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第23話 変態メイド迎撃(前)

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 ケイン様に呼ばれて執務室へ入ると、

 ハウススチュワード(筆頭執事)と

 ハウスキーパー(メイド長)の二人が揃っていた。


 俺がそちらへ顔を向けると、

 メイド長が一歩前に出て口を開く。


「あなたがライルお坊ちゃまの専属となったイリスさんですね?

 私はエルヤ家でハウスキーパーを務める

 ルイセ・ナ・リシルです。リシルと呼ぶように」


「承知しました。リシル様」


 俺は丁寧に一礼し、ケイン様へ視線を向ける。


「それでケイン様、本日お呼びしたのは

 リシル様との顔合わせのためでしょうか?」


「それもあるが……」


 ケイン様は苦笑を浮かべ、肩をすくめた。


「リシルから、私と君に“確認しておきたいこと”があると言われてね。

 まとめて話した方が早いだろうと思って呼んだのだよ」


 リシル様は静かに頷き、

 その瞳には“職務としての厳しさ”が宿っていた。


(……なるほど)


 俺は姿勢を正し、次に来る言葉を待った。


「それでは旦那様、お伺いしておきたいのですが」


 リシル様が一歩前に出る。

 その声音は落ち着いているが、メイド長としての責任感が滲んでいた。


「エルヤ家には現在、ハウスキーパーである私を筆頭に、

 レディーズ・メイド、パーラーメイド、ハウスメイド、

 キッチンメイド、ランドリーメイドなど……

 合わせて総勢二十五名ほどが従事しております」


「あぁ、知っている。

 とはいえ管理の委細は君に任せているがね」


「はい、ありがとうございます。

 つまり──メイドだけで二十五名の“労働先”となっているのです」


 ケイン様が小さく息をつく。


「ああ、なるほど。

 リシルの言いたいことが分かったよ。

 結論から言うと、その心配は無用だ」


(なるほど、俺の存在が

 他のメイドの仕事を奪わないかという心配か)


 リシル様が俺へ視線を向ける。


「イリスさん。

 あなたは……AIロボで、不眠不休で働けると聞いています。

 そんな存在が本気で働いたら、

 ハウスメイド以下の下級メイドは仕事がなくなる、と。

 メイド達から不安の声が上がっています。

 そうするつもりが旦那様とイリスさんにあるのか、

 確認しておきたかったのです」


 ケイン様がリシル様へ向き直る。


「イリスは例外だよ。

 彼女を理由に体制に変更を行うつもりはない。

 イリスもその方が良いだろう?」


「はい。

 ライルお坊ちゃまのお側にいる条件ということであれば、

 今挙げた方々の業務を遂行することも致し方ありませんが……」


 俺は静かに言葉を続けた。


「私は可能な限り、

 ライルお坊ちゃまのお側に控えさせていただきたいので、

 そうしてくださる方が助かります」


 リシル様はわずかに目を細め、

 俺の返答を吟味するように頷いた。


 ケイン様も同じように頷き、続ける。


「それでリシルの聞きたかった話は終わりかな?」


「いえ、もう一つございます」


 リシル様が静かに言葉を重ねた。


「聞けばイリスさんは給金を頂いていないとか。

 メイドとして働いている以上、

 私の管理外とはいえ、看過できません」


 ケイン様が手で額を押さえる。


「イリスの給金か……すっかり失念していたよ。

 とはいえ、本人が必要ないと言いそうだが……」


「そうですね。

 今まで使用した食材などは屋敷からの持ち出しか、

 私が採取してきたものです。

 お気持ちはありがたいですが、頂いても使い道はございません」


「だが、ただ働きというのも示しがつかない。

 悪いが貰ってくれ。

 それで給金の額だが──」


 そこでアルベール様が口を挟む。


「イリスの役割は、ライルお坊ちゃまの

 家庭教師兼、護衛兼、部屋付き女中となっています。

 家庭教師は今のところサポートの趣きが強いですが……

 まぁ、リシルの同額程度が妥当でしょうな」


「そうなるか。わかった。

 そのように手配してくれ」


「承知しました。ご配慮ありがとうござ──」


(屋敷に近づく、飛行物体あり。速度──およそ時速二百キロ)


 俺は言葉を止め、即座に状況を切り替えた。


「すみません、失礼いたします」


 ケイン様が目を丸くする。


「イリス、どうかしたかい?」


「説明は後ほどいたします」


 俺は三人に深く一礼し、執務室を飛び出した。

 廊下を駆け抜け、窓を開け放つと──

 飛行物体の方向へ、そのまま空へ飛び出した。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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