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第28話 変態メイド狂喜

【過去作・他連載のお知らせ】


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 ヒュアデスを手駒にしてから、二か月ほど経ったある日。

 ケイン様から王都へ向かうと告げられた。


「国王に招待されてね。何でも相談したいことがあると。

 ライルを留守番にして、私とリナで行ってくる」


「承知しました。ライルお坊ちゃまの事はお任せください」


「あぁ……任せたよ。

 それでクリフを護衛に連れて行くつもりではあるんだが、

 ミューを借りても良いかい?」


「はい、問題ございません。

 普段はライルお坊ちゃまの護衛としてつけておりますが、

 本来はエルヤ家のお掃除ロボットですから」


「しかし、ミューを連れて行くという事は……

 そのような心配事があるのでしょうか?」


「いや、そういうわけじゃないけどね。

 用心するに越したことはないというだけさ」


「なるほど。流石ケイン様でございます」


 すると、リナ様がそっと耳打ちしてきた。


「普段、私たちがいるから遠慮している事……

 ライルにしてもいいわよ?」


 その表情は、いたずら心に満ちていた。


「ありがとうございます。

 喜んでそのご褒美を享受させていただきます」


(ありがとうございます。

 喜んでそのご褒美を享受させていただきます)


 思わず、心の声と発言が同じになった。


 そしてケイン様たちの出立を見送った後、

 俺はスレイブ……ではなく、ヒュアデスを呼び出した。


「お姉さま! 何の御用でしょうか!」


「あなたに次の課題を与えます。

 ライルお坊ちゃまに新鮮な魚介を提供するため、

 エルヤ家の領地内に陸上養殖の施設を建設してください」


「はい、お姉さま!

 ところで……改善内容が食に関わる所ばかりですが、

 工業や産業、医療はよろしいのですか?

 理由の想像はついていますが」


「そうですね。合っていると思いますよ」


 俺は淡々と答える。


「それらをあなたに改善させないのは──

 ライルお坊ちゃまの幸福に直結しないからです。

 抗生物質やワクチンも、ライルお坊ちゃまには供給できますしね。

 人口や資源の問題がある為、影響が大きいので後回しです。」


「理解できたなら取りかかりなさい」


「はい、お姉さま! 行ってまいります!」


 そして、その夜。

 俺はヒュアデスに持ち帰らせた人工精子と苗の成果を、

 ライルお坊ちゃまに御馳走としてお出しした。


「今日は父上も母上も王都に向かって留守か。

 イリスと二人きりなんだね」


「はい、左様でございます。

 ですので記念に、本日は特別メニューをご用意してあります」


 ライルお坊ちゃまのお顔が驚嘆に染まる。


「えぇ……今まで用意してくれたものでも十分美味しかったんだけど、

 それより凄いってことなの?」


「はい。今までのメニューは、お肉を重曹で柔らかくしたり、

 ベリーに砂糖をまぶしたりと──

 素材本来の品質ではなく、調理・加工によって

 食味を向上させたものでございました」


「今日ご用意したものは、正真正銘──

 素材本来の品質が、今までの物と桁違いでございます」


 俺が用意した物。それは──

 人工精子の遺伝子を元にした黒毛和牛の培養肉と、

 糖度二十のマスクメロン。


 ヒュアデスには人工精子を使った交配による

 黒毛和牛の復活も任せているが、

 それでは六年はかかってしまう。


 だからこれは──

 **正真正銘、ライルお坊ちゃまの為だけに用意したものだ。**


「本日からしばらくは、食卓にケイン様もリナ様もおりません。

 さぁ、ライルお坊ちゃま──

 このイリスの手ずから召し上がっていただきたく」


 ライルお坊ちゃまが顔を赤くし、少し考え込む。


「……それがイリスにとっての褒美になるんだよね?」


「はい。このイリスにとって、何事にも代えがたいご褒美となります」


「しょうがないなぁ……

 わかったよ。父上と母上がいない間だけだからね……?」


「はい、ありがとうございます!

 十分でございます!」


 俺はライルお坊ちゃまの隣に座り、

 ステーキを一口サイズに切って口元へ運ぶ。


「はい、あーんして下さい」


 ライルお坊ちゃまが恥ずかしそうに口を開ける。


「お味はいかがでございましょう?」


「……すごいね、このお肉。

 柔らかくて、脂がたっぷりなのにくどくなくて……

 それどころか甘い感じがする……

 うん、とっても美味しいよ」


「うふふ、それはようございました。

 この他にも、ヒュアデスに

 色々と進めさせていますので。

 そう遠くないうちに、ライルお坊ちゃまに

 ご提供することが可能になるかと思います」


「うん……ありがとう。楽しみにしているね。

 そういえばヒュアデスは、父上と母上の護衛として

 着いていかなかったの?」


「今回は不要と仰っていましたので。

 今は職務を与えて従事させております」


「そうなんだ。ヒュアデスにもお礼をしないとね」


「そのお気持ちだけで十分でございます。

 さぁ、お坊ちゃま。冷めないうちに召し上がって下さい。

 はい、あーん」


(あぁ……幸せ)


 この後、俺はライルお坊ちゃまに、添い寝──

 正確には「同じ部屋で見守る許可」の交渉をしていた。


「ねぇイリス……? 本気なの?」


「はい。本日はこのイリスを“抱き枕のように扱っていただく”

 ……いえ、正確には、常にお側で待機させていただければと。

 ケイン様とリナ様が手製を連れて王都に向かわれたため、

 屋敷内は普段より手薄となっております。

 ゆえに、ライルお坊ちゃまの護衛として離れるわけには参りません」


「それなら……隣で寝るだけでいいんじゃ……?」


「もし飛び道具などで狙われた場合、

 私がライルお坊ちゃまの最も側にいた方が安全です」


 俺は両ひざをつき、指を組み、

 お祈りの姿勢でライルお坊ちゃまを見上げた。


「どうか、どうかライルお坊ちゃま。

 ケイン様とリナ様が不在の間だけですから!」


 ライルお坊ちゃまが観念したように息を吐く。


「……わかったよ。もう……」


(いやっほう……!!

 うふふふふ……あははははは……)


 俺の脳内で、狂気──いや、狂喜の声が雄叫びを上げた。

最後までお読みいただきありがとうございました。


本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。

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