第3章:権力の終焉
アップデートからわずか1時間。
現代社会の象徴であった「警察」や「軍」は、急速にその機能を喪失していた。銃火器が効かないわけではない。だが、システムが配布した「スキル」という暴力が、既存の物理法則をあまりに容易く凌駕してしまったのだ。
渋谷駅前。1台のパトカーが、炎を上げる怪物の前で無力に立ち尽くしていた。
「撃て! 撃ち続けろ!」
警官たちの叫び。だが、怪物の皮膚は「物理耐性:極大」のバグ・装甲。
そこへ、零が悠然と歩み寄る。
「どけ、公務員。そいつの『耐性』、俺のコレクションにちょうどいい」
「何を言っている! 一般人は下がれ!」
警官が零の肩を掴もうとした瞬間、その手が透き通るように空を切った。
いや、違う。零が、その瞬間に警官の「接触権限」を剥奪したのだ。
「触るなと言ったはずだ。……『渇望』、起動」
零が怪物の脳天に手を置く。
一瞬。
巨大な怪物が、風に舞う塵のように消滅した。
後に残ったのは、零の手に握られた、鈍く光る「黒い球体」。怪物の持つ『物理耐性』という概念そのもの。
「な、なんだ……今のは……」
「お前らの時代は終わったんだ。これからは、欲しがった奴が、欲しがった分だけ強くなる。……ああ、その拳銃も置いていけ。もう、ただの鉄屑だ」
零が指を鳴らす。
次の瞬間、警官たちの腰にある拳銃が、まるで最初から存在しなかったかのように消えた。
零の「持ち物リスト(インベントリ)」に、新たなコレクションが加わっただけのこと。




