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魔獣災害――前世の記憶を持つ俺が日本を救うまで 双世界の守り手  作者: 玄呂 恭真
1章

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12話 対談

5分くらい待っていると廊下から足音が聞こえてきた。

規則正しく、無駄のない音が部屋に響く。俺は振り返る。

そこにいたのは――一人の男だった。

無駄のないスーツ。整えられた黒髪に、わずかな白髪。そして何より、その目。

ただ視線を向けられただけで、身体が強張る。男は何も言わず、こちらへ歩いてくる。

自然と背筋が伸びた。やがて、俺の前の席に腰を下ろし手を組み両肘を机においた。

一拍の沈黙。

それだけで、場の主導権は完全に握られていた。


「――初めまして」


低く、落ち着いた声。

「内閣総理大臣、天城 恒一だ」

その名を聞いた瞬間、空気がさらに重くなる。


「黒瀬遥人くん」


名前を呼ばれる。心臓が一度、大きく跳ねた。


「君のことは、すでに把握している」


淡々とした声。だが、その言葉には一切の揺らぎがなかった。


「不明生物を討伐し、不可解な力を使う存在」


一歩、距離を詰められる。逃げ場はない。


「さて――」


わずかに視線が細くなる。


「君は、我々の敵か」


短い間。息が詰まる。


「それとも、味方になってくれるのか」


こういう状況は前世でも何回か経験がある。国のお偉いさんと面会することは慣れているつもりだった。

しかし、この人はその中でも群を抜いてオーラを持っている。


「まず一つ、私は敵ではありません」


経験上まず断言しておくのが重要だ。ただここからが重要だ。どこまで話すかは決めた。それだけの情報でいかに説得するかが重要だ。

開口一番そういうと総理は目を見開いていた。


「その根拠は何かね」

「理由は単純です。僕には守りたいものがある、家族や友人を。それに何より自分が討伐したことが何よりも証拠になっているはずです。それをそちらも理解しているのでは?」


そういうと総理は不敵な笑みをした。そして大笑いし始めた。

「ハッハッハ、これは驚いた。その年でそこまで見抜けるとはたいしたものだ」


俺はあっけにとられた。確かにこの人はテレビで見るときはいつもこんな感じだ。しかしさっきの変容ぶりには驚いてしまった。


「最初に試してすまない。私は現内閣総理大臣 天城 恒一だ。君のことは何と呼べばいい?」

「あ、え、なんでもいいです」

「じゃあ遥人君と呼ばせてもらうよ、ではまず君が敵ではないことに安心したよ」

「それで俺を呼んだ理由は何ですか」


自分を落ち着かせ淡々と質問する。一瞬沈黙が生ませた。総理の目にはどこか探るような目が伺えた。


「それは君もわかっているのだろう?あの茨城で起きた事件についてだ」

「えぇ、理解しています。ただ今更接触するには遅すぎるかと思います」

「確かにそうだな、しかしこの国の総理として国民を守らなければいけない」


総理は左手を上げ近くにいる秘書に書類をもらう。その書類を俺に渡す。資料にはワイバーンの死体やこの戦いの分析が書かれていた。


「この二日で調べさせてもらったよ。この生物は地球には未確認のものだった。DNA検査でもこの世にないものだっ

たものと確認している。 さて答えてもらえないか?この生物はいったい何なのか、そして君は何者なのか」


一瞬の沈黙が生まれた。その質問が来るとは予想していたがどう答えていいかいまだ考えられていない。

前世の記憶と魔法が使えるようになったがそれも一部でしかない。不確実なことをいうのも自分の首を絞めると思う。どうしようか….


「一つだけ、確認させてください」

俺は覚悟を決め、総理を真正面から見据えた。総理はわずかに目を細める。


「何かね?」

「あなたは、その知識を得て何を成し遂げたいんですか?」


静かな声で問いかける。


「未知の知識を手に入れて、軍備増強でもするつもりですか?」


部屋の空気がわずかに張り詰めた。

だが、総理は表情を変えない。


「私の目的は、この国の平穏だ。戦争を起こすつもりはない、あくまで自衛だ」


迷いのない声だった。


「あの事件を、日本政府が完全に解決したとは言えない対外的には沈静化したことになっている。だが、それも時間の問題だろう」


総理は静かに続ける。


「だからこそ、次に同じことが起きた時――日本という国が、自力で対処できる力を持たねばならないそのために、知識が必要だ」


……ごもっともだ。

実際、茨城の件が“終わり”なわけがない。

もし再びワイバーンのような存在が現れたら、今の日本では対処しきれないだろう。

知識が必要なのは事実だ。


「……わかりました」

俺は小さく息を吐く。


「少し、考える時間をください」


総理は黙って頷いた――だが問題はそこじゃない。

本当に信じられるのか?「前世の記憶」なんてものを。

普通に考えれば、頭がおかしいと思われるだけだ。

むしろ、どこかの研究機関で人体実験でも受けた、と言った方がまだ現実味がある。

だが、それ以上に怖いのは――

この力そのものだ、魔法。もしこれが軍事利用されたら?もし各国が奪い合えば?最悪、世界の均衡そのものが崩れる。それこそ、戦争の火種になりかねない。長い沈黙のあと、俺はゆっくりと口を開いた。


「……わかりました」


総理の視線がこちらへ向く。


「ですが、条件があります」


総理は静かに口元を緩めた。


「その条件とやらを聞こうか」


俺は頭の中で、考えうる最悪の未来を並べる。その上で自分で考えうる最高の条件を決めた。



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