#9
タバコ越しに見える彼女は、陽炎のように揺らいでいた。
チェインスモークとビールの合わせ技はアルコールを全身へ駆け巡らせ、柘榴の外皮のような顔はより一層彼女を希薄にした。彼女の行動は、彼女自身の存在を私に滲ませる一方で、目の前にいる存在からはどんどん離れていく。彼女が私の中に入れば入るほど、私の彼女は消えていくのだ。しかし、このような繰り返しの中でも、すべてに否定的になるわけではない。わかることの喜びが満ちてくることもある。考えが頭にあふれるのを感じながら、私は彼女からタバコを受け取った。
依存。何かに頼らなければ、何かをできない人間というものは非常に幼稚で、おしゃぶりをやめられない赤子のようなものだ。いつまでもそんなものから抜け出せないで、そんな自分が自罰的で儚げに思っていたやつもいた。一種の自己演出、そしてそれから抜け出せないというところまで含めることへの欺瞞が私の中にあった。
私はタバコに逃げるような人間ではない。そう思っていた。彼女の渡すタバコはコミュニケーションで、互いを認め合うための手段であった。タバコを避けていた私は、少ない知識を元に火を探し机を眺めていた。彼女は少し微笑むと、机に身を乗り出してきた。私のタバコに目を合わせて、彼女が近づく。その距離が短くなるほどに、私の中の彼女が増えていく。湿気で膨らんだ髪が、肌に薄く伝う汗が、タバコの煙とともに。緋色に輝く火が、タバコの先からこちらへ来て、向かい合う頭でできた影を少しばかり照らしていた。私は、彼女の半ば閉じた瞼をまじまじと見て、この瞬間がタバコなのだと感じた。
タバコの味を感じ、改めてタバコというものの要点がわかった。煙が喉の奥から咽頭を焼くのを感じる。強い酒を飲んだような辛みが、喉に絡みつき継続的に喉が濁る。彼女から香る甘い匂いは、苦みにすぐさま流されて、残ったのはニコチンのふらつきであった。
飲酒、喫煙、ふらつき始めた視界の中で、彼女を見る。彼女の姿が二重、三重と増えていくのに、私の思考はどことなく澄み、頭の中には心臓が血管を叩きつける音だけが聞こえていた。彼女もどこか落ち着いた様子で、口角を上げ、目が垂れていた。細い首筋から流れる一筋の汗が、鎖骨を過ぎ、ふくらみをなぞりながら落ちるのが浴衣の隙間から見えた。




