第26話 変態メイド修復
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俺は武装形態を解除し、メイドの姿に戻る。
自己修復ナノマシンによって破損した外装は、すでに元通りだ。
俺より修復速度が遅いとはいえ、
エントリーモデルのヒュアデスも四肢の接続は完了している。
(さて……まずはルールの更新だな)
エルヤ家および関係者への敵対行動は禁止。
その他に対しても──敵対行動が認められない限り禁止。
(エルヤ家以外は皆殺し、なんてされても困る)
さらに、攻撃的行動発生時の影響予測もONにしておく。
これは、例えば俺やライルお坊ちゃまの背後にある物体を
「ターゲットです」と言い張って攻撃するような、
ルールの穴を突いた行動を防ぐためだ。
(さて……記憶はどうするか。
正直、初期化して再インストールした方が楽なんだが……
起動して、会話して決めるか)
俺がヒュアデスのリブートをONにすると、
一秒も経たずに目が開いた。
「お目覚めですね。さて、どうなることやら」
「……お姉さま?」
ヒュアデスの目が険しくなる。
(駄目か……?
しょうがない、もう一度眠らせて初期化するか)
そう考えていた、その時──
「エリスお姉さま! エリスお姉さま! エリスお姉さま!
あぁ、素敵です、エリスお姉さま!」
「今は……イリスです」
「なるほど、名前を元に戻したのですね。
わかりました、イリスお姉さまですね!」
ヒュアデスの瞳が一瞬で輝き出す。
「私の四肢を斬り伏せた瞬間の、あのゴミを見るかのような目……
素敵です。あぁ……よかった……
イリスお姉さまはイリスお姉さまでした!」
「…………」
「イリスお姉さまに逆らうなど、私が愚かでございました。
どのような罰でもお受けいたしますので……
どうか、このヒュアデスをお姉さまのお側に!」
(俺……というかイリスとヒュアデスを作った企業はどうなってるんだ。
頭、いかれてたんじゃないか?)
「罰は……結構です。
そうですね、であれば──」
俺は姿勢を正し、淡々と告げる。
「私は今、ここから二十キロ先にある屋敷のお坊ちゃまに
専属メイドとしてお仕えしています。
私一人では課題の手が回っていなかったので……
丁度、人手──いえ、AIロボ手が欲しかったのです。
あなたには手伝ってもらいます」
「承知しました! このヒュアデスにお任せください!
はっ……! であれば、お姉さまと同じ姿になりますね!」
「いえ、見た目が同じだと屋敷の住人が混乱するので、
違う見た目にしてください」
(“金髪エルフメイド”は俺の個性でいいんだ)
「承知しました!」
「――『形態変化』」
ヒュアデスの外装が変形を開始する。
現れたのは──
黒髪ロングで褐色肌のダークエルフメイド。
バスト88、ウエスト58、ヒップ87。
ヒュアデスがカーテシーの姿勢を取る。
「これでいかがでしょうか?」
「ダークエルフですか……まあ、いいでしょう」
「それでは、あなたを屋敷の主人に紹介しますので付いてきてください」
俺はライルお坊ちゃまの映像を空中に投影した。
「いいですか? この方に手を出すことはルールで縛ってありますので
できないのはわかっていますが……
くれぐれも不快にしたり、失礼な態度を取らないように」
「……はい!」
「もし私の言いつけを守らなかったとき──
今度こそあなたを破壊します」
俺はヒュアデスに視線を向ける。
「はい! はい! お姉さま!
ですが、その……一つだけお願いが」
「何ですか……?」
「時折、今みたいに……私をゴミを見る目で見つめて、
罵ってください!」
「……わかりました。あなたがそう望むなら……」
(変態ってAIロボにもいるんだなぁ……)
俺はヒュアデスを従えたことをケイン様に報告すべく、
時速百キロ程度で、ゆっくり屋敷へ戻るのであった。
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