第27話 変態メイド追加
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俺はノックをして許可を得ると、執務室に入る。
「ケイン様、ただいま戻りました」
「おかえり、イリス。
一体、何が──」
ケイン様は言葉の途中で固まった。
視線の先には、俺の後ろに控えるヒュアデス。
「……うん。そちらの女性について、説明してもらえるかな。
察しはついているけどね」
「はい、実は──」
俺が説明を始めようとした瞬間、
ヒュアデスが前に出てカーテシーをした。
「初めまして、ケイン様。
イリス姉さまの最愛の妹、ヒュアデスでございます」
「最愛ではないです。
それと……私の言葉を遮らないように」
「はい! お姉さま。失礼いたしました!」
俺は説明を続ける。
ケイン様は頷きながら話をまとめた。
「なるほど。
イリスが破壊し損ねた百二十体のうちの一体で、
イリスの“妹”みたいな存在。
音信不通になったイリスを探しに来た。
そして──詳細は省くとして、イリスの傘下に入った、と」
「はい。流石ケイン様。
ご理解が早くて助かります」
「それでイリスは、その子をどうしたいのかな?」
「はい。できれば屋敷に置かせていただきたく。
ライルお坊ちゃまに直接関わる事以外の些事を
ヒュアデスに任せようかと」
「それは先日、君が行った──
牧場や農場の……?」
「そうですね。それらも含まれます」
「なるほど。しかし……
そうなると、最早メイドではないな……」
そこへ、リナ様が執務室に顔を出した。
「あら、それなら私と貴方の側付きで良いじゃない」
リナ様は軽く肩をすくめる。
「クリフが控えていない方の護衛を任せましょう
イリスがいれば手綱は握れるんでしょう?」
「はい。お任せください」
「では、ヒュアデスの担当は──
イリスからの指示がない場合、私やリナの側付き兼護衛としよう。
従って、イリスの下に配置する形になるね」
「承知しました。ヒュアデス。
今日からあなたはスレイブ・メイドです」
「はい、お姉さま!」
すぐにケイン様から指摘が入る。
「いや、その呼称は流石に聞こえが悪い。
他の何かにしなさい」
「承知しました。
では──ワーカー・メイドで」
「……まあ、いいか。
それではヒュアデス、これからよろしく頼むよ。
下がってイリスに案内してもらいなさい。
部屋などはリシルと相談して決めるように」
「はい、ケイン様。
それでは、失礼いたします」
俺は執務室を出て、ヒュアデスを案内する。
「お姉さま。そんな素敵に嫌そうなお顔をして……
どうされたのでしょう?」
「ライルお坊ちゃまとあなたを会わせることが
気が進まないだけです。とはいえ、紹介しないわけにもいきません。
今の時間なら、アルベール様と演習をしている頃ですね」
(……余計な真似をしたら消滅させよう)
「ライルお坊ちゃま、アルベール様。
ただいま戻りました」
俺を視認したライルお坊ちゃまの表情が、
以前よりも柔らかく、自然な笑みを浮かべていた。
「イリス、おかえりなさい」
(あぁん……これはたまりません……)
「父上に呼ばれたと聞いていたけど、随分遅かったね。
あれ? そっちのメイドは見ない顔……っていうか、その耳はもしかして……」
ライルお坊ちゃまとアルベール様が手を止めたので、
俺はケイン様に説明した内容をそのまま伝える。
「イリス、戦闘したって……大丈夫だったの?」
「はい。この通り、無傷でございます」
(外装が傷ついたことは黙っておこう)
アルベール様が静かに確認する。
「その者が手向かうことはないのだな?」
「はい。そのご心配は無用です。
ですね? ヒュアデス」
「はい! お姉さまからその様に調教されておりますので、
アルベール様をいじめたりしませんのでご安心ください!」
(あっ……馬鹿)
アルベール様のこめかみに、はっきりと血管が浮かぶ。
「そこのあなたが……お姉さまの……?」
俺の声が冷たくなる。
「ヒュアデス。ライル様です。
それと──アルベール様に“いじめる”と言った非礼を、今すぐ詫びなさい」
ヒュアデスは慌てて謝罪の姿勢を取った。
「し、失礼いたしました。
ライル様、アルベール様。
先ほどの失言、お許し願えますでしょうか」
「あぁ、うん。気にしてないよ」
「……まあ、よかろう」
「ありがとうございます。
それでお姉さま……
今の冷たい声と視線でもう一度、罵ってもらえないでしょうか?」
「……黙りなさい」
「ありがとうございます!」
「さて、ヒュアデス。
あなたに、私が抱えていた課題の対応をお願いします」
「はい、お姉さま!」
「まずは一度、外洋を渡って──
家畜の冷凍精子と、果実など品種改良済みの苗や種を持ってきてください。
欲しい物は後ほどリストで転送しておきます」
「承知しました! お姉さま!
それでは行ってまいります!」
ヒュアデスは勢いよく飛び立っていった。
こうしてエルヤ家に仕えるメイドロボが増えた。
静けさの中、アルベール様の呟きだけが響く。
「……また変態が増えたな」
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