表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二十二歳、限界魔法少女  作者: みそ
第三章 混沌のメイドカフェ
PR
18/41

第十八話 ご案内されますにゃん!

 美々夏の魔法少女姿、ヴィーナスゴールドは巫女装束を現代風にアレンジしたような衣装だ。

 上に着ている白衣はくえはオフショルダーになっていて、肩とほっそりした二の腕が大胆に見えている。蝶の羽のように優雅にひるがえる袂には、金の糸で桜の花の模様が編み込まれていて、和を意識しているのがピュアホワイト的には好印象。リボンのように金の糸が垂れているのもヒラヒラしてかわいい。

 白衣の合わせ目に沿って、これも金糸で月桂樹のような模様が編み込まれていて気品がある。襟元には太陽をモチーフにした金の飾りが付いており、これがヴィーナスゴールドの闇堕ち度を示すアクセサリーになっている。


 通常の巫女服は真っ赤な緋袴だが、ヴィーナスゴールドの衣装はその名の通り真鍮のようなくすんだ金色の袴。金袴とでも言えばいいだろうか。

 白衣の裾は金袴の内側にしまわれていて、ウエストの位置には赤い帯が前後でキュッと蝶結びになっている。

 動きやすいように丈は膝丈辺りまでで、太もものあたりにはチャイナ服のような大胆なスリットが入っていてチラチラと見てしまう。だってキュッと引き締まったふとももの健康的な美しさはもう、それだけで芸術だから。

 

 そんな和風テイストな衣装を、金髪緑眼で真珠のような肌をした美々夏が纏ってくれているのが、ピュアホワイトは嬉しくてならなかった。

 頭には前天冠と呼ばれる、ティアラのような飾りを付けてくれているのも素晴らしい。花飾りは付いていないが、赤と金の房紐は両端からしっかり垂れている。


「ああ、かわいい…。美々夏ちゃんほんとに女神様のようです…」


 うっとり手を組むピュアホワイトの口を、獲物をかっさらうトンビのような早業でヴィーナスゴールドの手のひらが塞いだ。


「だ・か・ら、魔法少女状態のときは魔法少女名で呼べって言ってんでしょうが。なんであんたは毎回間違えるの。わざと?わざとなの?」


「ご、ごめんなしゃい、ビーナスちゃん。わざとじゃないです…」


 戦いの場の周辺で落ち合い、ヴィーナスゴールドの可愛さに目が眩んでうっかり本名を呼んでしまい、泣きそうな顔になって謝るのが毎回のやり取りだ。

 二人の出動はこれで三度目となる。

 デコボココンビな二人ではあるが、戦いの相性はいいみたいで順調に勝利を重ねている。


「まあいいわ。今日の戦いで勝てば三連勝だし、どんな手を使ってでも勝つわよ」


「はい!負けられない戦いがそこにある、ですね!」


 三連勝すれば連勝ボーナスが付いて報酬が五割増。勝利の二倍とかけ合わせて、今日の戦いで勝利を飾ればなんと三倍の報酬となる。

 だから二人は俄然やる気になっていた。勝利のためならどんな手段もいとわないほどに。

 魔法少女にだって、生活や事情があるのだ。


 浮遊の魔法でひとっ飛びして決戦の舞台に到着した二人は、その扉を前にしてそれぞれ全く違った表情を浮かべた。

 ピュアホワイトは目を輝かせて、ショウウインドウの向こうのトランペットを見る少年のような顔をしている。

 一方のヴィーナスゴールドは眉を潜め、事件現場に踏み込む直前の刑事のような険しい顔をしている。

 扉の上にかかった、やたらとカラフルな看板には可愛らしい書体でこう書かれていた。


「メイドカフェ、ラブリーポプラ!まさしく決戦の舞台にふさわしいですね!」


「なんでよりにもよってこんなとこなの…」


「どうかしたんですか、ビーナスちゃん?知ってるお店なんですか?」


「なんでもない。さっさと闇のやつらをぶっ倒して、とっとと帰るわよ」


「あっ、待ってビーナスちゃん!そんな無防備に開けたらどんな罠が待っているか…!」


 扉が開いてドアチャイムが鳴るのと同時に、華やかな声の連なりが鼓膜を震わせた。


「おかえりなさいませ!お嬢さま!」


 扉の向こうで待ち構えていたのは無粋な罠ではなく、たおやかに頭を下げるメイドさんたち。

 その頭上で揺れるものを見て、ピュアホワイトは扉の前で固まっているヴィーナスゴールドを押しのけ堂々と入店した。


「ね、猫耳…だと…!?」


 目を見開き驚愕の声を発するピュアホワイト。

 そう、メイドさんたちの頭の上にはもれなく猫耳が揺れていた。カチューシャとかのちゃちなやつじゃなくて、まるで本物の猫のようなもふもふ感のある猫耳が。

 

「お席にご案内いたしますにゃん!」


「ご案内されますにゃん!」


 ニャンっと手首を曲げて猫の手をするメイドさんを真似して、ピュアホワイトはもうすっかりご機嫌である。メイドカフェを、いや、猫耳メイドカフェを全力で楽しんでいるようにしか見えない。


「あんたなに秒で馴染んでんのよ…」


 ヴィーナスゴールドはその後ろに続いてボソリとつぶやいた。


「ふふふ、ビーナスゴールドちゃん。まさかこのピュアホワイトともあろうものが、猫耳メイドさんに浮かれているとお思いですかにゃ?」


「うん。あんたこうゆうの好きそうだし」


「ちっちち、違いますからね。これは相手を油断させるための演技です。楽しんでいると油断させて、虚を突く作戦ですにゃん」


「へえー」


 疑り深い眼差しで見つめられてピュアホワイトはついっと目を逸らした。

 これ以上浮かれてはならないにゃんと自分に言い聞かせて、店内を油断なく見回す。

 来店客は自分たち二人だけで、ほかに店内にいるのは猫耳メイドさんが四人。一見して闇魔法少女らしき姿はない。それとも、この四人のうちの誰かが実は闇魔法少女で、こちらの隙を伺っているのだろうか。

 案内されたのは四人がけの席でヴィーナスゴールドが座ると、ピュアホワイトは当たり前のようにその隣に座った。


 えっ、こういうときって普通、向かい合って座るものじゃないの。なにこの恋人同士みたいな座り方。


 ピシリと顔を凍りつかせるヴィーナスゴールドにピュアホワイトは気がつく様子もなく、ウキウキと肩を揺らしている。距離感が謎の魔法少女、ピュアホワイト。


「お嬢さまたちへのご奉仕は、今日入ったばかりのピッチピチの新人メイドのふたりにお任せするにゃん!もしも粗相があってもはじめてだから許してにゃん!」


「許すにゃん!」


 弾けるような笑顔でにゃんにゃん語を操り猫の手をするピュアホワイトは、相棒からチベットスナギツネのような目で見つめられているのに気がついていない。

 ああ、それにしても新人メイドさん。何でも新人というものはいい。なんせ初々しさがあるから。まだ不慣れで右も左もわからず一生懸命な感じがして、それだけでもう好感度は爆上がりである。

 ワクワクが止まらないピュアホワイトの耳に、聞き覚えのあるアニメ声が飛び込んできた。


「お待たせいたしましたにゃん!おねえさまたち!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ