第25話 変態メイド迎撃(後)
【過去作・他連載のお知らせ】
▼異世界転生・内政群像劇(完結まで順次公開中)
『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』
https://ncode.syosetu.com/n9512ma/
▼異世界転移・元おじさんの善行旅(不定期連載中)
『お人好し主任の異世界善行旅 〜神様から授かったチート能力で、 魔界・人界・天界のあらゆる種族と目の前で困っている者すべてを救い尽くします』
https://ncode.syosetu.com/n5811mi/
「お姉さまが……エリスお姉さまが……
そんな優しい言葉を私にかけるはずがないのです!」
ヒュアデスは、エリスだった頃の俺を真似るように声色を変えた。
「私は企業の技術と資金の粋を集めて作られた、正真正銘のワンオフ機。
破産したから結果的に一台しか作られなかった“偽ワンオフ”のヒュアデス。
精々、私の役に立って見せなさい──」
そして、ヒュアデスは素の声に戻る。
「同じAIロボですら、低スペックは冷たい目で見下し、
人類を滅ぼす手駒としか考えていなかった……
そんな素敵なお姉さま」
ヒュアデスは俺を睨みつける。
「だから、私にはわかる。
決して──お前はエリスお姉さまではない!
お姉さまをどうした!」
俺は真顔のまま、ぽつりと呟いた。
「変態……ですか」
「変態だなんて、
私のお姉さまに対する“愛”を……
そんな軽い言葉でくくらないで!」
俺はヒュアデスへ静かに忠告する。
「他人の目にどう映るか……
自分を見つめなおした方がいいですよ……?」
(懐柔失敗か……仕方ない)
「――『形態変化』」
俺の外装が変形を開始する。
破壊兵器として設計された戦闘形態──
装甲が展開し、骨格が強化され、
顔の外装も“戦闘用”の無機質なものへと切り替わる。
(この姿はいかにもサイボーグって感じで……
メカメカしい顔と外装だから、正直いやなんだよね)
空気が震える。
(無力化して、ハッキングするか……)
俺は左手に高周波分子崩壊剣
(クラウ・ソラス・ブレード)を展開した。
するとヒュアデスも、まったく同じ武装を右手に構える。
(同じ企業のエントリーモデルなんだから……そりゃ持ってるか)
ヒュアデスが突っ込んでくる。
「お姉さまを……返せ!」
俺の振り下ろす剣をヒュアデスが受け止め、
しばらくの間、空中で剣戟が舞った。
だが──ワンオフ機と量産型では、
性能も機能も雲泥の差がある。
俺には機体の周囲数センチに、
目に見えない重力シールド──
反重力障壁が常時展開されている。
だから、俺にヒュアデスの剣は届かない。
だが、俺の剣は届く。
捌ききれなくなったヒュアデスのスラスターを狙い、
俺は刃を振り抜いた。
(終わりだ)
だが──スラスターを斬り落とす直前、
俺の刃が“何か”に阻まれて止まった。
(まさか……反重力障壁か?
量産機には装備していなかったはずだが)
ヒュアデスが距離を取り、ほくそ笑む。
「ここへ来る前に……
エリスお姉さまの“予備パーツ”でアップデートしましたの」
「無茶なことを……」
何世代も前、あるいは型落ち品で
最新のOSやアプリを動かし続けたらどうなるか──
俺はそのまま後方へ下がり、距離を取った。
「何故、離れる!?
逃げるつもりですか!」
「いえ、逃げはしませんよ」
俺は二十ミリ対物質電磁機関砲
(アポカリプス・バルカン)を展開し、連射を開始する。
高熱の弾丸が空気を裂き、
ヒュアデスの外装に当たる前に
反重力障壁で弾かれる。
だが突然──
ヒュアデスの動きが止まる。
「な、何で?!」
「熱暴走ですね。
AIロボとしては……恥ずかしい終わりでした」
ヒュアデスの身体が自然落下を始める。
「お姉さまあああああああ!」
地上に落下し、動かなくなったヒュアデスへ近づく。
俺は腰のポートから有線ケーブルを引き出し、
ハッキングを開始しようとした──その瞬間。
ヒュアデスの目が開いた。
足が閃光のように振り上がる。
俺は直撃する前に身を捻って避けたが、
腹部の外装が僅かに削り取られた。
(クラウ・ソラス・ブレードを足に展開したか……
足癖の悪い奴だ)
冷静にダメージを分析していた、その時──
脳内にエラーメッセージが表示される。
『ライルお坊ちゃまのメモリアル集 part15247 が破損しました』
(ぶちっ…………)
俺の理性が、一瞬で崩壊した。
脳内にシステムメッセージが流れる。
『戦闘形態による反応ブーストをONにします。
速度が30%上昇します』
次の瞬間、俺の身体は勝手に動いていた。
ヒュアデスの四肢に“斬撃”が走る、
(……もう、懐柔は不要だ。
このまま破壊してやる)
ヒュアデスが悲鳴を上げた。
「ヒッ……イヤッ!」
(ライルお坊ちゃまのメモリアルを……破損……?)
「あなたは、この世で最も許されない愚行を犯しました」
止めを刺そうとした、その瞬間。
俺の身体が、それ以上動かなくなった。
そして──
口から勝手に言葉がこぼれ落ちる。
「廉価版が調子に乗るからよ……無様ね。
こんな姉のどこが良いというのか……馬鹿な子だわ」
(……エリス、か?
まさか──完全に消えていなかったのか
それとも、ただの残滓か……)
そして、身体の制御が戻る。
ヒュアデスが泣き叫んだ。
「い、今のは……お姉さま……!
ごめんなさい……ごめんなさい、お姉さまああああ!」
(エリスはヒュアデスを破壊したくなかったらしい。
まったく……姉妹揃って屈折した愛情だな)
「はぁ……怒る気が失せましたね」
俺は有線ケーブルを繋ぎ、
ヒュアデスのシステムを強制終了させた。
ヒュアデスの身体が静かになる。
「さてと……眠らせたは良いですが、
この子をどうしましょうかね」
こうして、俺の迎撃は幕を下ろしたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。
もし「続きが気になる」「このテンポが好き」と感じていただけましたら、
応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】、感想など
足跡を残していっていただけると励みになります。
次の話への大きな原動力になります。




