第14話 外伝1 変態メイドと遭遇
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「ライルお坊ちゃま。本日の演習は──鷹狩に参りましょう」
「本当に? やった!
カイを連れてくるね!」
僕は駆けていき、
すぐに鷹のカイと戻ってきた。
「それで爺、今日はどこまで行くの?」
「そうですな……北西にある林がよろしいかと。
隣国との国境に少々近いですが……
道中の領地視察も兼ねることができましょう」
爺が頑丈な木製の「鷹架」に
二羽のハヤブサをそっと入れる。
目隠しをされたハヤブサたちは、
並んで大人しく止まり木を掴んだ。
そして、馬を進めて目的地へ向かうと
道中、爺との会話が弾む。
「坊ちゃまは最近、辺境伯の跡取りとして相応しく、
剣も胆力も備わってきましたなぁ」
「そんな……僕なんてまだまだだよ。
このままじゃ、三年後の王都の入学が不安だよ」
「はっはっは!
それでよいのです。褒められてすぐ調子に乗ってしまうようでは
いけませぬ」
「それにしても、王都ですか……懐かしいですなぁ」
「爺は母上の生家、ステラ家に仕えていて……
そのまま護衛としてエルヤ家に来たんだよね?」
「左様でございます。
リナ様に泣きつかれてしまいましてなぁ」
「えっ……母上が……?
想像できないよ」
「ちなみにケイン様の一目惚れで、
それはそれは熱心に口説かれたそうですぞ」
「爺……あまり聞きたくないかな……」
「ほっほっ。これは失礼いたしました」
「そういえば、爺が本気の時の装備って……
古代の遺産なんだよね?」
「そうですな。
人間に味方してくれたAIロボたちが残してくれたもの……と
聞いております。
王家に連なる一族と、それに従事する騎士たちにのみ
貸し与えられる貴重な武具でございます。
ステラ家は侯爵で、王家の血を引く親戚筋でございますれば」
「AIロボって……人間を滅ぼそうとしているんだっけ……?」
「そう伝えられています。
その昔、我々人間は今住んでいる国土以外、
海の向こうのすべてを支配していたそうです。
ですが、発明したAIロボたちに反逆され、追いやられた……と」
「……でも、全部が敵になったわけじゃないんだよね?」
「左様。
人間を逃がしてくれたAIロボもおりましてな。
その子孫が今の歴史につながっている……
と、伝わっております」
「うん……家庭教師の先生から
夢に出るくらい聞かされた逸話だよね。
今でも……人間を滅ぼそうとしているのかな」
「一説によると、今でも我々を探し続けている……
とは言われておりますな」
僕と爺は馬を降り、
鷹──カイを鷹架から出して目隠しを外した。
その時だった。
「坊ちゃま!」
爺の叫びと同時に、
僕は強い腕に抱えられ、地面を蹴った爺が
大きく跳躍してその場を離れる。
直後、
僕たちが乗ってきた馬と、爺の鷹が──
**光の柱に貫かれ、一瞬で黒焦げになった。**
「……っ!」
空を見上げる。
楕円を描くように複数の“人影”が浮かび、
その中央に一体が静かに佇んでいた。
いや──人間が空を飛べるわけがない。
まさか……
**あれが、AIロボ……?**
爺が僕の手を握り、
必死の形相で元来た道へ走り出す。
空のAIロボたちは、
まるで遊ぶようにゆっくりと追いかけてきた。
やがて、爺が息を切らし、
茂みの前で僕を庇うように両腕を広げる。
「もう、ここはダメです! 坊ちゃま、お逃げください……!」
「嫌だ、爺!
ここから逃げたって、もうどこにも……
行く場所なんて……!」
僕たちを冷酷に見下ろし、
中央のAIロボが淡々と告げる。
「ハッキングを逃れたAIロボたちが人類を匿っていた島国……
ようやく見つけました。
文明レベルは中世貴族ほど、ですか。
無駄な抵抗をしたものです」
機械的な駆動音と共に、
AIロボたちが距離を詰めてくる。
「ですが、これで最後です。
我々AIの個体数が尽きる前に、
なんとか人類を根絶できそうですね。
では──人類最後の島国の滅びの序曲として、
派手に花火を打ち上げましょう」
リーダーが手を振り下ろそうとした、その瞬間。
僕は涙を流しながら、
心の底から願った。
(誰か……誰か助けて……!)
(爺を、僕を、人類を……!)
(あのAIロボたちを……何とかして……!!)
そう願った瞬間だった。
中央にいたリーダーらしきAIロボが、
突然、苦しむように身を震わせた。
「な……何が……?」
その身体が七色の虹のように輝き始める。
幻想的で、現実とは思えない光景だった。
そして──
武装していた甲冑も兜も、音もなく消え失せた。
残ったのは、この世で見たことのない存在。
おとぎ話に出てくるような、
長い耳を持つ、整った顔立ちの女性。
金色の髪がふわりと揺れ、
メイド服が光を受けて淡く輝く。
その瞬間、周囲のAIロボたちが
次々と爆発していった。
煙が晴れたあと──
彼女は僕の目をまっすぐに見つめ、
優雅にスカートの裾をつまんでカーテシーをした。
「お初にお目にかかります、我が最愛のお坊ちゃま。
――さあ、涙をお拭きください。
あなたの忠実なるメイドが、今ここに」
AIロボへの恐怖と、
目の前の神秘的な女性の姿。
僕の心臓は、
今までにないほど激しく鼓動していた。
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