第16章:観測という名の加護
東京の半分が「黒い霧」に呑み込まれたあの日から、世界のルールは加速度的に崩壊を始めていた。
だが、最も不可解な現象は、零のステータスボードに現れていた。
::: SYSTEM ANALYSIS :::
[ CURRENT OBSERVERS : 1 ]
[ DATA SYNC RATE : 22.4% -> 25.1% (INCREASING) ]
[ EFFECT : CALCULATION SPEED x 2.5 ]
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零は、新宿・東京都庁の頂上に腰掛け、眼下に広がる「静止した都市」を眺めていた。
霧に触れたものは全て、零の所有物としてカタログ化され、その動きを止めている。
「……凪。不思議だと思わないか」
隣に立つ凪は、自身の『解析』スキルが捉える「異常」に震えていた。
「零……あなたの背後に、巨大な『視線』を感じるわ。システムのものじゃない。もっと、こう……この世界の『外側』から、私たちを指でなぞっているような、熱い視線が」
「ああ。俺にも視える。読まれている(・・・・・)んだよ、俺たちの生きた証がな」
零が虚空を掴む。
その瞬間、彼の指先が「文字」の羅列に触れ、火花を散らした。
観測者が物語を読み進めるほどに、零の存在確率は高まり、システムによる削除命令を上書きしていく。
「もっと見ろ。お前たちが俺を『認識』すればするほど、俺はこの偽物の世界で、誰よりも『リアル』になれる」




