38.『辺境伯』と『今年最後の日』①
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今回は三千前半です
◆2026年4月23日◆
加筆しました。詳しくは『後書き』に。
辺境伯邸から使用人が居なくなった。正確には年末年始の休暇だ。
年末の一日と、年始の三日は家族で過ごすのだそう。
だけど辺境は雪が多いから、遠くから仕事に来ている使用人は、雪が溶ける春先までお休み。
そうじゃない近場の使用人たちで、年の瀬一月と新年の三ヵ月を回す。
雪が多く、人の往来が減る時期だから出来ることだ。
今年最後の日。朝ご飯を食べ、片付けが終わったら、ギリギリまで仕事をしていた老執事、料理長、庭師さん、メイドさん(四人)、護衛さん、料理人さん――九人が揃って「良いお年を」と言って帰って行った。
静まりかえる辺境伯邸には、私と辺境伯の二人「ウニャ〜ゥ」――訂正。二人と一匹になった。
別に幼獣のこと、忘れてたわけじゃないよ??
けど――何気に辺境伯領に来てから、寝る時以外で二人になるのは初めてな気がする。
皆を見送った後、中庭へ向かう。
数日前に完成した“かまくら”兼すべり台。“かまくら”の中には、小さな雪ダルマを作って置いている。
玄関先で作ってたけど、雪が降ると埋もれるから“かまくら”に移動した。
今日も、にぎにぎ、ころころ……雪玉、合 体 !
今日のは、うさ耳付きの雪ダルさんだ。いい感じじゃな〜い?
雪ダルマを設置後、辺境伯の手を借りてすべり台に登る。
私の横を『従魔』のサーベルタイガーの幼獣がスルスル〜と、いとも容易く登っていく。さすが……!
雪山の頂上から辺りを見渡してから、幼獣を抱っこして滑る。
「きゃー!」と声が出ちゃうのはご愛嬌。楽しいんだから……仕方がないよね? 幼獣が迷惑そうにしてるけど。
着地して、ふと、邸を見る。
静かすぎる辺境伯邸――――不思議な感じ……。
今までずっと人の気配がしてたのに、それが無いだけで、こんなに静かだなんて――冬だから、かな?
「どうした?」
ジッと、邸を見上げる私に辺境伯が声をかけてきた。
「んー……なんか、さみしー……かなぁ、って」
「寂しい?」
「……ずっと、ひとがたくさんいたから……しずかなのが、なんか……さみしー、かなぁ? って」
「あぁ……お前の傍には常にヴァンやセバスが居たからな」
『ヴァン』というのは護衛さんの名前だ。
黒い髪に紅い目をしていて、王宮で近衛騎士をしていそうな美丈夫。
剣の腕も立つそうだが、私が辺境伯領にくる数ヵ月前に怪我をしたんだって。それで『魔の森』近くの砦から街に戻り、リハビリをしていた――のだが、辺境伯に腕を見込まれ、私の護衛としてご指名されちゃったのだ。
……リハビリ中と知った時は、(リハビリの邪魔にならないかなぁ……)って、ちょっと心配だったんだけど、ちゃんとシフト制で安心した。
感傷に浸る私に抱っこされていた幼獣が『おれもいる! 元気だせ!』と慰めるように「ニャウ、ニャ!」と鳴きながら前足で私の頬をポムポム触る。
「ふふ……そーだね〜。タイガーもいるから、さみしくないね――ありがとー」
「ニャフ!」
「そろそろ昼メシにするか」
「お、ひるぅ〜!」
幼獣に頬擦りしていると、辺境伯に頭を撫でられ、促されるように邸へ向かう。
*
*
昼食は、料理長が作り置きしてくれたジャガイモいっぱいのポトフに、照り焼き風の鶏くしとパン。
お鍋を暖炉にかけて温め、鶏くしを火で炙る。
パンは半分に切って……切った方を暖炉の火で焦げない程度に軽く焼く。
調理場から持ってきた食器を並べ、焼けたパンにバターを塗る。底側のパンの上に、大きめに千切ったレタスを乗せて……っと。
「セバスには内緒な」
そう言って、悪巧みをするように笑った辺境伯が肉を串から取ってレタスの上に置き、マヨネーズを一匙乗せる。
パンで蓋をして出来上がり〜。ハンバーガーみたいだ。
「ないしょ!」
ニシシと笑って――いただきます! ガブリ!
鶏くしの甘じょっぱい味と、ちょっとピリ辛なマヨネーズがおいしい! うまうま。
老執事が居たら「変な食べ方を教えないでください、坊ちゃん」って言われて、ハンバーガーみたいには食べられなかったね。ふふっ。
あちあちのポトフも、大変美味しゅうございました!
食べ終わったら、調理場で一緒にお片付けだ。
【洗浄】と【浄化】? ――ソンナマホウモ、アリマスネー。
◆
午後は雪が降ってきたから邸内で過ごす。
辺境伯が一人掛けのソファーに座って書類を見ていて、私は暖炉の前でお絵描き。幼獣は暖炉に顔を向けて寝ていた。
絵を描きながら【空間収納】からラムネを出してパクっと。シュワシュワ、おいし〜♪
夏用のバスボムは、ミントや薄荷でスッとしてサッパリするのがいいよね。でも入れ過ぎ注意! スースーしすぎて危険だ――――薄荷って、あるかな?
――まだ冬だってのに、もう夏の話かよ、って? 準備に早いなんてことはないのだよ……! 備えあれば憂いなし、っていうからね! ……え? 違う?
春は……桜、躑躅、ライラック、ミモザ、たんぽぽ……う〜ん、あとは何かなぁ……あ! 菫に鈴蘭、水仙! チューリップとフリージア、スイートピー! ジャスミンもかなぁ……。
ツツジとライラックは甘い匂いだけど、他の花は…………分からないや。なんか、ふわっと甘い匂いがしそう。
春は甘い匂いが多いイメージ。あとは緑と“おひさま”と土の匂い!
色はピンクと黄色――暖色系がいいかな。あ。淡い水色も可愛いかも……!
……桜のアロマオイルはなさそうだから、ミモザとライラック……――あるかな? あとはお店で探してみよーっと。
スケッチブックにグリグリ色んな色の丸を描いていく。
ピンクと紫がライラックで、黄色はミモザ。水色がスズランっと。
あ、スズランは毒あるから……んー……匂いは、似た感じに……。いや、見た目スズランっぽく? 調香師さんに相談だ!
男の人用はスッキリした匂いの方がいいかな? 柑橘系……は、夏ってイメージだけど……甘い匂いが好きな人もいるかな?
あとは花型、星型……三日月型! 色んな形も作ろう! かきかき。
流れ星……三色ぐらい使って作るの、楽しそ〜!
*
*
*
「少し早いがメシにするぞ」
そう言った辺境伯に水を渡される。
おぉ……水分補給ですね、どうも。お絵描きに集中してて、水分補給してなかった。
ゴクゴク水を飲みながら時計を見る。午後五時を少しすぎたところだ。ぷっはー。
首を傾げる。
「はやくない?」
私を抱き上げた辺境伯が「今日は夜更かしだ」と言う。
「よふかし?」
「今日は特別に花火が上がる」
「はなび! みれるの!?」
辺境伯の言葉に足がバタバタしちゃう。ワクワクする〜!
「だから早く食って仮眠する」
「起きてらんねーだろ?」と苦笑しながら言う辺境伯が私の頭を撫でる。
「はなび! うん! わかった!」
良い返事をする私を抱える辺境伯と調理場へ向かう。
暖炉で“温め”や“軽く焼く”ことは出来るけど、さすがに“茹でる”は出来ない。何故なら茹で汁を流さなきゃいけないからだ。
いや、まあ、【結界】をコロコロして調理場まで持って行けないことはない、けど……。後片付けが大変だから、最初から調理場で作業だ。
夕飯は、ふわとろオムレツが乗ったミートスパゲティと、お昼に引き続きポトフ。それと千切りキャベツと細切りニンジンのサラダ――ゆで卵とハムを添えて……。
ミートソースは料理長の作り置きの一つだ。
スパゲティを茹でるお鍋をコンロに置いて、【飲水】と【着火】!
『生活魔法』だから便利だね☆
辺境伯がオムレツを作ったり、スパゲティを茹でてる間に食器を並べて、サラダにするキャベツの葉を毟ったり、ニンジンを洗ったり。
卵の殻を剥がしたり、ハムをちぎったり――思いの外、やることあるなぁ……。
……スライサーがあったら――スライサー(魔法)……ある? 『生活魔法』にあるよな、絶対……! ……魔法は後にしよう。
包丁を使っちゃいけないお子様なのが恨めしー! 『雷帝』だったら手伝えるのに〜!!
そして出来上がった夕食を調理場で食べる――後片付けがあるからね。
辺境伯、料理が上手い件について。
いや、十年も一人暮らししてれば、一通りは出来るかぁ…………たぶん。
地位も権力も金も有って、顔も良い。その上、料理も出来るって――スパダリか?
ご飯を食べながら虚無るとは思わなかった――――え? おいしくない?? おいしいんだけど……。
ミートソースは料理長作だけど。
え、おいしい……。オムレツのふわとろ加減が最高なんだが??
――幼獣は『お肉、三種盛り(ワイルドブル、レッドボア、コカトリス)』をもりもり食べました。
長くなったので分けました……orz
◆2026/04/24◆書き直した←
感想で指摘され、ハッとなり、ここにも書くことにしました。
主人公がスズランとスイセンの名前を出したのは、ただ単に『春の花と言えば……』で思いついて出しただけです。
もちろん、毒があるのも知っています。
そして、天然物から香料を抽出してバスボムを作るつもりはありません!
香料の抽出方法――こーゆう感じじゃなかった? 程度の知識なので、無茶と無駄はしない。
せいぜいが、お店でアロマオイルを買って作るぐらいです。
なので、本文の『スケッチブックにグリグリ色んな色の丸を描いていく。
ピンクと紫がライラックで、黄色はミモザ。水色がスズランっと。』の後に加筆しました。
先に『……桜のアロマオイルはなさそうだから、ミモザとライラック……――あるかな? あとはお店で探してみよーっと。』と書いたから伝わるかな? なんて思ってしまいました……(ŏ﹏ŏ;)
ダメですね……ちゃんと説明しないと。反省。
ご指摘、ありがとうございましたm(_ _)m
因みに。スイートピーにも毒があるそうです。




