあの顔が、目の前にあった。


「なぜ、お前がここにいる……!」


胸の奥から怒りと恐怖が同時に込み上げる。

しかし当の本人は不思議そうに首を傾げた。


「あ?」


低く不機嫌そうな声。興味なさそうにこちらを見る。


「あれだけ魔獣を放っておいたのに、まだ生き残りがいたとはな」


その声。その話し方。間違いない。俺の記憶に焼き付いている男そのものだった。

次の瞬間。考えるより先に身体が動いていた。地面を蹴る。身体強化魔法を全開で発動。

神速の踏み込みから首を狙って剣を振る。

キィィン!!

激しい金属音が夜の神社に響いた。


「ちっ……!」


俺の斬撃は届かない。男はいつの間にか剣を抜いていた。

漆黒の両刃長剣。柄には十字架を模した装飾。前世で何度も見た忌まわしい剣だ。


「あ?」


男の眉がわずかに動く。


「お前、魔法が使えるのか?」


初めて興味を示したような目になる。


「この世界の魔法は絶滅したと聞いていたんだがな」


男は鼻で笑った。


「あいつ、嘘をつきやがったか」


その瞬間。

押し返される。

圧倒的な腕力だった。

鍔迫り合いのまま俺の身体が吹き飛ばされる。宙で一回転しながら受け身を取る。

地面を滑りながら体勢を立て直した。


「なぜお前がここにいる!」


俺は叫ぶ。男は肩をすくめた。まるで興味がないと言わんばかりの口調で返される。


「俺たちは会ったことがあるのか?」


その言葉が俺の神経を逆撫でした。当然だ。

こいつにとっては前世の俺は知っているが今の俺は知らない。

だが俺にとっては違う。人生そのものを終わらせた相手だ。

俺は黙って魔法式を展開する。

火。

水。

風。

三つの魔法陣が同時に浮かび上がった。

「炎槍」

「水矢」

「風波」

限界まで魔力を注ぎ込む。

そして――放つ。

炎の槍が空気を焼き、

無数の水矢が雨のように降り注ぎ、

風の刃が大地を切り裂きながら迫る。

轟音。

爆炎。

そして大量の土煙。視界が完全に閉ざされた。


「はぁ……はぁ……」


肩で息をする。魔力消費が激しい。この身体では長時間の連続発動は厳しい。

前世の全盛期とは比べ物にならない。

威力も。

持久力も。

魔力量も。

何もかもが足りない。

それでも――


「頼む……効いていてくれ」


土煙の向こうを睨みつけた。やがて風に流されるように土煙が晴れていく。

そして現れた姿を見て、俺は息を呑んだ。


「……なっ」


男はそこに立っていた。

無傷で。その周囲には淡く光る魔法障壁が展開されている。俺の魔法は一発たりとも届いていなかった。

男は不機嫌そうに眉をひそめる。


「思ったより面白かったな」


視線が俺を捉える。まるで品定めをするような目だった。


「だが、戦うなら今じゃない」


男はそう呟くと漆黒の剣を地面へ向けた。

足元に巨大な魔法陣が展開される。複雑な紋様が青白く輝き、周囲の空気が震え始めた。

転移魔法。俺は反射的に駆け出す。


「待て!」


男は薄く笑った。


「これに勝てたら、また相手をしてやるよ」


そう言って視線を要石へ向ける。次の瞬間。

ゴォォォォッ!!

要石から凄まじい魔力が噴き上がった。

探知魔法が警鐘を鳴らす。

今までとは比較にならない反応。嫌な汗が背中を流れた。

「まさか……」


男は消えかかりながら口元を歪める。


「せいぜい生き残れ」


光が弾ける。そして男の姿は跡形もなく消え去った。

残されたのは巨大な魔法陣と――

要石の奥から近づいてくる、異常な魔力反応だけだった。


「これまずい、何かが来る」


一瞬で要石と距離を取り全力で迎える体制をとる。


ギャオオオォォ


大気そのものを震わせるような咆哮が、町全体に響いていた。

そこにいたのは巨大なフォレストウルフ。高さはビル三階建てに匹敵する大きさだ。

確か書物で読んだことがある。名前は「エルダーウルフ」。フォレストウルフの上位変異種。

千年以上を生きた個体だけが到達すると言われる伝説級の魔獣。討伐難易度Aランク。

だが実際には違う。上位冒険者ですら遭遇したら撤退を選ぶ。実質Sランク級の存在だ。


「なんでこんな奴が地球にいるんだよ……!」


握る剣に自然と力が入った。今の俺にやれるか、いや考えても意味はない。全力でやるだけだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ