第10話 レティアとライバル(仮)
最近、視線を感じる…。
入学してから2ヶ月半。
その間に色んな生徒たちとの交流があった。
ゲームの時の主要な登場人物たち。モブだった人たち。
友人キャラだったジンさんとの出会いと、ちょっとした接点。
それと...ゲームの主人公だったヤマトさんとの接触。などなど。
春も終わり、夏に差し掛かろうとしていた季節の出来事。
それは…。
『誰かに見られているような…。気がします。』
短い休み時間。お昼休みの昼食時。移動教室や登下校での廊下で。
何処からか熱い視線。
明らかに他の生徒たちが放つレティアに対しての羨望や憧れではない。敵意と殺意を秘めた視線が私に刺さるのだ。
『ん~。誰でしょう?。』
教室にいる間は感じないので、視線の主が同じクラスの人ではないことは確か。
思えば、ヤマトさんと会話するようになってから始まったような…。
現在、私は廊下を一人で歩いている。
そして、今も背中側、後ろの方から感じる鋭い視線。
『ん?。』
振り返る。
『っ!?。』サッ…。
あ。人影が物陰に隠れた。
もう一度。
『ん?。』
振り返る。
『っ!?!?。』ササッ…。
また隠れた。
あんなバレバレな…。
よしっ!。それなら。
『えいっ!。』
『あっ!?。』
走り出す。
そして階段へと続く角を曲がり急停止。からのUターン。
待ち構えること数秒。
軽い衝撃と同時に視界に飛び込む靡く黒髪。
同時に甘い匂いが鼻を擽り、可愛らしい短い悲鳴が聞こえた。
『きゃうっ!?。』
『おっと。』
聞き覚えのある声。
ぶつかった衝撃の勢いで転びそうになった相手の腰を取って支える。
転ばなくて済んだけど、この状況、端から見たら女の子同士が階段の前で抱き合ってる構図なんだよね…。
『えっと…大丈夫?。』
『あ、あれ…え?。レティ…え?。きゃっ!?。』シュバッ!。
大きくて綺麗な瞳と目が合う。そして、その瞳が周囲をキョロキョロ。
自分の置かれている状況と、私との距離に戸惑いと混乱を繰り返し、やっと現状を理解した女子生徒が私の腕の中から勢い良く脱出し距離を取った。
何故かファイティングポーズの臨戦態勢で。
『あら?。貴女は?。』
声もそうだけど。顔も見覚えがあった。
ゲームの時、恋人だった時もあった相手だもんね。忘れるわけない。
『ユキナさん?。』
クラスは違うけど同級生の名前を言う。
彼女の名前は ツキユラ ユキナ。
ゲームの時のヒロインの一人だった女の子。
今のところ私とは接点がない筈だけど?。
『え?。な、何で私の…名前を?。』
『一応、同じ学年ですから。』
本当はゲームの時にとっても深い関係だったんです。とか、言えないしね。
この国では珍しい綺麗な長い黒髪。
気の強そうなツンとした大きな瞳。小顔、童顔で、あまり背は高くないけど、細くてスッとしたスタイルが大人っぽく見える。
ゲームの時。いや、今もかな。
学園に来る前は、東方の島国で暮らしていて、主人公のヤマトさんの隣の家に住んでいた幼馴染み。
主人公と一緒にこの学園に入学したのだ。
そして、絶賛、ヤマトさんに片想い中。
ゲーム開始時から好感度が滅茶苦茶高かったもんね。
そんな彼女が何で私を尾行していたのか。
『どうして私の後をつけていたのですか?。もしかして、普段から私に対して鋭い視線を送ってきていたのは貴女なのでしょうか?。』
『っ!?。き、気付いてたの?。』
『ええ。まぁ…あれだけいつも見られていては…。』
『くっ…。レ、レティア…さん!。』
『え?。あ、はい?。』
ビシッと指差したポーズを取るユキナさん。
はぁ…ゲームの時と同じで凄く可愛いなぁ。
『ヤ、ヤマト君を賭けて勝負して!。』
『ん?。』
ヤマトさんを賭けて?。
『あ、あの…それはどういうことで?。意味が分からないのですが?。』
『あ、貴女が…ヤマト君がいつも話すような完璧な女性で、しかもヤマト君と仲が良いのは知っているわ!。けど、ヤマト君は私の幼馴染みで大切な人なの!。貴女には渡さないわ!。』
はて?。
この娘さんは何を言っているのでしょうか?。
ユキナさんの話では、ヤマトさんはいつも私の話を彼女にしているようで…その内容はレティアを賞賛しているもの。
仲が良いかは…微妙なところよね。
すれ違った時に挨拶を交わす程度だし、
まぁ、向こうから色々と話を振られたりはするけど他愛のない世間話だからなぁ。
仲が良い…と言って良いのか?。悪くはないけど…普通な友人的な?。
仲が発展するようなイベントは起きていないけど?。
『えっと…別に、勝負をする必要なんてないのでは?。』
『な、何で!?。私じゃ勝ち目が無いって言ってるの!?。もうヤマト君が自分のモノってこと!?。』
『いやいやいや。』
ヤマトさんとは何も無いし。
これからも何も変わらないから。
私はジンさん一筋ですから!。
『良い?。逃げようとしても無駄だから!。必ず私が貴女よりも上だって証明してやるんだから!。』
『上とか下とか決める必要はないですよね?。』
『あるの!。それで私が勝ったらヤマト君を諦めて!。』
どうやら、彼女の中で私はヤマトさんを狙う敵のようです。
はてさて、どうしたものか?。
けど、ヤマトさんは兎も角としてユキナさんとはお友達になりたいなぁ、なんて思ったり。
ゲームの彼女。彼女の素を知っている身としては、このまま放置や無視するのは可哀想だし、なんか放っておけないんだよね。
『良いですよ。では、勝負をしましょうか。』
ヤマトさんはどうでも良いけど。
ユキナさんとの勝負は少し面白そうだし。
『っ!。なんて自信なの…そんなにヤマト君を…。絶対!。負けないし!。』
更に燃え上がるように闘志を燃やすユキナさん。
盛大に勘違いしていらっしゃる。
学園の授業は主に一般的な教科。語学、数学、科学、歴史の主要なモノ。
専門的な選択科目。音楽や家庭科などの副教科。
そして、体育の授業が含まれている魔法の授業がある。実技と学科に分けられ他の授業よりも多くの授業時間が設けられている。
特に魔法の授業は複数の同学年のクラスが合同で行われるので、他のクラスの生徒と交流できる数少ない機会でもある。
『さぁ!。レティアさん!。勝負の時間!。手加減しないでよ!。』
『あ、はい…分かりました。』
運悪く?。今日の魔法の授業は実技。
この二ヶ月で基本を叩き込まれた。
まだまだ未熟な部分はあるけど、殆どの生徒が基本を身体に教え込まれた。
私はもうマスターしてることばかりだったかた楽勝だったけどね。
『よぉし。お前ら並べ~。』
リマ先生の気だるげな掛け声に反応して生徒たちが列を作る。
今日は二つのクラスでの魔法の実技授業。
ヤマトさん、ユキナさん、アルトさん、そして、ジンさんと一緒の授業です。
レティアを普段見慣れない生徒からの視線に、ドキドキする緊張を表面に出さないように必死に耐えます。
『よぉし。基礎を叩き込んだお前たちの現段階での実力を見せて貰うぞ~。』
リマ先生が何やら長い棒を持ってきた。
丸い薄い木の板が棒に取り付けられている。
ああ。成程。ゲームでもあったなぁ。
『まず、最初は的当てだ。弱くても良い。魔力を制御して固めて、この的に当てれば合格だ。まずは、そうだな。レティアやってみろ。』
『はい。』
最初に呼ばれたのは私。
成績が一番良いから先生もお手本にしてくれてるんだろうな。
『行きます。』
指先に魔力を集中。
私の光属性の白い輝きが指先に集まっていく。
それを、小さな塊を作るイメージで固めて、一気に放す。
強すぎず、弱すぎず。あれくらいの的だと本気なら簡単に壊しちゃうけど、魔力を制御してあくまでも魔力の塊を当てるだけにした。
放たれた魔力は的の真ん中に命中。
カッ。という鈍い音の後、魔力が当たった箇所に少しだけ傷が残る。
『ふむ。制御もコントロールも完璧だな。頑張ったな。良い努力だ。今後も励めよ。』
『はい。ありがとう御座います。』
普通の教師や一般生徒ならレティアという天才の才能ということで片付けてしまう場面。
けど、リマ先生はきちんとそれまでの努力を見据えて褒めてくれる。
そういうところが人気の理由なんんだよね。
私も好きな先生だし、ゲームとはいえ元々深い仲になった関係だしね。
『さて、次だ。』
その後、次々に的当ては進行していく。
魔力を放っても的まで届かない者。的を外す者。途中で固定した魔力が解除されて消滅する者。色々だ。
『次はユキナだ。やれ。』
『はい!。』
名前を呼ばれたユキナさんが私に一瞬視線を送る。
うぅ…凄く睨まれたぁ。
『行きます!。』
気合い十分。
ユキナさんは水の属性。指先に小さな水の塊が作られ、勢い良く放たれた。
少しだけ真ん中からズレたけど、一撃で貫通した的に綺麗な穴が空いた。
『全力でやるな。気合いの入りすぎ。もっと落ち着いて魔力を制御しろ。』
『は、はい…すみません…。』
キッ。と再び睨まれる。
もう、逆恨みだよそれぇ…。
『次はジン。お前だ。』
『はい。』
おお!。次はジンだ!。
これは勇姿を目に焼き付けるチャンス!。
『はっ。』
指先から放たれた黒い炎のような塊。
闇の属性が反映された魔力は的に当たると静かに的を溶かすように焼いた。
その様子を見ていたクラスメートたちが何とも言えない表情で崩れ落ちる的を見ていた。
同時にその視線は本人であるジンさんにも向けられている。
けど、そんな中。私はジンの魔力制御の技術に目を輝かせていた。
無駄が一切ない魔力の流れ、そして安定した魔力。固定した魔力を留めておく技術。
頑張って習得した私と同じくらいの実力だ。
きっと私と同じくらい努力をしてきたんだろうなぁ。
つい、見惚れてしまう…。
後ろ姿も、横顔も、姿勢も、全部が好み…。
『格好いい…。』
『……………。』
呟いた言葉は虚空に消えた。
『ああ。文句無しだ。まぁ、お前ならこれくらいは当然か。』
『先生。そのことは…。』
『おっと。すまんな。』
先生からも絶賛。
肩に手を置かれ褒められてる。
てか、何?。今の意味深な会話。気になる。
その後も次々と生徒たちが的当てに挑戦していく。
『最後はヤマトだ。真面目にやれよ。』
『はいはい。』
最後は主人公であるヤマトさん。
彼の登場にユキナさんの熱い視線が向く。
もう惚れちゃってますね…彼女…。
目がハートマークになっちゃってるし…。
『終わったぜ。』
『何?。何もなっていないではないか?。』
『いや、ほれ。』
ヤマトさんが指を鳴らすと的が粉々に砕けた。
その様子に誰もが目を疑う。
あれが無属性の技。全く魔力の流れが見えなかった。
『凄いな…。だが、その不真面目な態度は頂けないな。あとで生徒指導室へ来い。』
『ええ…。マジか?。』
『それより、レティア。』
『え?。あ、はい?。』
急に呼ばれて驚いた。
リマ先生に近づくと木剣を渡される。
『え…っと、これは?。』
『どうも他の連中の集中力が欠いているようでな。少しだけ力を貸せ。おい。ヤマト。反省文を書かされたくなければレティアと模擬戦をやれ。』
『マジで?。』
『マジだ。このクラスで一二を争う実力を持っているお前たち二人。魔法で肉体を強化した状態でどれだけ戦えるか。私に見せてみろ。実際に社会に出れば大なり小なり魔法は使わなければならない。その時に肉体を強化出来る出来ないで物事の進め方が大分変わってくるからな。』
『まぁ、俺は良いけどな。反省文を書かないで良いなら助かるし。』
これは…願ってもないことね。
これまで努力を積み重ねてきた私の今の到達点が物語の主人公であるヤマトさんにどれだけ通用するのかを知れるチャンス。
ゲームが現実になっている世界で主人公補正が働いているのかを知れるかもしれない。
『私も大丈夫です。ヤマトさん。手加減無しでお願いします。』
『まぁ、お前次第だな。レティア。』
まるで集中していないヤマトさんと向かい合う。
その視線は私の身体や顔を観察しているように静かに動いている。
同時に違和感。
彼の視線を感じると身体の内が熱くなるのを感じる。
これは…ずっとなのかしら…。
心拍数も上がった気がするし…。
『はぁ...。行きます。』
『いつでも。』
木剣を構えたまま地面を蹴る。
ゼルドとの戦いで鍛えた足運び、頭を動かさず姿勢を低く滑るように動くことで相手に間合いを誤認させ、相手より早く自分の得意とする間合いに移動する技術。
『はっ!。』
『おっと!?。』
『なっ!。』
完璧なタイミングでの打ち込み。
構えが雑なヤマトさんの反応できない方向からの攻撃を身体を動かすことなく腕の稼働範囲だけで防いだ!?。
何よ…それ…。
『まだです!。』
何度も打ち込む。
上段、中段、下段、フェイントを交え身体を回転させ遠心力を利用して打ち込む。
その全てが防がれてる。
『こっちからも行くぜ。』
『くっ!?。』
ゼルドの打ち込みよりも遅い。そして、荒い打ち込み。
踏み込みも素人のそれだ。身体捌きも、重心の移動も何もかもが雑。
けれど、避けられない。
一撃一撃が重い。見切っている筈なのに、次の攻撃も、その次の攻撃も分かっている、対応できる筈なのに、防ぐだけで精一杯になる。
『負けない。』
『強いな!。レティア!。』
『貴方も!。』
負けない。防げてはいるんだ。
私の全てを防御に回せば攻撃を防げるんだ。
負けはない。けど、勝てない。
何なのコイツ…。これが主人公なの?。
私の長年の努力や培ってきた技術を嘲笑うくらいデタラメな才能。
この人…やっぱり、天才なのか?。
ゲームだと不真面目だけどやる時はやる男って印象だったのだけど…こんなの本物の化物じゃない。
『やっ!。』
『よっ!。』
ムカつく。ムカつく。ムカつく。
こっちは必死に攻めて、守ってを繰り返してるのに、ヤマトさんは余裕が見え隠れしてる。
こうなったら、本当の全力で…。
『ストップ。』
魔力を込めた木剣を振り抜こうとした瞬間。
私の腕を掴んだリマ先生。
反対の手ではヤマトさんの腕を掴んでいる。
『はぁ…はぁ…はぁ…。』
『やりすぎだ。お前たち。』
『え?。』
『周囲を見ろ。』
えっと…。
私とヤマトさんの周囲。
私たちは戦いで出来た大きなクレーターのような地面の窪みの中にいた。
他の生徒たちは随分と遠いところにいるし、草や花は地面は捲れ上がったせいで根っこから抜けている。
戦いに集中し過ぎて周囲が見えてなかったわ。
これ。私とヤマトさんの魔力が衝突したせいで起こったのよね?。
『す、すみません。先生!。皆さん!。』
『いや、謝る必要はないさ。皆の良い刺激になっただろうしな。』
『ははは、久し振りに運動すると楽しいな。』
『……………。』
余裕そうなヤマトさん。
私は肩で息をしているのに、息一つ乱れていない。
ムカつく…、本当にムカつく。
『けど、魔力が足りねぇ…。おっと。』
『え?。』
余裕そうに見えたヤマトさんの身体がふらついた。
足が縺れ、そのまま私の方向に倒れた。
私も魔力を使い切っていてフラフラなのに、その状態で一人の男性を支えられる訳ないじゃない。
『わっと!?。』
『きゃうっ!?。』
私はヤマトさんの体重を支えられずに倒れた。
お尻と背中に衝撃を受けた後、視界が回転する。
『いっ………。』
倒れた私は急いで起き上がろうとした。けど、上に乗るヤマトさんのせいで動けない。
しかも…しかも…しかも!。ヤマトさんの大きな手がわた、わた、私の胸を鷲掴みにしてるうううううぅぅぅぅぅ!?!?!?。
『きゃあああああぁぁぁぁぁ!?!?!?。』
『ごぶっ!?。』
咄嗟にヤマトさんを蹴り上げ胸を隠して座り込む。
触られた。ジンさんじゃない男の人に…。
うぅ…何やってるのよ…。無防備にも程があるじゃない…。もう…最悪…。しかも、アイツ…どさくさに紛れて…揉みやがった…。一瞬だったけど、確かに数回、柔らかさを堪能しやがった!。
『ヤマト君!。大丈夫!。』
『ああ。レティア…良いモノをお持ちで。』
『っ!?。馬鹿っ!。』
恥ずかしげもなく、手をワキワキすんじゃないわよ!。
『こら、ヤマト。レティアさんにちゃんと謝りなよ。レティアさん。立てる?。』
『え?。』
いつの間にか近くに来ていたジンさんが私に手を差し伸べてくれていた。
ジンさんが!?。私に手を!?。
嬉しい気持ちを何とか表情に出さずに、その手を握る。
あっ...とっても大きい。指も長い。それに、鍛えてるのかな。手にマメができてる。
ああ、腕に浮き出た太い血管がセクシィ。
『怪我は無いみたいだね。どうする保健室行くかい?。』
『い、いいえ。大丈夫です。御心配掛けて…すみません。』
『謝らないで。それよりヤマト。レティアにしたこと謝りな。』
『あ...うっ…す、すまん。レティア。大きくて柔らかくて気持ち良かったぞ。』
『っ!?。馬鹿!。』
最低最悪だコイツ!。
もう知らない!。
『先生!。保健室に行ってきます!。』
『はぁ…まぁ、良いだろう。おい、ユキナ。一緒についていってやれ。』
『『え?。』』
リマ先生の提案に私とユキナさんの声が被る。
『な、何故ですか?。』
『男子を同行させる訳にはいかないだろう?。それに、今の一連の流れを見てるとレティアを一人にもさせにくい。頼んだ。』
『………はい。』
マジかぁ。気まずい…。気まず過ぎる…。
そんな流れで私は現在、保健室のベッドの上にいた。
横には椅子に座って私と自分を交互に確認しているユキナさん。
会話はない。
空気は重い。
眠い訳じゃないから夢の中に逃げることも出来ない。
『……………。』もみもみ。もみもみ。
『あのぉ…無言で胸を触るの止めてもらえますか?。』
『これが…ヤマトさんを虜にするおっぱい…柔らかくて…張りがあって…くっ、顔やスタイルだけじゃなくて胸まで完璧かよ…。』
『あ、あのぉ…ちょ…ちょっとくすぐったいのですが…。』
『うっ…。くそっ…。』
自分のと比べてため息つくの止めて…てか、泣いてるし…。
貴女のだって形が良くて綺麗ってゲームのテキストで書いてあったわよ。
それに大きさも普通に平均以上でしょうに…。
『ユキナさん…。』
『はっ!?。ご、ごめん…。つい…。』
ついって何!?。
『えっと…。』
何を話せば良いのかな?。
取り敢えず、無難なところから。
『すみません。付き合ってもらってしまって…。』
『あ、それは気にしなくて良いよ。それより…。』
『な…何ですか?。』
『レティア…さんは…その、料理って出来るの?。出来るんだよね?。』
『はい?。』
そんな唐突もない質問をされ、放課後。
私とユキナさんは私の住む寮のキッチンにいた。
家族以外を招待したのは初めてで緊張する。
ガドウさんたちも物陰から心配そうに見てるから落ち着かないし…。
というか、お父様もお母様も泣いてるんだけど!?。どういうこと!?。
『あっ。そこは泡立てずに静かにかき混ぜた方がいいですよ。そうそう、少し寝かせてゆっくりです。』
『あっ…うん。こう?。』
『ええ。そうです。凄く上手ですね。お菓子作り、慣れてるんですか?。』
『う、うん。ヤマト君に食べて貰いたくて…って、そんなの関係ないじゃない!。良い?。これはお菓子作りの勝負なの!。どうして敵に助言…手解きしてるんですか!?。』
『え?。これ勝負だったのですか?。てっきり、一緒にお菓子作りをしたいのだと?。』
『ちがあああああう!。勝負なの!。』
『そう…なんですか…。あっ、ほっぺにクリームがついてますよ。』
ユキナさんの頬についているクリームを指で取り口に運ぶ。
うん。クリーミィ~で優しい甘さ。しつこくないし、美味しい。
普段はガドウさんやお菓子作りが趣味のメイドさんたちと一緒に作ったりしてたけど、同い年の女の子と一緒に作るなんて凄く新鮮な気分。
『あ、ごめん。あ、ありがとう…。』
『どういたしまして。』
素直さが透けている…。
『うぅ…お菓子作りまで完璧かよぉ…。何なのぉ…この化け物は…。』
『化けっ!?。』
なんかとんでもないことを言われた!?。
『レティアさん!。』
『え!?。あ、はい?。』
『レティアさんは自分でお弁当も作ってるんだよね?。いつも学園のお庭でメイドさんと一緒に食べてるの。あの美味しそうなお弁当も!。』
『え?。まぁ、そうですね。うちの料理人さんと交代で作ってます。なるべく自分のことは自分でやりたいので。』
『ぐっ…なら!。今度お昼を一緒に食べない?。おかずを交換して感想を言い合うの!。』
『え?。あ、それは面白そうですね。』
『嬉しそうにしないでよ!。これは勝負なの!。魔法やお菓子作りじゃ敵わないって分かったから、今度はお弁当で勝負よ!。』
『ん~。』
勝負は兎も角としてユキナさんのお弁当は食べたいなぁ。
ゲームのユキナさんルートでは主人公に毎日作ってくれていたしね。
主人公は美味しい美味しいって食べてたし、一度は味わってみたかったんだよね。
『良いですよ。今度一緒にお昼にしましょう。』
『本当?。やったっ!。』
嬉しそう。
これは純粋にライバル(仮)と競えることに対する喜びなんだろうけど、私と一緒にお弁当を食べることに喜んでくれてるみたいで…嬉しいなぁ。
本人にそんな意思はないだろうけどね。
『ふふ。』
一緒にお菓子を作って、そして、一緒にお弁当…しかもおかずの交換つき。
もう、これってお友達じゃない?。
そう考えると、胸の中に熱い思いが込み上げてくる。
初めての…同性のお友達…。
ユキナさん…。
『約束だよ!。レティアさん!。真剣勝負なんだから!。手加減はしないでね!。』
『ええ。ユキナさんの為に全力で作りますね!。』
『え?。何で私の為?。自分の為でしょ?。』
『いいえ。私はユキナさんに美味しいって言って貰えるように頑張ります。』
『何で?。ん?。はい?。』
混乱するユキナさん。
その姿がゲームの時の…恋人になったルートのスキンで見た表情と被って…凄く、甘やかしたくなる。
『これからも宜しくお願いしますね!。ユキナさん!。』
『え?。あ、はい。よろし…じゃない!。私とレティアさんはヤマト君を奪い合うライバルでしょ!?。どうして握手を求めるのよ!?。』
『ああん!。もう!。可愛すぎます!。』
ゲームの時のユキナさんのまま。
あの可愛らしいヒロインが目の前に。
『こらぁ…何で頭撫でるのさぁ…。』
『良いじゃないですか。ユキナさん可愛いですし。』
『貴女が言うな!。てか、ペットみたいに扱うな!。』
『失礼しました。友人に…いえ、親友ですものね。対等な距離感を心掛けます。』
『何で関係がグレードアップしてるのよ!?。親友じゃなくてライバル!。』
『そうだ!。折角ですから、一緒にお風呂に入りません?。』
『唐突!?。意味分からないんだけど!?。』
『ウチのお風呂、広いですよ?。』
『うっ…。』
『足も伸ばせますよ?。』
『くっ…。』
『しかもメイドさんたちによるマッサージ付きです。』
『ぐっ…。』
『どうします?。帰りは執事に送って貰いますので遅くなっても安心ですよ?。』
『いや、そ、そこまでは…。』
『ちゃんとディナーの用意もしてますよ。ほら、美味しそうな匂いがするでしょ?。』
『……………。お家に…連絡させて。』
ふっ。堕ちた。
『さぁ、一緒にお風呂に行きましょうね。ユキナさん!。』
『ちょっ…引っ張るなぁ~。レティアさんそんなキャラだったっけ!?。』
初めての同性のお友達。
私、滅茶苦茶テンション高いです!。
学園生活がもっと楽しくなるような予感に胸を踊らせていました。
そんな感じで私とユキナさんは知り合い、友達になったのです。
戸惑いながらも楽しそうにしてくれるユキナさんに満足しながら沢山のおもてなしをしたのでした。
その日の夜。
『えへへ~。初めての~。女の子の~。お友達~。くふふ。嬉しいなぁ~。』
ベッドの上でぬいぐるみを抱き抱え転がり、溢れる気持ちを発散しながら…。
『ぐへっ…。』
ベッドから落ちたのでした。
投稿は不定期です。




