第29話 変態メイド説教
【過去作・他連載のお知らせ】
▼異世界転生・内政群像劇(完結まで順次公開中)
『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』
https://ncode.syosetu.com/n9512ma/
▼異世界転移・元おじさんの善行旅(不定期連載中)
『お人好し主任の異世界善行旅 〜神様から授かったチート能力で、 魔界・人界・天界のあらゆる種族と目の前で困っている者すべてを救い尽くします』
https://ncode.syosetu.com/n5811mi/
俺はライルお坊ちゃまをそっと起こす。
「ごちそうさまでした、ライルお坊ちゃま」
(おはようございます、ライルお坊ちゃま)
おっと、間違えた。
つい寝顔を堪能し過ぎて感想が零れてしまった。
「あぁ、うん。おはよう、イリス」
俺はお坊ちゃまの身の回りを整えながら確認する。
「明日から領内の巡行・見回りでしたね」
「うん。騎士長から、主に荘園の領内巡回って聞いているよ。
それで……なんだけど、騎士長がイリスの同行は認めないって言っているんだよね」
「左様でございますか。
……確か騎士長は私の事をご存知でしたね?」
「うん。父上が各所属の長や一部には伝えているね。
だから料理長のダンやメイド長のリシルと同じで、
イリスがAIロボのメイドだって事を知っているよ」
うーん……騎士長の考えていそうな事。
予測はつくが、一応確認しておくか。
「ライルお坊ちゃま。
この後、騎士長とお話するお時間をいただけますでしょうか」
俺が騎士長のいる宿舎に向かうと、
作戦会議室に通された。
そこには、武骨で頑固そうな爺さんがいた。
「お前が、ライルお坊ちゃまにお仕えしている
AIロボか」
「はい。イリスと申します」
「儂はグラブトだ。
ケイン様からこの騎士団を任されている。
それで、何の用だ?
お前の同伴なら許すつもりはないぞ」
「……理由をお伺いしても?」
「わかるだろう。
当然のことだ」
「いえ、それではわかりません」
(この爺さん、感覚派で
普段から言葉にしないタイプだな)
グラブトが面倒くさそうに頭を掻いた。
「坊ちゃまの為にならん」
「お前の事は聞いている。
その気になれば、あのクリフでも止められんとな」
「ケイン様もクリフもお側にいない。
つまり、誰も頼れるものがいない状態で成し遂げてこそ、
ライルお坊ちゃまの訓練になるのだ」
「お前がついていては物見遊山にしかならん。
それに巡行の間、ご領主の息子が
甲斐甲斐しく世話などされていたら士気が下がる」
「なるほど、仰っている事は以下の通りですね。
ライルお坊ちゃまの自立と成功体験を積ませる事。
配下との相互理解と親密度──つまり絆を強くする目的」
「う、うむ。そうだ。
判ったならさっさと仕事に戻れ」
「一定の理解は出来ますが、承服しかねる部分もございます。
とはいえ、現状仕方ない部分もあるのでしょうが……」
グラブトの目が鋭くなる。
「何だと……?
文句があるなら言ってみろ」
「そうですね。
ライルお坊ちゃまの自立と成功体験──
こちらについては賛同する部分が大きいです。
各荘園の貴族と顔を繋いでおくことも重要でしょう」
「ですが、部隊の士気と相互理解については……」
「ケイン様やライルお坊ちゃまは領主であり支配者です。
そして、あなた方は騎士です」
「それがどうした?」
「つまり、役割が違います。
騎士としての誇りがあるのであれば、
領主が安心して優雅に過ごす姿を見て、
“俺達のおかげで快適に過ごしていただけている”
と思うべきです」
「そして、グラブト様は
ライルお坊ちゃまに私との同行は認めないとおっしゃいました。
これでは主従が逆転しております。
正しい姿であれば、今申し上げた理由を
ライルお坊ちゃまに説明した上で、
“私との同行を認めたくはない”と提言し、
判断はお任せするべきです。
ライルお坊ちゃまの自立を促すと言いながら、
グラブト様はライルお坊ちゃまを
子供として扱っていらっしゃいます」
グラブトの顔が真っ赤に染まる。
「貴様! よくも……!
よくもそこまで、はっきりと言いよったな!」
そして豪快に大声で笑った。
「ガハハ! ロボット風情にそこまではっきり言われるとはな。
なるほど、お主の言う通りかもしれん。
だがな、それでお主の同行を認める事にはならんぞ」
「承知しました。
では、姿を隠して着いていく事をお許しください」
「何だと……?
儂らの護衛が信用できぬと申すか?!」
「いいえ。それとこれとは別問題です。
こう言えば伝わるでしょうか。
グラブト様はライルお坊ちゃまの事を想い、
成長の為に私を遠ざけると仰いましたね?」
「……」
「それと同じ様に、私はライルお坊ちゃまの“身”だけを案じているのです」
俺は凍てつくような冷たい声色で述べた。
「もしライルお坊ちゃまの御身に何かあった場合。
私はこの地と、その原因となった物に対して──
一切の容赦をする気がございません」
グラブトが椅子に座りなおし、天井を見上げる。
「儂からの条件は、表立ってお前が付いてきて
ライルお坊ちゃまの世話をしない事。
お前の条件は、隠れてついてくる事。
……ここらが落とし所か。
ふう……わかった、それでよい。
だが、くれぐれもライルお坊ちゃまに
同伴している事がばれぬようにな」
「はい。お任せください。
ご理解いただき、ありがとうございます」
そう言って、俺は宿舎を後にし、
ライルお坊ちゃまの所に戻った。
「えっと、イリス……どうなったの?」
「グラブト様のご判断に従う事にいたしました。
ですので、私は明日からの巡行に**着いては参りません**」
「そ、そう……わかった。
それじゃ、イリスには留守番をお願いするね」
「はい。お任せください。
ライルお坊ちゃまなら立派にお務めを果たせると、
このイリス、信じております」
「うん、任せて」
翌日。
俺は騎馬小隊や側近に囲まれて出立する
ライルお坊ちゃまを見送り、
しばらく離れた後──
ステルスモードで空から監視するのであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。
もし「続きが気になる」「このテンポが好き」と感じていただけましたら、
応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】、感想など
足跡を残していっていただけると励みになります。
次の話への大きな原動力になります。




