2話
うっすらと、頬に柔らかい感触がする。
「あはは、柔らかーい」
「ライカ、ナンテ事ヲ」
鼻腔をくすぐるいい匂いと引っ張られる頬の感触で、徐々に目が覚める。
「起きた起きた。おはよう」
ライカはそう言って僕の頬から手を離す。
「おはよう…」
返事をした僕を尻目に、クロエが
「純人類ノ頬ハ柔ラカイト記録シマシタ」
と呟いた。
「はい、朝ごはん」
そう言ってライカは僕にカップを差し出した。
中身は殆ど具のない野菜スープだった。
いい匂いの正体はどうやらこれのようだった。
「ごめんね、ほんとは普通に食べさせてあげたいんだけど、クロエが煩いから」
ライカはブロックのようなものを齧りながら
「何日食べてないかわからないから。消化にいい物で慣らしてかないといけないんだって」
と付け足した。
僕もスープを口に運んだ。
温かさが心に沁みる。
当のクロエは開いた頭部から黒い板状の物を太陽に向かって広げていた。
──どうやって仕舞ってたんだろう?
僕たちは朝食を食べ、一服するとルカ救助地点(ライカ命名)へ出発した。
と言っても歩いて10分かからない程で、道中アクシデントもなく他愛もない話をしながらだとすぐにたどり着いた。
すると、クロエが
「丁度ココデス」
と言いながら顔?から光を放つと、地面に倒れた僕の姿が映し出された。
──少し恥ずかしいからやめてほしい。
「足ノ向キカラアチラカラ歩イテ来タト推測シマス」
クロエが言うとライカが
「どれくらい歩いてたの?」
と僕に視線を向ける。
「最後の方は意識朦朧としてたし合ってるかはわからないけど1週間は歩いてたと思う」
僕が答えるとライカは驚いた顔をしながら僕の頭をワシャワシャした。
クロエは倒れた僕の姿を地面から消してぐわんぐわん揺れながら
「私達ガ適切ニ休憩ヲ取リナガラダト5日程デショウ」
と言った。
「5日かぁ、ちゃんと準備しないとね。食料とか」
「近クニ猫獣人ノセクターガアリマス。私モ一度Neighborト同期シナクテハ」
「ネイバー?」
知らない言葉に思わず聞き返す。
「ん?まあ、知らないか。Neighborっていうのは人類を管理してるAIのこと」
「私ハNeighborノ地上調査用ノ端末ナノデ報告モカネテ同期シナクテハナラナイノデス」
僕たちがAIに管理されているだなんて聞いたこともなかった。
「知らなかった」
「ハイ、デスノデ、ルカ様ハ貴重ナノデス」
──クロエの言う事はイマイチわからない。
「まあ、わからないなら考えたって仕方ないんじゃない?」
僕はライカの言葉通り今は気にしないことにした。




