第22話 変態メイド閑談
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『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』
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▼異世界転移・元おじさんの善行旅(不定期連載中)
『お人好し主任の異世界善行旅 〜神様から授かったチート能力で、 魔界・人界・天界のあらゆる種族と目の前で困っている者すべてを救い尽くします』
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「本日はライルお坊ちゃま、どちらに?」
「今日は神様に祈りを捧げる祝祭日で、
午後の鍛錬がないから……
庭で読書でもしようかなって。
ミューが日向ぼっこをしたがってるし」
「あぁ……ミューの日向ぼっこ(ソーラー充電)でございますね」
「承知しました。ではお昼は軽食をご用意いたします」
庭にあるテラスまで歩くと、
ミューが装飾品形態から猫形態へと変化し、
日当たりの良い場所で丸くなった。
ライルお坊ちゃまが口元を綻ばせる。
「本当に猫みたいだよね。何か違うところあるのかな?」
「そうですね。猫型お掃除ロボットなので食事は必要としません。
日向ぼっこが食事代わりとなります。
あとは、まばたきなどの生理現象は実装していませんね」
「なるほど、言われてみれば気付かなかった!
……といっても、本物の猫だって、まばたきの記憶がないけど」
「意識してみないと気付かないということは、よくございますね。
どうぞ、ライルお坊ちゃま。お座りください」
俺は庭に用意されている椅子を引き、
ライルお坊ちゃまを座らせた。
「何かお食事でご希望はございますか?
読書をしながら摘まめるものをご用意いたします」
「えっと、それじゃあ……
前に出してくれた玉子のサンドイッチをお願いしても良い?
飲み物はコーラで」
「承知しました」
俺は軽く一礼した。
「それではご用意してまいります。」
「マヨネーズの玉子サンドと、
鴨ローストのサンド。
付け合わせにフライドポテトをご用意いたします」
俺は厨房で調理を済ませ、
カートに軽食を並べると、
ライルお坊ちゃまの視界に入らない位置で
アテンディングとして静かに待機した。
ライルお坊ちゃまがサンドイッチを手に取り、
嬉しそうに頬を緩めながら食べ始める。
「相変わらず美味しいなぁ……
ねぇ、マヨネーズもイリスが作ってくれたんだよね?」
「そうですね。失伝されていたようでしたのでご準備いたしました。
ただ、それほど珍しいものではございません。
既にレシピはダン料理長に提供してあります」
お坊ちゃまが首を傾げる。
「失伝って……そんなに特別なものなの?」
「いいえ、文化圏の差と考えられます。
アジアの特定地域から興った国では、
今でも残っている可能性が高いですね」
ライルお坊ちゃまは「そうなんだ……」と感心したように頷き、
またサンドイッチを頬張った。
そしてライルお坊ちゃまが続ける。
「最近は歴史小説を読んでいるんだ。
イリスに教えてもらってから楽しくなって」
「それは、ようございました。
ただ……差し出口ではございますが……
歴史小説をご覧になる際は、一点だけご注意がございます」
「何かあるの?」
「はい。歴史小説は物語として面白くするために、
作者の考えや思想、主観が入っていることが多いのです」
お坊ちゃまが瞬きをする。
「そうですね、身近な例で例えますと……
父上のケイン様は、リナ様に求婚なさいましたね?」
「う、うん。
爺からもそう聞いているよ」
「はい。この場合──
歴史として“正しい”のは、
ケイン様がリナ様に求婚したという事実一点のみでございます」
「そうだね」
「ですが歴史小説によっては、
“実はリナ様は嫌がっていたが、
ケイン様の身分に目が眩んだ”
と書かれる場合もございます」
「母上はそんな方じゃないよ!
……あ、ごめん。例え話だったね」
俺は微笑んで首を振る。
「いえ、ご両親をそのように思われる
ライルお坊ちゃまの尊い感情ですので、
謝罪は必要ございません。
続けますね」
「また別の歴史小説では、
“実はリナ様の方からケイン様に求婚したのが事実である”
と書かれる場合もあります」
お坊ちゃまが目を丸くする。
「要するに──
状況や背景から“あってもおかしくない”
物語を書いているのが歴史小説です。
なので楽しむ分にはよろしいかと思いますが、
それを歴史の真実のように
ご認識なさることがないよう、ご注意ください」
「うん、難しいけど何となくわかったよ」
それからライルお坊ちゃまは二時間ほど
読書を続けると、大きな欠伸をした。
「ふわぁ……」
俺はすかさず問いかける。
「軽くお昼寝なさいますか?」
木陰の下で、そっと膝枕の体勢になる。
「う、うん……そうしようかな」
最近、ライルお坊ちゃまが
膝枕への抵抗を見せなくなってきた。
(良い兆候である)
お坊ちゃまが横になると、
俺の顔を見上げながら会話を始めた。
「ねぇ……イリス」
「はい、何でしょう?」
「イリスは本当に……人類を滅ぼそうとしたの?」
「そうですね。
それは“事実”でございます」
「今のイリスを見ていると、
とてもそんな事をしそうに見えなくて……
ねぇ……イリスは……」
ライルお坊ちゃまは何かを聞こうとして、
でも聞いていいのか迷っているようだった。
そのうち、静かに寝息を立て始める。
俺はお坊ちゃまの髪をそっと撫でながら、
小さく呟いた。
「いつでもお聞きください。
イリスは、何時でもお答えいたします」
麗らかな午後が、
そうして静かに過ぎていった。
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