7話
↓1話
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室内に籠った熱気とは裏腹に、疲れ果てた僕たちが寝転ぶ床は冷たかった。
各々が肩で息をする中、ドアが開かれてコロコロという音と共にクロエが入ってきた。
「ココニイマシタカ。同期終ワリマシタ」
クロエは室内の様子なんて全く気にならないようだ。
「Neighborカラモ正式ニ、ルカノセクターニ行クヨウ指令ヲ受ケマシタ。早ク準備シテ下サイ」
先を急ぐよう急かすクロエにタマが口を挟む。
「……皆さん…お疲れの…ご様子ですし、一晩…泊まっていっては…如何でしょうか。…勿論部屋は…用意いたします」
ライカは息を整えると静かに立ち上がった。
「クロエ、急ぎたい気持ちはわかるけど、どうせすぐ夜になるし今日は泊まっていこう。こいつの提案に乗るのは癪だけど」
クロエは少し考えると、頷くような動作をした。
「ワカリマシタ。出発ハ明朝ニシマショウ」
そのままくるりと半回転すると
「予備バッテリーも充電しておきましょう」
と呟いて部屋を出た。
「決定ですね。ルカ君は特別ゲストとしておもてなししますよ」
立ち上がったタマがパンパンと手を叩き、倒れている猫獣人たちにいつも通りの芝居がかった話し方で指示を出し始めた。
「さあ、君たち!!今日は散々ルカ君に遊んでもらいましたね?ルカ君がここに住みたいと思うくらいのおもてなしでその恩を返すのです!!」
その後、個人個人に、君は部屋を、君は荷物を、君は食事を、とテキパキ指示を出した。
僕はタマにさっきまでの子供のようにはしゃぐ姿とのギャップで頭がグラグラしそうになった。
でもこういうところがちゃんとしてるからボスやれてるんだと思って思わず笑みがこぼれた。
夕食はとても豪華だった。
並べられた皿には魚、魚、魚と数々の魚が彩られ、僕は初めてのここまで豪華な食事に舌鼓を打った。
でも僕の知ってる魚は一口サイズのものしかなかったから皿が埋まるほどの大きさの魚には驚いた。
タマは
「猫の好物といえば魚!!ですのでいつでも新鮮な魚を食べられるよう生け簀で養殖しております」
と言っていた。
──きっと僕のセクターにはその生け簀というものはなかったんだろう…。
夕食を食べ、お風呂まで用意してもらってサッパリした後、僕たちは寝室に案内された。
3人で一部屋、タマは1人一部屋にしようとしてたけどライカが
「何企んでる変態野郎」
と一蹴した。
──1人は寂しいと思ったから3人一緒でよかった。
部屋に入るとクロエは既に中にいて、臀部から伸びたコードを壁のコンセントに挿して立っていた。
顔のディスプレイは消えているから眠っているようだ。
僕とライカももう寝ようと並べられた布団に入った。
久しぶりのしっかりとした柔らかい布団の感触に包まれながら、今日までの出来事を思い返していると、ライカが話しかけてきた。
「ルカは何かやりたいことってある?」
「えっ!?なんで?」
僕は唐突な質問に驚いた。
「いや、なんかここまで連れてきちゃったのもルカにとっては成り行きだし、ルカには本当にやりたかったことがあったんじゃないかなって」
ほんの少しの間があった。
「それに、地上はまだ全然調査が進んでないし、何が起こるかわからない。ルカが危険を冒す必要はないんじゃないかって」
声色は少し寂しそうで、いつもとは違った印象を感じた。
「ルカが望むならこのセクターで待ってることだってできると思う。タマは変態だけどちゃんとルカの面倒見てくれるだろうし。ルカのセクターの場所もクロエならきっと見つけられるよ」
──正直、魅力的な提案ではあった。美味しいご飯、遊ぶのは楽しいし、ゆっくり湯船に浸かれるし、柔らかい布団で寝られる。
「ありがとう。ライカは僕のことを第一に考えてくれてるんだね」
──それでも僕は助けてくれたライカとクロエと一緒にいたかった。
「でも、僕も行くよ。2人と一緒にいたいんだ」
少し気恥ずかしくなってライカの顔を見られなかった。
「それに僕の知らない世界を色々見てみたいんだ。僕の目で」
ライカの白い腕に包まれる。
「もう寝よっか」
耳元で囁かれた声は普段通りの声色だった。
僕はドキドキして暫く眠れなかった。




