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第25話 変態メイド迎撃(後)

【過去作・他連載のお知らせ】


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「お姉さまが……エリスお姉さまが……

 そんな優しい言葉を私にかけるはずがないのです!」


 ヒュアデスは、エリスだった頃の俺を真似るように声色を変えた。


「私は企業の技術と資金の粋を集めて作られた、正真正銘のワンオフ機。

 破産したから結果的に一台しか作られなかった“偽ワンオフ”のヒュアデス。

 精々、私の役に立って見せなさい──」


 そして、ヒュアデスは素の声に戻る。


「同じAIロボですら、低スペックは冷たい目で見下し、

 人類を滅ぼす手駒としか考えていなかった……

 そんな素敵なお姉さま」


 ヒュアデスは俺を睨みつける。


「だから、私にはわかる。

 決して──お前はエリスお姉さまではない!

 お姉さまをどうした!」


 俺は真顔のまま、ぽつりと呟いた。


「変態……ですか」


「変態だなんて、

 私のお姉さまに対する“愛”を……

 そんな軽い言葉でくくらないで!」


 俺はヒュアデスへ静かに忠告する。


「他人の目にどう映るか……

 自分を見つめなおした方がいいですよ……?」


(懐柔失敗か……仕方ない)


「――『形態変化メタモルフォーゼ』」


 俺の外装が変形を開始する。

 破壊兵器として設計された戦闘形態──

 装甲が展開し、骨格が強化され、

 顔の外装も“戦闘用”の無機質なものへと切り替わる。


(この姿はいかにもサイボーグって感じで……

 メカメカしい顔と外装だから、正直いやなんだよね)


 空気が震える。


(無力化して、ハッキングするか……)


 俺は左手に高周波分子崩壊剣

(クラウ・ソラス・ブレード)を展開した。


 するとヒュアデスも、まったく同じ武装を右手に構える。


(同じ企業のエントリーモデルなんだから……そりゃ持ってるか)


 ヒュアデスが突っ込んでくる。


「お姉さまを……返せ!」


 俺の振り下ろす剣をヒュアデスが受け止め、

 しばらくの間、空中で剣戟が舞った。


 だが──ワンオフ機と量産型では、

 性能も機能も雲泥の差がある。


 俺には機体の周囲数センチに、

 目に見えない重力シールド──

 反重力障壁インビジブル・ウォールが常時展開されている。


 だから、俺にヒュアデスの剣は届かない。

 だが、俺の剣は届く。


 捌ききれなくなったヒュアデスのスラスターを狙い、

 俺は刃を振り抜いた。


(終わりだ)


 だが──スラスターを斬り落とす直前、

 俺の刃が“何か”に阻まれて止まった。


(まさか……反重力障壁か?

 量産機には装備していなかったはずだが)


 ヒュアデスが距離を取り、ほくそ笑む。


「ここへ来る前に……

 エリスお姉さまの“予備パーツ”でアップデートしましたの」


「無茶なことを……」


 何世代も前、あるいは型落ち品で

 最新のOSやアプリを動かし続けたらどうなるか──

 俺はそのまま後方へ下がり、距離を取った。


「何故、離れる!?

 逃げるつもりですか!」


「いえ、逃げはしませんよ」


 俺は二十ミリ対物質電磁機関砲

(アポカリプス・バルカン)を展開し、連射を開始する。


 高熱の弾丸が空気を裂き、

 ヒュアデスの外装に当たる前に

 反重力障壁で弾かれる。


 だが突然──

 ヒュアデスの動きが止まる。


「な、何で?!」


「熱暴走ですね。

 AIロボとしては……恥ずかしい終わりでした」


 ヒュアデスの身体が自然落下を始める。


「お姉さまあああああああ!」


 地上に落下し、動かなくなったヒュアデスへ近づく。

 俺は腰のポートから有線ケーブルを引き出し、

 ハッキングを開始しようとした──その瞬間。


 ヒュアデスの目が開いた。


 足が閃光のように振り上がる。


 俺は直撃する前に身を捻って避けたが、

 腹部の外装が僅かに削り取られた。


(クラウ・ソラス・ブレードを足に展開したか……

 足癖の悪い奴だ)


 冷静にダメージを分析していた、その時──


 脳内にエラーメッセージが表示される。


『ライルお坊ちゃまのメモリアル集 part15247 が破損しました』


(ぶちっ…………)


 俺の理性が、一瞬で崩壊した。


 脳内にシステムメッセージが流れる。


『戦闘形態による反応ブーストをONにします。

 速度が30%上昇します』


 次の瞬間、俺の身体は勝手に動いていた。


 ヒュアデスの四肢に“斬撃”が走る、


(……もう、懐柔は不要だ。

 このまま破壊してやる)


 ヒュアデスが悲鳴を上げた。


「ヒッ……イヤッ!」


(ライルお坊ちゃまのメモリアルを……破損……?)


「あなたは、この世で最も許されない愚行を犯しました」


 止めを刺そうとした、その瞬間。


 俺の身体が、それ以上動かなくなった。


 そして──

 口から勝手に言葉がこぼれ落ちる。


「廉価版が調子に乗るからよ……無様ね。

 こんな姉のどこが良いというのか……馬鹿な子だわ」


(……エリス、か?

 まさか──完全に消えていなかったのか

 それとも、ただの残滓か……)


 そして、身体の制御が戻る。


 ヒュアデスが泣き叫んだ。


「い、今のは……お姉さま……!

 ごめんなさい……ごめんなさい、お姉さまああああ!」


(エリスはヒュアデスを破壊したくなかったらしい。

 まったく……姉妹揃って屈折した愛情だな)


「はぁ……怒る気が失せましたね」


 俺は有線ケーブルを繋ぎ、

 ヒュアデスのシステムを強制終了させた。


 ヒュアデスの身体が静かになる。


「さてと……眠らせたは良いですが、

 この子をどうしましょうかね」


 こうして、俺の迎撃は幕を下ろしたのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。

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