表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/17

第11話 変態メイド改善(前)

【過去作・他連載のお知らせ】


▼異世界転生・内政群像劇(完結まで順次公開中)

『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』

https://ncode.syosetu.com/n9512ma/


▼和風ダークファンタジー(不定期連載中)

『六装の守護者 ―不銹不折―破邪の鋼刃――』

https://ncode.syosetu.com/n3023me/

 ライルお坊ちゃまが就寝される前、

 俺は頭を軽く下げ、丁寧に許可を求めた。


「お坊ちゃま。

 明日から、ライルお坊ちゃまに

 “より快適な生活”をお過ごしいただくため、

 このイリス、全力で尽くさせていただきます。


 その過程で、お坊ちゃまが

 疑問に思われることがあるかもしれません。

 その際は、どうかいつでもお尋ねください。


 もし……どうしてもお嫌であれば、

 すぐに控えさせていただきます」


お坊ちゃまが頷く。


「わかった、よろしくね、イリス」


「はい。このイリスにお任せください」


【06:00】起床・身支度


 部屋の温度を22〜23度、湿度を50〜60%に最適化する。

 お坊ちゃまの脳波をリアルタイムでバイオスキャンし、

 レム睡眠の終わり──自然な覚醒へ向かう

 わずかな数秒を見極めて、優しく声をかける。


「お坊ちゃま、朝でございます」


「おはよう、イリス。

 なんだか……部屋の中がすごく気持ちいい……」


「温度、湿度、換気をすべて最適化しております。

 (病原菌やウイルス、媒介する蚊なども処理済みだ)」


「さぁ、お坊ちゃま。着付けのお時間です。

 このイリスが整えさせていただきます」


「いいよ! 自分でできるよ!」


「いえ、お坊ちゃまはまだ不慣れで、

 手順も少し間違っておられました。

 今のうちに正しい形を覚えていただいた方が、

 王都の学院でも恥をかかずに済みますよ」


 そう言って、にっこり微笑む。


「……わかった。よろしくお願いするよ……」


 俺はお坊ちゃまの前に膝をつき、

 丁寧に姿勢を整えてから、

 ネクタイの結びとボタンを

 ゆっくりと、手を添えて一緒に整える。


 お坊ちゃまのお顔が、ほんのり赤い。


(……かわいすぎる)


【07:00】礼拝


 俺は少し離れて控え、

 石造りの礼拝堂がライルお坊ちゃまの

 身体を冷やさないよう、室内を適温に保つ。


 快適な温度が眠気を誘ったのか、

 母君リナ様が小さく欠伸をされた。

 お坊ちゃまは、それを必死に堪えている。


 俺がライルお坊ちゃまを拝んでいたら、

 横から小声で突っ込まれた。


「イリス、拝むのは僕じゃないよ……」


 「……失礼いたしました。」


【07:30】朝食


「本日は、ハニートースト・ミルク・ベリーをご用意いたしました」


 職人が焼いた熱々の白パンのデンプン構造(βデンプン)に、

 指先から超音波と精密熱量を送り込み、

 水分を保ったまま最も柔らかい状態(αデンプン)へ強制変換する。


 体内タンクの純水をナノスチームにして浴びせ、

 芯までふかふかの、もちもち食感へ最適化。

 さらに、お屋敷の牛乳から超高速撹拌で精製した

 「自家製バター」を、成長期のカロリーを超えない

 絶妙な量だけ塗り、風味を劇的に向上させる。


 仕上げに、山で採取した天然ミツバチの蜂蜜を

 薄く、均一に。


 温かい朝採れ牛乳は、栄養素を壊さない温度で

 “低温殺菌加工”を施し、

 センサーで獣臭の原因となる揮発性脂肪酸だけを

 ピンポイントで抽出・除去。

 甘く、まろやかで、臭みゼロの牛乳へ変換した。


 お坊ちゃまのビタミン不足を補うため、

 夜明け前に山から音速で採取してきた

 新鮮な野生ベリー類を添える。

 そこに、甜菜や葛の根から体内で精製した

 「高純度粉砂糖」を雪のように振りかけ、

 上品な甘みに仕立てた野イチゴとベリーの粉砂糖がけ。


 ライルお坊ちゃまがトーストを一口齧ると、

 ぱっと目が輝いた。


「……何これ……

 ふわふわで、甘くて……すごく美味しい!」


 牛乳も、いつもは飲んだ後に

 鼻に獣臭が残るはずなのに──


「全然、臭くない……!

 すっきりしてて、甘い……!」


 さらに、ほのかに甘いベリーが

 最後に口の中をさっぱりと洗い流してくれる。


「イリス、すごいよ!

 とっても美味しい!」


「お誉めにあずかり、光栄に存じます」


 お坊ちゃまが満面の笑みを向けてくださる。


(その笑顔に……俺の母性が疼く。

 あぁ……うずうずする……)


 それを見ていたケイン様とリナ様が、

 ごくりと喉を鳴らされた。


「イリス、私たちの分は……ないのかい?」


 俺は一度だけ確認するように問い返す。


「ご準備は可能でございますが……

 よろしいのでしょうか?」


 (料理長の面子をつぶすことになりますが、

 という意味を込めて)


 ベリー以外のパンや牛乳は、

 もともと厨房で用意されたものを

 俺が調理・変質させた“アシェット・デセール”のようなものだ。


 許可さえ下りれば、

 今すぐにでも同じ品質のものをご提供できる。


「そうねぇ……

 イリス、それなら私には同じものを。

 主人はそのままでいいわ」


「なっ……!」


 ケイン様は何か言いたげに口を開きかけたが、

 結局そのまま閉じられた。


「承知しました」


 俺は静かに返事をし、

 リナ様のテーブルへ同じ朝食を用意する。


「んー!! 何これ……甘い! 美味しい!」


 リナ様が目を丸くして声を上げられた。


「ねぇイリス、私には明日からライルと同じものを用意してね?

 料理長には主人から伝えておくから」


「はい、承りました」

 

 (……ご愁傷様です、ケイン様)

 

【08:30】歯磨き


「さぁ、お坊ちゃま。こちらへ」


 俺は正座し、膝をぽんぽんと叩いて

 膝枕に仰向けになるよう促す。


「いいよ、イリス! 流石に恥ずかしいよ!」


「お坊ちゃま……虫歯を甘く見てはいけませんよ」


 空中に、虫歯の末期状態の映像を投影する。

 歯の黒ずみ、崩壊、口臭──

 視覚的に理解しやすいよう、淡々と。


「このように、口臭や歯並びにも影響が出ます。

 隅々まで確認するためには、

 この体勢が最も適しているのです」


 お坊ちゃまが口元を押さえる。


「うぅ……」


「……わかったよ……」


 ライルお坊ちゃまの心音が、

 先日の恐慌状態ほどではないが、

 明らかに早く脈打っている。


(ふふふ……)


「はい、“あーん”」


 慈愛の微笑みで覗き込みながら、

 スキャン開始。


 右手の人差し指を電動歯ブラシのように振動させ、

 歯面を丁寧にクリーニング。

 左手の指先はデンタルフロスの細さに変形し、

 歯間の汚れを漏れなく除去する。


 歯並び、噛み合わせ、プラークの付着状況をチェック。

 初期虫歯(脱灰)を発見し、

 虫歯菌に侵された部分だけを

 一瞬で蒸発させるナノレーザーを極秘照射。


 さらに、唾液中のカルシウム成分を呼び寄せる

 特殊波長で“超高速再石灰化”を促進し、

 高濃度フッ素を塗布して歯質を強化する。


「はい、ライルお坊ちゃま。終わりましたよ」


「あ、うん……ありがとう」


 俺は見逃さなかった。

 お坊ちゃまが膝枕から頭を上げるとき、

 ほんの一瞬だけ──

 名残惜しそうに、動きが止まったことを。


(うふふふふ……ふふふふふ……)


「よろしければ、就寝される時も致しますが?」


「い、いいよ! 歯磨きありがとう!」


 そう言って、お坊ちゃまは勢いよく飛び起きた。


 俺の“改善”は、まだまだ続くのだ。

最後までお読みいただきありがとうございました。


本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。

もし「続きが気になる」「このテンポが好き」と感じていただけましたら、

応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】で

足跡を残していっていただけると励みになります。

次の話への大きな原動力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ