表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/32

第9話 変態メイド観察(前)

【過去作・他連載のお知らせ】


▼異世界転生・内政群像劇(完結まで順次公開中)

『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』

https://ncode.syosetu.com/n9512ma/


▼異世界転移・元おじさんの善行旅(不定期連載中)

『お人好し主任の異世界善行旅 〜神様から授かったチート能力で、 魔界・人界・天界のあらゆる種族と目の前で困っている者すべてを救い尽くします』

https://ncode.syosetu.com/n5811mi/

俺は頭を軽く下げ、丁寧に許可を求めた。


「ライルお坊ちゃま。

 従事する誉れをいただきながら大変恐れ入りますが──

 明日は一日、私は何もせず、

 お坊ちゃまにはこれまで通りお過ごしいただいてよろしいでしょうか」


ライルお坊ちゃまが、訝しげに首を傾げる。

(……かわいらしい)


「いいけど、それはどうして?」


「私はライルお坊ちゃまのために最善を尽くしたいと考えております。

 そのためには、まず現状を理解し、

 改善すべき点を洗い出す必要がございます。


 現状を知らずして改善だけを掲げるのは──

 アルベール様とのやり取りの二の舞を演じる恐れがございます」


ライルお坊ちゃまは少し考え、ゆっくりと頷いた。


「わかった。要するに……

 今、問題があるのか、あるならどうすればいいかを知りたいってことだね」


「流石でございます! その通りです!

 流石はライルお坊ちゃま!」


褒められたライルお坊ちゃまは、まんざらでもない表情で頬を緩めた。


「ほめ過ぎだよ……」


(食べていいですか)


「うん、? 何か言った?」


「いえ、何でもございません」


──そして次の日。


俺はステルスモードで、

お坊ちゃまが“気にならない様に”一日を観察した。


「ライルお坊ちゃま。

 私はすぐそばに控えておりますので、

 何かございましたらお呼びくださいませ」


ライルお坊ちゃまはこくりと頷き、いつも通りの朝を迎える。


【06:00】起床・身支度


 ライルお坊ちゃま起床。


 仕着せの服をご自身で着られているが、

 ネクタイやボタンの処理に少し手間取っている。


 部屋の空調を管理する設備は……なし。

 良識派AIが持ち込めなかったのか、

 あるいは数少ない文明の大半が“王族専用”という可能性もあるか。


 (……かわいい)


 

【07:00】礼拝


 城内の厳かな礼拝堂での朝の祈り。


 ライルお坊ちゃまと、父君ケイン様。

 母君リナ様、そしてアルベール様。

 お抱えの騎士数名も列を成し、

 石造りの礼拝堂に静かな声が響く。


 神聖な朝の祈り。


 (……俺はステルスのまま、お坊ちゃまを拝む)


【07:30】朝食


 焼き立ての白パン、または麦粥が選べるようだ。


 温められた朝採れ牛乳、

 あるいは薄い塩エール。


 バターや油脂類、良質な酵母は枯渇しているため、

 白パンは焼き立てでも水分が飛びやすく、

 パサつきが残る。

 小麦本来の甘みも薄い。


 水分補給は、殺菌・発酵された「薄いエール」に

 海水由来の塩を加えたもの。

 牛乳もライルお坊ちゃまの体を気遣って温められているが、

 わずかに臭みが残っている。


 ライルお坊ちゃまの表情は“慣れている”が、

 決して美味しいとは思っていないお顔。


 (……かわいそう)


【08:30】歯磨き


 職人が作った獣毛の歯ブラシ。

 ハッカと白亜(炭酸カルシウム)を混ぜた歯磨き粉。


 ただし、「目に見えない初期の虫歯菌」を

 完全に殺菌するほどの技術はなく、

 ろ過しきれない生水の雑菌も

 お口の環境に悪影響を与えている。


 ライルお坊ちゃまは、不快で面倒そうなお顔。


 (……これはひどい)


【09:00】座学


 家庭教師による詰め込み教育。


 過去の年表、社交と王都の複雑なマナー、

 楽器の基礎、

 そして他国の言語を“機械的に暗記”させる授業。


 内容は体系化されておらず、

 知識の関連性も示されないまま羅列されている。

 効率は……著しく低い。


 ライルお坊ちゃまは、舟をこぎながら眠たそうなお顔。


 (……愛らしい)


【13:00】昼食


 メニューは、朝と同じ焼き立ての白パン、

 熟成させた野生牛のスパイスロースト、

 じっくり灰汁を抜いた根菜の濃厚スープ。


 肉は、持ち込まれたブランド牛が

 島国の野生種と交雑したものらしい。

 生産性は上がったが、その分だけ肉質は硬く、

 獣臭も強い。


 料理長はそれを数日間吊るして熟成させ、

 ナイフが通る柔らかさまで引き出している。

 スパイスやハーブで、獣臭を

 できる限り抑え込む努力もしている。


 スープも、近代的な知識に基づき、

 砂礫や木炭で何度もろ過した水を使用し、

 灰汁の強い品種改良カブや芋を

 何度も茹でこぼして泥臭さを抜いている。


 しかし、どれだけ人間の技術で工夫しても、

 水に含まれる微細な重金属汚染や雑菌は

 完全には取り除けない。


 過剰なスパイスと強い塩分は、

 十二歳のお坊ちゃまの胃腸に

 じわじわと負担をかけていた。


 ライルお坊ちゃまの栄養状態が良くないのは、

 どう考えてもこれが原因だ。


 未発達な胃腸では、硬い肉を十分に消化できず、

 吸収効率も低い。

 食後はいつも、軽い胃もたれや腹痛を

 起こしているはずだ。


 (……最優先で改善が必要)


 俺は午前中だけで、すでにいくつもの改善点を記録していった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。

もし「続きが気になる」「このテンポが好き」と感じていただけましたら、

応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】で

足跡を残していっていただけると励みになります。

次の話への大きな原動力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ