12話
↓1話
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3人での旅は続く。
エキノの一件から2日が経った。
出発前のクロエの予測では、明日には到着できるはずだ。
……いや、はずだった。
カラッとした暑い空気は、身体から水分を奪い、喉の渇きを加速させる。
パンパンに水が入っていた革袋もだいぶ萎んでいる。
水は十分に足りるはずだった。
けれど、それ以上のペースで消費してしまっていた。
到着の予測はあくまでも予測だし、その通りに行くとは限らない。
それに、目的地の場所は大雑把に分かっているだけで、到着してもそこから僕の生まれ育ったセクターへの入り口を探さなくてはいけなかった。
見つかるまで何日かかるか分からない。
──こんな事になるなら目印に旗でも立ててくればよかった。
なんて後悔しても後の祭り、そもそも地上に出た時はまた戻ってくることになるなんて思ってもいなかったのだから、どうしようもないことだ。
そんなこんなで、近くのセクターに寄り道すべきだと話が纏まりかけていた時、頭部からアンテナのような物を出したクロエが、思いもよらない事を言い出した。
「近クニ、オアシスガ、アルカモシレマセン」
僕とライカは頭に疑問符を浮かべる。
「風ニ微カニ水分ガ混ジッテイマス」
クロエはアンテナを頭部に仕舞い、前傾姿勢になると地面から伸びた棒が勢いよく臀部に戻っていく。
「ソレニ、地中ニ水ノ流レガアリマス」
どうやら、話している間に地中を調べていたみたいだった。
クロエの話が進む毎にライカの表情は明るくなり、激しく尻尾を振りながら、僕の手まで一緒にブンブンと上下に揺らしていた。
「ルカ!!オアシスだよオアシス!!水浴びできるし、服も洗いたかったんだ」
テンションの高いライカに申し訳なく思いながら、僕は疑問を口にした。
「オアシスって何?」
ライカはブンブンと振っていた手をピタリと止め、少し考えるように顎に手を当てた。
「ん〜、砂漠にあるデカい水たまり?」
やれやれといったジェスチャーをしたクロエからオアシスの話を聞きながら、僕達はオアシスへと歩を進めた。
ずっとウキウキした空気を醸し出しているライカとは対照的に、普段とは何ら変わりなく冷静沈着に、時折立ち止まってアンテナを出し向きを調整してまた歩き出すクロエに先導されてオアシスを発見したのは翌日の朝だった。
そこにあったのはデッカい水たまりだけではなかった。
「地上に野菜が生えてる!!」
「草デスネ」
僕のテンションも上がっていく。
「デッカいゴボウも生えてる!!」
「木デスネ」
「食べられないの?」
「調ベマス。少々オ待チ下サイ」
ライカがやれやれとジェスチャーしながら一歩先を行く。
尻尾はこれまでで一番激しく動いていた。
「そんなの後でいいから、ルカ、服出して。先に洗濯しちゃうから」
洗濯と言っても濡らして汚れた箇所を軽く擦る簡易的なものだった。
洗った服を、クロエがいつの間にか体から出していた棒を組み立てて作った物干し竿に、手際よく干していく。
終わった頃にはライカは清々しい顔になっていた。
湖はタマのところのレクリエーションルームくらいの大きさがあった。
水に触れると、冷たいけれど冷た過ぎず、ほんのり温いような気もするけどやっぱり冷たい、全身浸かるには勇気がいる、そんな感覚がした。
取り敢えず、岸に座って足だけ浸ける。
ライカはお構いなしに湖に入っていった。
水深はライカの膝ほど、あまり深くはないようだった。
クロエが流水がどうこうとブツブツ言って、念のため煮沸するからと僕にバケツを渡す。
水を汲んでクロエに渡すと、意を決して僕も湖に入った。
全身を水につけては立ち上がってブルブルしたり、走り回ってはしゃぐライカを横目に、僕は湖の奥の方へと進んでいった。
湖は奥に進むほど少しずつ深くなっているようだった。
湖の真ん中あたりまで進むと、微かに何かの音が聞こえてくる。
高く、甘く感じるような声、その声の方に歩みを進めると少しずつハッキリと聞こえるようになっていく。
音の正体は歌だった。
吸い込まれるような綺麗な声、歩みが止められない。
湖の端の岩陰に人影が見えた。
──人がいる?こんなところで一人歌ってる?
人影がこちらを向く、整った顔と目が合った。
人影は数拍ほど驚いたような顔をして、湖に飛び込んだ。
直後、僕は何かに足首を掴まれ湖に引き込まれた。




